獅童が亡き母の遺した「企画書」に涙 幼い息子たちに伝えたい「あらしのよるに」の揺るぎない言葉

『あらしのよるに』30周年記念インタビュー 第1回

ライター:山口 真央

歌舞伎役者の中村獅童さん。2024年12月に歌舞伎座でおこなわれた歌舞伎『あらしのよるに』では、主役のガブを演じた。
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「あらしのよるに」シリーズは、オオカミとヤギの「食うもの」「食われるもの」の関係を超えて結ばれた絆を描く、友情物語です。

1994年に出版された最初の物語『あらしのよるに』から、『あるはれた日に』や『くものきれまに』など、シリーズは7作品、380万部を突破しました。

さらに2025年2月には、ファン待望の8作品目を刊行します。タイトルは『あいことばはあらしのよるに』。ガブとメイの物語から、ますます目が離せません。

30周年を記念して「あらしのよるに」シリーズを愛する著名人から、スペシャルメッセージをいただきました。第1回は、歌舞伎役者の中村獅童さんです。

獅童さんは、2015年に京都南座で、新作歌舞伎『あらしのよるに』のガブ役を熱演。以降、歌舞伎『あらしのよるに』が上演されるたび、4度にわたりガブ役を演じてきました。

獅童さんが感じる、「あらしのよるに」シリーズの魅力とは。また、ふたりの息子さんに『あらしのよるに』を通して伝えたいメッセージなどを伺いました。

孤独だった主人公の「ガブ」は僕に似ている

獅童:僕が『あらしのよるに』と出会ったのは、2003年。NHK Eテレの番組「てれび絵本」で、朗読したことがきっかけです。初めて読んだときは、オオカミのガブの気持ちが、よくわかるなあと思っていました。

ガブは、オオカミの群れのなかにいても、小鳥を助けたことを他のオオカミから馬鹿にされたりして、孤独を感じていました。そんなある日、嵐の夜にヤギのメイと出会って、少しずつ心を開いていきます。

僕は若いころに仕事が少なくて、つい「誰にも相手にされない」と、いじけた気持ちになることがありました。でも、少しずつ仕事で認められるようになって、仲間が増えていった。そんな自分とガブの姿が重なって、感情移入できたんです。

『あらしのよるに』を知った母がとった驚きの行動

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