オードリー・タンが教えた 若者と社会を力づける<たったひとつの冴えたやり方>
石崎洋司×大原扁理(対談)
2022.07.27
オードリー・タンさんは、台湾のデジタル担当政務委員。<デジタル技術を人間のために使い><市民とともに仕事をする>大臣として有名です。
若者を力づけ、社会の意識を変えるのは、その声を聞くこと。
それを実現するソーシャル・イノベーションによって圧倒的なスピードで変化している台湾について、大原扁理(おおはらへんり)さんと石崎洋司(いしざきひろし)さんに対談してもらいました。
大原扁理さんは、2016年から2020年まで台湾に滞在し滞在記も刊行。またご自身が性的マイノリティーであることを公表されています。
石崎洋司さんは、児童文学作家で、オードリー・タンさんの伝記『「オードリー・タン」の誕生』の著者でもあります。
オードリー・タン(唐鳳)
1981年生まれ。台湾デジタル担当政務委員。8歳で不登校となる。14歳で全ての学校に通うのを止め、ITの世界で活躍。24歳でトランスジェンダーであることを公表。2016年に発足した蔡英文政権に、史上最年少の35歳で入閣。
さらば国分寺! 若き隠居が体験した台湾のソーシャル・イノベーション
石崎洋司(以下、石崎) 大原さんは、20代から東京の国分寺で、必要最低限のお金で幸せに生きる「隠居暮らし」を始めたんですよね。
そのノウハウが外国でも通用するか、というテーマで台湾に行かれたとのことですが、いつ頃のことでしょうか?
大原扁理(以下大原) 2016年の9月でした。なので蔡英文政権は成立していて、すでにオードリーさんはデジタル担当政務委員(日本でいう大臣)として入閣していました。
ちょうど台湾が新しく変わり始めていたときです。日本に帰ってきたのは、コロナ禍の始まりの時期、2020年2月。滞在は3年半でした。
だから、わたしは新しくなった台湾しか知らないんです。
石崎 その時の台湾の空気感はどうだったんでしょう? これから変わるという期待感のようなものはあったのでしょうか。
大原 一般には、蔡英文政権に対して良いイメージをもっているような感じはありました。でも、いろんな人がいますからね。
蔡英文さんは穏健独立派なので、中国とビジネスをしている人にとっては支持できない。
独立派でも、もっと急進的な人にとっては、目に見えた変化がないから支持できないことになります。
石崎 台湾に行かれるまえに、オードリーさんのことはご存じでしたか?
大原 知らなかったです。台湾に行くことにしたのは、わたしの本の翻訳版が台湾で出ることになって親近感を持ったのがきっかけです。
『いま、台湾で隠居しています ゆるゆるマイノリティーライフ』という本にも書いたのですが、ほぼノープランですね。デジタルにもくわしくないですし。