獅童が亡き母の遺した「企画書」に涙 幼い息子たちに伝えたい「あらしのよるに」の揺るぎない言葉

『あらしのよるに』30周年記念インタビュー 第1回

ライター:山口 真央

歌舞伎『あらしのよるに』の発端は母が書いた企画書

獅童:朗読の仕事を終えたあとに、母と『あらしのよるに』の話をしていたら「歌舞伎の演目にぴったりじゃないか」という話になりました。

歌舞伎には動物が出てくる話が多いですし、『あらしのよるに』には、時代を選ばない普遍的な面白さがあると盛り上がったんです。

でもそれから、母と『あらしのよるに』を歌舞伎に、なんて話はしていませんし、僕もすっかり忘れていました。そして2013年12月、最愛の母は73歳で急逝してしまいました。

獅童さんのお母さんは、誰よりも獅童さんの役者活動を応援し、陰ながら支えていたという。
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獅童:時は経ち、2015年の南座で僕がメインの演目をやろうという話になったとき、松竹の人から「話がある」と呼び出されました。

そこにあったのは、母の手書きの企画書。内容は「いつか獅童が責任興行を持てるような役者になったら、歌舞伎『あらしのよるに』をやらせてほしい」というものでした。

母の想いに、胸が詰まりましたね。ありがたいことに、2015年9月、南座で新作歌舞伎『あらしのよるに』を初上演させてもらいました。

『あらしのよるに』は、亡き母と今の僕をつなぐ、大事な作品です。それから2024年までに、4度も公演することができました。母もきっと、喜んでいることでしょう。

2015年に上演された新作歌舞伎『あらしのよるに』のチラシ。

歌舞伎『あらしのよるに』に出演した息子たちに願うこと

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