子ども抜き親だけ相談可 スクールカウンセラーの効果と実例を公認心理師が明かす

公認心理師・スクールカウンセラーが語る 学校での悩みは何を相談していい? #2 親の悩み相談について

公認心理師:中井 ようこ

スクールカウンセラーに泣いて訴えた孤育てママの事例

では、実際に私が受けた相談についてお話しします。(※プライバシー保護と秘密保持の原則にのっとり、相談内容には脚色を加えています)

ある学校行事で、Aさんを見かけた担任の先生が、あまりにも疲れ切った様子に驚き、スクールカウンセラーを紹介したことから、今回の相談となりました。Aさんの子どもも、最近ママの元気がなく、心配していたといいます。

この日は、「買い物に行ってくると言って、家を出てきました」とAさん。控えめながらもしっかりとした受け答えが印象的なママでした。確かに、先生の言うように少し痩せ気味ではありました。

Aさんは「時間があまりないのですが……」と言いながらも、ゆっくりと話しはじめてくれました。

スクールカウンセラー:担任の先生からスクールカウンセラーを紹介されたと聞きました。今日はどんなことを話しに来てくださったのですか?

Aさん:自分のことを話してもいいんだよって、担任の先生に教えてもらい、今思っていることを話しに来ました。義両親のことや、子育てのこと、夫のことなど、いろいろあります。

スクールカウンセラー:義両親とは一緒に住んでいるのですか?

Aさん:私は結婚してからずっと義両親と同居しています。同居して2年後に上の子が、3歳離れて下の子を授かりました。今は8歳と5歳です。

夫は今年から単身赴任になり、ほとんど家にいません。

この10年間、家事のいっさいを引き受け、食事の支度や病院への送迎をしてきました。子どもたちのお世話もあるので、自分の時間はほとんどありません。でも、仕方がない、これが運命だからって自分に言い聞かせながら、なんとかやってきました。

スクールカウンセラー:それは大変でしたね……。Aさん、本当にがんばってらっしゃいますよ。

Aさん:(涙ぐみながら)はい、ありがとうございます。そんなふうに言われるのは初めてで……。

スクールカウンセラー:そうなんですね。それはつらかったですね。義両親やご主人との関係はどうですか?

Aさん:義両親は私のことを良く思っていません。私がこの土地の出身ではないので、食事や言葉の感覚があわないのです。

子育てについても「子どもたちがあいさつしない」など、あげればきりがないくらい小言を言われます。きっと、私の子育てが気に入らないのでしょう。

夫はほとんど家にいないので相談できません。メールで話をしても「義両親の機嫌を損ねない方がいい」と言われるだけです。今までは休みの日に手伝ってくれたり、子どもと遊んだりしてくれていたのですが、今は誰も助けてくれないので、私がひとりでがんばるしかないんです。

一番つらいのは、子どもたちにきつくあたってしまうこと。ストレスをぶつける場所がなくて、あんなにかわいい子どもたちに嫌な言葉を吐いてしまいます。

(涙を流しながら)でも、どうすれば良いのでしょうか?あの狭い家の中にいると、息がつまりそうなんです。

スクールカウンセラー:Aさん、よく話してくださいましたね。まずは気持ちを吐き出すことが大切です。Aさんが自分を取り戻す方法を、一緒に考えていきましょう。

その後、Aさんは1年間にわたり、家事の合間をぬってカウンセリングに通ってくれました。「ここだと何も気にせず、自分の気持ちを話せます」と言ってくれたAさんは少しずつ元気を取り戻し、ご主人にも積極的に相談できるように。

その結果、義両親と生活時間をわけることで、Aさんの家事の負担を減らしてもらえるようになりました。

ご主人の単身赴任がきっかけで、家族の中にひずみが現れはじめていたAさん一家。タイミングよくカウンセリングを受けたことで、前向きな一歩を踏み出せたケースでした。

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子どもの健やかな成長のために大切なのは、パパやママが健康で元気に笑っていること。しかし、子育て世代のパパやママは、毎日の育児に忙しく、自分のメンタルケアは後回しになっているのではないでしょうか。

悩みの重さは人によって違います。「こんなこと話してもいいのかな」と迷うような内容でも大丈夫。小さな勇気が新しい未来につながることもあるのです。

子どもと親の心を支える存在であるスクールカウンセラーに、もし悩みがあるならば、ママやパパも話してみてくださいね。

監修・文/中井ようこ(メディペン)

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なかい ようこ

中井 ようこ

Nakai Yoko
公認心理師

小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。

小学校の養護教諭として15年間勤務。退職後は、公認心理師の資格を取得し、スクールカウンセラーとして従事。コロナ禍では800件以上の相談を受けた。アドラー心理学の知識も活かし、子どもや保護者の気持ちに寄り添ったかかわりを大切にしている。

めでぃぺん

メディペン

medipen
医療ライターズ事務所

医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか、医療×他業種の記事を手掛ける。 産婦人科関連、小児科、皮膚科、医療系セミナーレポートや看護師専門サイトの記事の実績多数。 medipen

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