さまざまなお仕事体験ができる大人気のテーマパーク「キッザニア東京」。そのなかに、とってもかわいいジオラマを撮影できるパビリオンがあるのをご存知でしょうか。
撮影できるのは、造形作家の山形明美さんがつくった、シリーズ絵本「どこ?」のジオラマです。約1m四方のスペースに、息で飛びそうなほど小さくてかわいい小物がいっぱい。山形さんはこのジオラマを、約2カ月かけて製作しています。
絵本「どこ?」シリーズは、累計発行部数75万部突破のベストセラー作品。「キッザニア東京」のパビリオンで使用されているジオラマは、シリーズ10作目『どこ? ほんのなかのさがしもの』(2022年発行)で、実際に使われていたものです。
この記事では、知られざる「ジオラマ撮影と造形作家の世界」を深掘りすべく、造形作家の山形明美さんと、担当編集者の長岡香織さんにインタビュー。「どこ?」シリーズがつくられた発端や、ジオラマ撮影の秘話、山形さんが作品をつくり続ける理由などをお聞きしました。
長岡さん「山形さんの作品をみたとき、もっともっと多くの人にみせたいと思った」
ーー山形さんとは、どのような経緯でお知り合いになられたのですか?
「新入社員のころ、幼児誌の編集部で、ミニカーや電車のおもちゃを撮影するページを担当していました。それまでは、背景がわりあい無機質だったのですが、何回かやっているうちに、物語感のある背景のなかにおもちゃを置いてみたいと思ったんです。
そんなときにほかの幼児誌で目にしたのが、山形さんのジオラマでした。山形さんはぬいぐるみ会社から独立した後、フリーランスで造形作家をされていたのですが、私がお願いすると、『ジオラマ作家ではないから、お断りしたい』と言われてしまって。私が雑誌でみたのは数少ないジオラマ作品で、もうやるつもりはなかったそうなんです。
『どうしても』と頼みこんで、おもちゃの背景ジオラマをつくってもらいました。そのジオラマが、本当に素晴らしくて、『この人にずっとお願いしたい』と思ったことを覚えています」
ーー長岡さんがそこまで、山形さんの造形物に心を動かされた理由は何だったのでしょうか?
「山形さんのつくる世界観は、とにかく、うっとりするほど「かわいい」と思いました。細かいパーツの1つ1つが、物語全体を彩っているように感じられました。
しかも、仕事がとても丁寧なんです。ジオラマは、撮影で映らないところは、つくる必要がありません。でも山形さんはほとんどのパーツを、どの角度からも撮影できるようにつくってきてくれます。
だから、撮影中でも自由にパーツを動かすことができる。ジオラマの撮影は、ピントの合わせ方や、遠近感の取り方がとても難しいので、パーツを動かせると動かせないとでは、まったく仕上がりがちがうんです」