『窓ぎわのトットちゃん』“海のものと山のもの”のお菓子お弁当を作ろう

読んで楽しい、作っておいしいエッセー&レシピ 児童文学キッチン#01

児童文学作家の小林深雪さんと、お菓子研究家の福田里香さんのかわいい本『児童文学キッチン お菓子と味わう、おいしいブックガイド』から、読んで楽しい、作っておいしい、エッセー&レシピを厳選してお届けします。

第1回目は、黒柳徹子さんの自伝的小説『窓ぎわのトットちゃん』から。この世界的な大ベストセラーの舞台、トモエ学園では、お弁当に「海のものと山のもの」を入れてくる、というお話がありました。トットちゃんが歓声をあげたかわいいお弁当を福田里香さんがお菓子にアレンジ。こんなにかわいいおやつなら、トットちゃんだってきっと、歓声をあげるにちがいありません。
(「児童文学キッチン」のほかの記事を読む)

トットちゃんのお弁当は、ママが作ったほんとうのお弁当でしたが、かわいいお菓子に!(撮影/青砥茂樹)

トットちゃんが心の中で歓声をあげた、 「海のものと山のもの」のお菓子弁当 (福田里香)

<ふたをとったとき、トットちゃんが、
「わあーい。」
といいそうになって、口をおさえたくらい、それは、それは、ステキなお弁当だった。黄色のいり卵、グリンピース、茶色のデンブ、ピンク色の、タラコをパラパラに炒ったの、そんな、いろんな色が、お花畑みたいな模様になっていたのだもの。> 
『窓ぎわのトットちゃん』より

この本に描かれているのは、童話の世界の話でしょう? と思わず疑いたくなるような、おもしろくて、たのしい学園生活でした。

なかでも心に残ったのは、校長先生が推進する「海のものと山のもの」のお弁当。

上にあげたのは、トットちゃんのママが作ってくれた初めてのお弁当の描写です。海と山のおかずで、お花畑みたいな模様に彩るなんて、とてもおいしそう。だから、お菓子に仕立ててみました。

ご飯の部分は、市販のライスパフを溶かしたホワイトチョコレートでからめています。上にはマーブルチョコやかぼちゃの種など好きなお菓子をのせてみて。

三時のおやつに、友だちみんなで食べたいお菓子です。(福田里香)

心の奥にある 「清らかなもの」を 呼び覚ましてくれる本(小林深雪)

<校長先生は、トットちゃんを見かけると、いつも、いった。
「君は、ほんとうは、いい子なんだよ!」

 そのたびにトットちゃんは、ニッコリして、とびはねながら答えた。
「そうです、わたしは、いい子です!」>
『窓ぎわのトットちゃん』より

好奇心が旺盛なトットちゃんは、小学校一年生で、学校を退学になってしまいます。

そこで新しい学校へ行くことになります。

その学校は、前の学校となにもかもが変わっていました。 

校舎は、払い下げの電車の車両。席は、決まっていなくて好きなところに座っていい。授業は、国語だろうと、算数だろうと、好きなものからはじめていい。

お弁当には、「海のものと山のもの」を必ず入れてくること(たとえば、かんたんな海と山は、のりとうめぼし)。「子供が好き嫌いしないように。」「栄養がかたよらないように。」というところを、「海と山」と表現することで、子どもたちはお弁当が楽しみになるという配慮からです。

お弁当のあと、「今日はとてもよく勉強したから、みんな、なにしたい?」先生が聞くと、みんなが「お散歩!」と言う。「じゃ。行きましょう!」先生は、すんなり、お散歩へ向かうのです。

そんな学校をつくった校長の小林先生は、ほんとうに素晴らしい。

入学前にトットちゃんが面接を受けたときに、「さあなんでも、先生に話してごらん。話したいこと全部。」そう言って、なんと四時間もずっとトットちゃんの話を聞いてくれた。

そして、前の学校では、問題児と言われたトットちゃんに、「君は、ほんとうは、いい子なんだよ!」と、ずっと言い続けて、「わたしはいい子なんだ。」と、自信をつけさせてくれたのです。

「それは、人生を決定したかもしれないくらい大切な言葉だった。」と、作者の黒柳徹子さんは、この本に書いています。

子どもを型にはめず、のびのびと個性をのばしてあげる。

そして、子どもといっしょに毎日を楽しみ、新しい発見をいっしょに喜び、感動をわかちあってくれる。

こんな学校に通いたかったと、だれもが思うはずです。

そして、この本を読むと、自分の子ども時代のことがたくさん思い出されてきます。

読み終わったら、 少しのあいだ目を閉じて、今度は自分の中から聞こえてくる「あなたの物語」にも耳を澄ましてみてください。(小林深雪)

トモエ学園の校長先生もきっとにっこり。「山のものと海のもの」のお菓子弁当を作りましょう(福田里香)

材料(お弁当箱1個分)

〇ごはんの材料
 板ホワイトチョコレート 80g(約2枚)
 無塩バター 10g
 市販のライスパフ 100g

〇おかずの材料
 マーブルチョコレート
 チョコチップ、
 砂糖菓子、
 かぼちゃの種など 各適量

作り方

  板チョコを包丁で細かくきざむ。
2    1と分量のバターをボウルに入れる。これを30~35℃の湯せんにかける。湯に手を入れるとお風呂よりぬるく感じるくらいが温度の目安(温度を上げすぎるとチョコが変色するので注意)。ちょっと時間がかかるが気長にスプーンで混ぜて、なめらかに溶かす(写真参照)。

気長にスプーンでまぜて。「よくまぜてー」とかえ歌が出てきた人は、きっとトットちゃんを読んだことがある人!(撮影/青砥茂樹)

  2にライスパフを入れて、ゴムべらでよく混ぜる。これをお弁当箱に9分目まできっちり詰める。
  3の上に、お花畑になるように、おかずの材料を彩りよく並べていく。
  4をそのまま置いて固める。完全に固まったら、できあがり(寒い場所に置くと早く固まる)。
*チョコに水が入ると変質するので、湯をはる容器はチョコのボウルより小さいものにして、絶対に湯が入らないようにする。
*作業は25℃以上の温かい部屋でやると、チョコが固まりにくいから、デコレーションがスムーズ。

『窓ぎわのトットちゃん』についてあれこれ(小林深雪)

『窓ぎわのトットちゃん』は、黒柳徹子さんの自伝的小説。ユニセフ親善大使でもある女優の黒柳徹子さんは、日本のテレビ放送開始以来、50年以上にわたり活躍している、テレビ放送史を代表するお一人です。
1976年から続くトーク番組『徹子の部屋』を知らない人はいませんよね? 黒柳徹子さんの本は『トットちゃん』以外も、全部、おもしろい! トットちゃんのその後の青春時代を描いた『トットチャンネル』、ニューヨーク留学時代のエッセー『チャックより愛をこめて』、大爆笑まちがいなしの『トットの欠落帖』など、どれもハズレなしです!

『窓ぎわのトットちゃん』
文:黒柳徹子 絵:いわさきちひろ 講談社青い鳥文庫

むずかしい漢字にふりがなつきで、小さいお子さんでも読みやすい児童文庫版。
『窓ぎわのトットちゃん』
文:黒柳徹子 絵:いわさきちひろ (ハードカバー版)

1981年に発売されたままの装丁で、今でも読むことができます。お話にぴったりの、いわさきちひろさんのイラストもカラーで楽しんで。

お話から生まれた23のかわいいお菓子がレシピ付きで作れる!

『児童文学キッチン  お菓子と味わう、おいしいブックガイド』
文:小林深雪  料理:福田里香  講談社

読んで楽しい、作っておいしい!小林深雪先生の大好きな児童文学作品にインスパイアされたかわいいお菓子を福田里香さんのレシピつきで紹介!
*現在入手困難です。図書館などで探してみてくださいね。

(編集協力/俵ゆり)

こばやし みゆき

小林 深雪

Miyuki Kobayashi
作家

埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。

埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。

ふくだ りか

福田 里香

Rika Fukuda
菓子研究家

福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。

福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。