「子どもインタビュー」でわが子の本音が言語化! 人気作家が8年続けて知った大切なこと

シリーズ「子どもの声をきく」#2‐2 児童書作家・杉山亮さん~“子どもインタビュー”の極意

児童書作家・ストーリーテラー:杉山 亮

「子どもと大人で、話すときの口調は基本的に変わりません。子どもに対しても、特別扱いはせず、対等に話すようにしてきました」と、杉山さん。  写真:桜田容子

心のモヤモヤを言語化する練習になる

テレビを見ていると、記者さんが子どもに「このお芝居、どうだった? おもしろかった?」と質問しているのをよく見ます。そう聞かれたら誰だって「おもしろかった」と言うしかないですよね。

子どもはどんな答えを求められているか、わかりますから。「学校、どうだった?」という質問も同じで、子どもにしてみたらどう答えていいかわからない。

だから、僕はいつも具体的に、具体的に掘り下げていこうとしていました。相手が饒舌(じょうぜつ)に楽しそうにしゃべっていれば、「うん、うん、それで?」という感じで聞く。

とにかく相手の本気にはこっちも本気で耳を傾けるようにしていました。

そうやって言葉をつないでつないで、つないでいくと、そのうち、これまで聞いたことがない本音をポロっとこぼすことがある。

それは、これまで本人が抱えてきたモヤモヤした思いが、初めて言語化された瞬間かもしれない。

インタビューは、子どもがそのときに思っていることを、言葉にするきっかけになるんですよね。僕らはいつもいろいろなことを考えたり思ったりしているわけですが、それを人に話すには、何となく自分が思っているモヤモヤした感情を、自分の頭の中でまとめないといけない。

そしてそれを言葉にすることで、自分の考えとして正しく、再認識することができる。子どもインタビューはその練習でもあり、貴重な機会でもあると思うんですよね。

子どもインタビューがうまくいかなかったら?

子どもインタビューは、スムーズに進めそうな親子と、そうでない親子がいると思います。

日頃から冗談を言い合える親子関係ならいいですが、普段あまり雑談をしていない親子が、突然面と向かってこういうインタビューをやろうとしても、うまくいかないかもしれない。

それでも、これまで述べたように子ども自身が気持ちを言語化する練習にもなりますし、何よりおもしろいから、やってみる価値はあると思います。始めてみたら、親子にとってまた新しい展開があるかもしれませんから。

インタビューでは、ざっくばらんに普段の延長みたいにしゃべるのもいいし、「今日は君の話を聞きたいから」と、ある程度緊張感を持って語ってもいいでしょう。後者の場合、子どもの年齢によっては言葉を選んで話すことになる。それも意義があることだと思います。

ひとつ注意したいのは、インタビューを通して、子どもを何かに導こうとしないこと。インタビューに下心があると、順調に進まないかもしれません。

「そんなことを考えていたのね」と指導の材料に使ってしまえば、相手は口をつぐむようになるのは自明です。「ここでは何を言っても怒られない」という安心感を保障することが大切です。

また、なんとか答えを引っ張り出そうと、尋問のように質問をたたみかけるのはおすすめしません。聞き手としては、肩の力を抜いて、ただただ相手から出てきた言葉をつないでいけばいい。

「それで、それで?」と聞いていって、子どもが出した話をそこで終わらせないようにしていれば、そのうち子どものほうからひねり出したり、自分の中でモヤモヤしていた気持ちを言葉にする努力をしますよ。

子どもがつむぎ出す言葉は、年々変化していきます。インタビューをして記録にすると、それがよくわかります。そして言葉の変化と一緒に、心の内側まで記録できると感じました。

次回、どう変化していったか、僕が感じた「言葉の成長」をお話しします。

2022年11月に文庫化され再発売となった『子どものことを子どもにきく 「うちの子」へのインタビュー 8年間の記録』(ちくま文庫)。

杉山亮(すぎやま・あきら)
1954年東京生まれ。離島などでの保父を務めた後、埼玉県でおもちゃ作家として、手作りのおもちゃ屋「なぞなぞ工房」を主宰。現在は山梨県北杜市の小淵沢に住み、児童書作家兼ストーリーテラーとして活動中。『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』など23冊に及ぶ「あなたも名探偵」シリーズ、『ばけねこ』(原作・ポプラ社)などのおばけ話絵本シリーズなど、数多くの児童書を執筆している。ストーリーテラーとして、全国各地の小学校などを廻り、話をする「物語ライブ」も行っている。2022年11月に、かつての単行本を文庫化した『子どものことを子どもにきく 「うちの子」へのインタビュー 8年間の記録』(ちくま文庫)が発売。

取材・文/桜田容子

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すぎやま あきら

杉山 亮

Akira Sugiyama
児童書作家・ストーリーテラー

1954年東京生まれ。離島などでの保父を務めた後、埼玉県でおもちゃ作家として、手作りのおもちゃ屋「なぞなぞ工房」を主宰。現在は山梨県北杜市の小淵沢に住み、児童書作家兼ストーリーテラーとして活動中。 『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』など23冊に及ぶ「あなたも名探偵」シリーズ、『ばけねこ』(原作・ポプラ社)などのおばけ話絵本シリーズなど、数多くの児童書を執筆。ストーリーテラーとして、全国各地の小学校などを廻り、話をする「物語ライブ」も行っている。 2022年11月に、かつての単行本を文庫化した『子どものことを子どもにきく 「うちの子」へのインタビュー 8年間の記録』(ちくま文庫)と、本人のTwitter発のメッセージ集『児童書作家の思いつき: 子どもと子どもの本のためのヒント集』(仮説社)が発売。

1954年東京生まれ。離島などでの保父を務めた後、埼玉県でおもちゃ作家として、手作りのおもちゃ屋「なぞなぞ工房」を主宰。現在は山梨県北杜市の小淵沢に住み、児童書作家兼ストーリーテラーとして活動中。 『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』など23冊に及ぶ「あなたも名探偵」シリーズ、『ばけねこ』(原作・ポプラ社)などのおばけ話絵本シリーズなど、数多くの児童書を執筆。ストーリーテラーとして、全国各地の小学校などを廻り、話をする「物語ライブ」も行っている。 2022年11月に、かつての単行本を文庫化した『子どものことを子どもにきく 「うちの子」へのインタビュー 8年間の記録』(ちくま文庫)と、本人のTwitter発のメッセージ集『児童書作家の思いつき: 子どもと子どもの本のためのヒント集』(仮説社)が発売。

さくらだ ようこ

桜田 容子

ライター

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。