【小学校入学準備】「ひらがな」「数字」はどこまで予習? 最低限の学習目安を〔専門家〕が伝授

《第6回》子どもが困らないための最低限の教育とは?/幼児期に「生きる強さ」を身につける7つのこと(全7回) (2/2) 1ページ目に戻る

文章力養成コーチ・教育コンサルタント:松嶋 有香

松嶋:それは「自分の名前のひらがな」と「1から10までの数字」を読めることです。

入学式の日から、子どもは文字と数字に囲まれます。名札、教室の表示、配布物、連絡帳。ここで「読める」ことは、単なる学力ではなく、新しい環境での「安心感」に直結します。

特に重要なのが「自分の名前が読める」ことです。自分の席について、ロッカーの場所がわかる。大人に何度も聞かなくても、自分で動ける。こうした小さな自立が、学校生活のスタートをスムーズにします。

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まいぜんはじめてワーク 4さい ひらがな

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松嶋:「綺麗に書く」練習は、小学校に入ってから先生が丁寧に教えてくれます。むしろ、筆圧が弱いうちに無理やり書かせると、子どもに「書くことは苦痛だ」という先入観を与えてしまいかねません。

また、間違った鉛筆の持ち方や書き順を一度覚えてしまうと、あとから直すのは本人にも親にも大きな負担になります。もし早めに文字を書き始めるなら、鉛筆の持ち方だけ優しくチェックしてあげてください。

とはいえ、まずは「読めることで、世界が広がる・安心できる」という感覚をプレゼントすることを、優先しましょう。カタカナも、お気に入りのキャラクターや恐竜の名前など好きなものをきっかけに「読み」から触れる程度で、十分です。

松嶋有香さん近影 撮影:講談社写真映像部
松嶋有香さん近影 撮影:講談社写真映像部
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教えるより出会う! 机に向かわせない文字との触れ方

──具体的に、家庭でどのように「読み」を教えればいいでしょうか?

松嶋:日常生活の中で自然に文字と触れ合う機会を増やしましょう。そこで実践してほしいのが、「大人が文字から情報を得ている姿」の種明かしをすることです。

例えば、散歩中に看板を見て「あ、ここに新しいケーキ屋さんができるんだって」と話しかける。子どもに「ママ、なんでわかったの?」と聞かれたら、「ここに書いてあるから読んだんだよ」と教えるのです。

あるいは、新聞などを見て「明日は雨が降るって書いてあるね」と伝えるのもいいですね。「大人はこうやって情報を得ているんだ、文字が読めると便利なんだ!」と子どもが気づけば、自然と知りたがるようになります。

数は「暮らし」で増やす

松嶋:数字も同じです。スーパーで「トマトを3個選んでくれる?」とお願いしたり、階段を上りながら数を数えたりと、暮らしのなかで数の概念を育てましょう。おやつを分けるときに「半分こ」や「パパとママと3等分」にするなど、等分の感覚を育てるのもいいですね。

家に時計を置く場合は、アナログ時計がおすすめです。時間の流れが目に見えることが子どもの助けになるだけでなく、丸い形が針で区切られる「絵」として見ることが、分数の感覚につながるからです。

文字も数字も、机に座らせてドリルをするより、実際の暮らしの中で出てきた疑問を一緒に調べるほうが効果的。

例えば、「冬至の日は『ん』のつく食べ物を食べると運が向くんだって。何があるかな?」と一緒に考えたり、「あと何分で公園につくかな?」と会話をしながら覚えましょう。ドリルを20ページ解かせるよりもはるかに地頭を鍛えます。

──数字に関しては、先取り学習をさせたほうが算数が得意になるのではないか、という考えもあるかと思うのですが……。

松嶋:「割合」など算数の抽象的な思考ができるようになるのは、脳の発達段階として4年生以降です。その前にやらせても、あまり意味はありません。それよりもまずは、絵本の読み聞かせをたっぷり行い、感情や情景をイメージできる「想像力」を蓄えてください。この「言葉をイメージに変換する力」こそが、将来、複雑な文章題を解くための本質的な学力になるのです。

入学前の「かず」が楽しくなるおすすめドリル

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ドリルの「やらせっぱなし」に注意

松嶋:どうしても家庭でドリルをやらせたい場合には、注意点があります。それは「やらせっぱなし」や、「親が採点だけするスタイル」です。ドリルを渡し、親が採点して終わりにすると、子どもは「正解か不正解か」だけの世界に入りやすいと思っています。すると、どうして間違えたのかわからないし、間違えたときに自信をなくしてしまうこともあります。

ドリルは、子どもと一緒に遊びましょう。親がそばで見て、できたところを認めて、短く返事をしてあげる。「分かったね」「読めたね」。それくらいで十分です。点数のように評価するのではなく、成功体験として積み上げる。基本はドリルより先に、生活の中で文字や数に出会う機会を増やし、ドリルは補助的に使うといいと思います。

子どもと一緒に遊べるドリル

くぼた式 脳をきたえる シールあそび

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「地頭」は遊びで育てる

──周りが幼児教室に通っていると聞くと、自分も始めたほうが良いか不安になります。

松嶋:私は、小学校受験をしない場合は、未就学児で塾に通う必要はないと考えています。日本の勉強はどうしても知識偏重になりがちですが、これからの時代、知識はAIが教えてくれます。それよりも「どう考えるか」という地頭の部分は、体を使って遊び、トラブルを解決する経験の中でしか育ちません。

習い事をするなら、サッカーやピアノ、お絵描きなど、本人が好きで夢中になれるものがおすすめです。好きな気持ちがあれば、習い事の場で集中力も忍耐力も育ちます。子どもでも大人でも、イヤイヤやっていることは実りが少ないです。親の希望を強く通したり、親の目から見た向き・不向きで決めたりしないで、子どもの気持ちを第一に考えてあげてください。

次回はいよいよ最終回です。入学準備の核でもある、親子の信頼関係と安全基地についてお話しします。

全7回の6回目
1回目「家庭を安全基地にしよう」を読む
2回目「過干渉をやめて子どもの自立を促そう」を読む
3回目「外遊びで生きる力と免疫力を育てよう」を読む
4回目「環境を整えると子どもは本を読み出す」を読む
5回目「社会で生きる最初のスキル、あいさつを習慣にしよう」を読む
7回目「子どもの心を守る安全基地の作り方」を読む※4月17日よりリンク有効

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松嶋 有香
まつしま ゆか

松嶋 有香

Yuka Matushima
文章力養成コーチ、教育コンサルタント

静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」

静岡大学教育学部卒。海外にも教室がある大手塾の講師を経た後、教育支援業と執筆業を開業。文章指導歴は35年というベテラン講師。またライターとして、自身の教室の他、いろいろなプロジェクトで「書くこと」を担当。言葉、子育て系、国語系の記事やコラム、クラファンの広報文などを手がける。地域未来塾、不登校支援のほか、バンド活動も行っている。 オフィシャルサイト 文章力養成コーチ ゆか先生の「書きまくるトレーニング」