「探究学習」の「超シンプルな実践法」 第一人者が保護者・教師に伝授! 

【今こそ学力観のアップデートをするとき】親子で探究実践#1「Feel度Walkとは?」

「なんとなく気になる」を発見する力

「Feel度Walk」で自分がなんとなく気になることを集めて、記録していくと、それまでは気づかなかったことを「発見する力」が磨かれていきます。

「例えば、学校の校内で『Feel度Walk』をやってみたとします。子どもたちは最初、『毎日いる場所だから、新しいことなんて見つかるわけない!』と思って釈然としない感じで始めますが、何人かでワイワイ言いながら改めて歩いてみると、普段は全然気がつかないものが目に入ったり、何となくしか認識していなかったものが違って見えたりしてきます。

そうやって歩くことで発見の感度=『Feel度』が上がるので、『Feel度Walk』という名前なんです! さらに、それをみんなで模造紙にスケッチしてシェアします。絵だけでなく、思ったことや仮説なんかも書き込んでいくから、自分なりに発見した『知』が描写されたもの、という意味で、『知図』と呼んでいます。

『Feel度Walk』を繰り返し行い、何となく気になったものを発見して自分の中にストックしている状態になると、探究学習を行うときも、自分の興味を思い出して課題設定することができるんですね。他の人が設定した課題であっても、自分の興味に引き寄せて考えられるようになっていきます」(市川さん)

「日常生活で発見する力を育てる」ことの重要性に、市川さんはTCS時代の探究の実践を通して気づきました。

「とにかく、僕はいつも子どもたちと学校の外へ出て歩き回り、なんとなく気になるもの、おもしろいもの、あるいは不思議だと感じるものを探していたんです。

探究学習の最中はもちろんですが、それ以外のときも理由なく外へ出ていき、なんとなく気になったことを見つけて持ち帰ってくる、これを常に実践していました。子どもたちは、そこで見つけたことやものについて、『ねえねえ、おっちゃん、○○ってさ……』と僕に話しかけて、雑談が始まります。周りの友だちもいつの間にか加わって、自然と語り合い、対話していました。

子どもたちと対話する市川氏。  写真:市川力

これを繰り返すうちに、最初は全然関係ないと思っていた『気になること』が、実は探究学習の課題とつながっていた、なんて経験をするんです。そうすると、自分が気になることは、とにかく何でも集めて記録しておかないといけないと痛感します。加えて、『気になる』を周りとシェアすることで刺激を受けて、自分だけでは気づかなかったことにたどり着くといった経験も重なります。

つまり、探究は『何気ない日常の積み重ね』こそがポイントだったんです!」(市川さん)

普段から「なんとなく気になるな」ということを見逃さずに発見できる感性や好奇心こそが重要で、探究のベースになっていたのです。

「この部分がないと、どんな学びでも『やらされている感』が出てしまい、うまくいかないんですよね。反対に言えば、こうした『感度』さえ育っていれば、すべての学びをおもしろがれるし、学校の探究だって、自分ごとの課題を設定できるから違った結果になるんですよ。

今、述べたような、探究の『ベース』の部分を育てるのが『Feel度Walk』ですが、実はこれ、どこでもできちゃうんです! だから、学校にこだわる必要もないし、年齢だって2歳から大人まで、幅広い人たちが取り組めます。そして、大人と子どもが一緒に実践することで、お互いに楽しみながら刺激を受けて、より発見の感度を上げることにもつながります」(市川さん)

これまでとは異なる、新しいスタイルで行われる「Feel度Walk」。第2回は、実際に行われた「Feel度Walk」にライターが参加し、その様子をレポートします。

取材・文 川崎ちづる

市川 力(イチカワ チカラ)
一般社団法人みつかる+わかる代表理事/慶應義塾大学SFC研究所上席所員
2004年~2017年まで、東京コミュニティスクールの初代校長として、小学生を対象に探究力を育む学びを研究・実践。現在は、全国各地の学校に赴き探究学習の支援をするとともに、地域の多様な人たちがともに好奇心を発揮できるような、学ぶ場所づくりを行っている。主な著書は『探究する力』(知の探究社)、井庭崇編『クリエイティブ・ラーニング 創造社会の学びと教育』(慶應義塾大学出版会)、『ジェネレーター 学びと活動の生成』(井庭崇氏との共著/学事出版)

『【今こそ学力観のアップデートをするとき】親子で探究実践』の連載は全5回。
#2 Feel度Walkレポートを読む。
#3 Feel度Walkの効果を読む。
#4 学校にも広がるFeel度Walkを読む。
#5 問題解決に役立つFeel度Walkを読む。
※公開日まではリンク無効

30 件
かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。