赤ちゃんのお世話 “脳が育つ”ひと工夫 コロナ禍だから意識すること

京都大学大学院・明和政子教授「コロナ禍での乳幼児の脳と心」#3〜「乳児のお世話」編〜

京都大学大学院教育学研究科教授:明和 政子

社会でも家庭でもできることを少しづつ

私たちの暮らしを激変させた新型コロナウィルスは、教育や保育の場にも大きな影響を与えています。

フランス政府は、マスク生活が子どもへ与える影響の懸念から、2020年9月に保育園や学校現場に表情全体が見える「透明マスク」を一斉配布しています。

日本でも、ユニチャーム株式会社が2021年4月に「顔がみえマスク」を販売したのを筆頭に、透明マスクの開発・普及が進んではいますが、使用率は低いのが現状です。

全国私立保育連盟の理事も務めている明和教授。「園の先生方に『マスクを外して』と言うことはできません。しかし、子どもの脳と心の発達を守るためにできることはある」と話します。

「全国各地でコロナ感染状況は違うので、一律的なルールは設定できません。

しかし、たとえば絵本を読み聞かせる場面では子どもを抱っこできます。オキシトシンの分泌を促す絶好の機会です。食事やミルクの時間には、子どもたちの身体内部には心地いい感覚がわき立ちます。このタイミングをうまく活用してほしいです。

透明マスクを着用する、マスクをはずせない場合でも意識的に声をかけながら身体接触の機会を増やすなど、臨機応変に対応してくださいと先生方にはお願いしています」(明和教授)

環境の影響を強く受けて脳が発達する子ども期、この時間を巻き戻してあげることはできません。YouTubeやテレビを見せる時間を少しだけ減らして、抱っこしながら絵本の読み聞かせをしたり、大人がスマホを眺める時間を少しだけ減らして豊かな表情で子どもに接するなど、無理せずともできることはたくさんあります。

長引くマスク生活、他者との触れ合いが急激に減っている今、子どもたちの健全な発達のために、豊かな表情を介して触れ合うことを基本とする本来の「ヒトの子育て」を改めて意識し、日常に活かしていくことが求められているのではないでしょうか。


取材・文/稲葉美映子

※京都大学大学院・明和政子教授に聞く「コロナ禍での乳幼児の脳と心」は全3回です(公開日までリンク無効)。
#2 赤ちゃんは「密」が愛着形成する! コロナ禍の「触れ合い」新常識
#1 赤ちゃんの脳の発達 コロナ禍のマスク生活が奪う学びの機会とは?

8 件
みょうわ まさこ

明和 政子

京都大学大学院教育学研究科教授

京都大学教育学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。京都大学霊長類研究所研究員、滋賀県立大学人間文化学部専...

いなば みおこ

稲葉 美映子

ライター

フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息...