「おさる」を30年描く童話作家 今度の「おさる」は「他者の受け入れ」 子どもが多様性を受け入れるには「好奇心」が必要

いとうひろしさん『おさるのしま』刊行記念インタビュー

ライター:山口 真央

子どもに希望を持ち続けてもらうのが親の仕事

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──描かれる児童文学に、哲学的な問いを込める、いとうさん。子どもに対しては、どのような想いがありますか。

いとう僕が児童文学作家をしていてよかったなと思うのは、絶望できないことです。親も同じ。僕にも子どもがいますが、子どもに希望を持ち続けてもらうのが、親の仕事です。

世の中を見まわしたら、ひどい事件が多くて、ときどき嫌になっちゃうこともある。でも、あきらめちゃだめです。より良き明日をつくっていく賢さが人間にはあるんだってことを、子どもたちに忘れないでいてもらわないといけないと思います。

それには、当たり前にあると思われていることに、疑問を持つことから始まるのではないでしょうか。周りの価値観に流されない人になるためにも、自分の頭で考える、人と話し合う習慣を、小さい時から続けることが大事だと思います。

夕日を見て綺麗だなと思いますよね。なぜ、綺麗だと思うのでしょう? 科学的な視点で理屈をつけることもできます。でも、それだけでは納得ができない「何か」がある。いろいろな考え方があるんだってことを、子どもたちに気づいてもらいたいです。

もちろん、物語を面白い話だと思ってもらうことが、第一です。そのなかで、読み終わったあとも考えたくなったり、何年も経って、ふと僕の話を思い出して「このことを書いていたんだな」と思ってくれたりしたら嬉しいなと思いながら、ずっと本を書いています。

いとうひろしが移民に触れて考えたこと

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