子どもの言葉の習得が「早ければいい」わけではない理由 発達心理学者がわかりやすく説明
【子どもの言葉の発達】#2 言葉の発達は子どものペースで
2024.12.30
坂上先生:やりとりをするときに心がけたいのが、子どもの興味、関心に応え、それを一緒に楽しむ姿勢です。
子どもの問いかけに周囲の人が「ワンワンだよ」とか「ワンワンかわいいね」などと応えることによって、子どもはその言葉や意味を知るようになります。
子どもが小さいうちは、養育者が指さして「あれは○○だよ」と教えても、同じモノに注意を向けられなかったり、視線を追えなかったりすることがよくあります。養育者が主導するのではなく、子どもが興味を示した対象についてやりとりしてみましょう。子どもの興味に養育者の側が合わせていくことで、やりとりがふくらみます。
──つい「いろいろ教えたい」という気持ちが先走ってしまいますが、子どもの興味に合わせることが大切なんですね。
坂上先生:そうですね。「教える」よりも、「応える」姿勢が大事です。
正解を教えるとか、知識を増やすことを心がける前に、まずは子どもの問いをきっかけにして、目の前のやりとりや会話のキャッチボールを楽しんでみましょう。
子どもに聞かれたことがわからなくても大丈夫です。「パパ・ママはこう思う」とか、「なんでだろうね、どう思う?」など、一緒に考えて会話を広げてみましょう。
坂上先生:子どもの「あれは?」「なに?」「なんで?」は、語彙を増やす大きなチャンスです。子どもは、他者や周囲のモノ、できごとの名前をあれこれ知りたがります。やりとりを通して、モノには名前があることやものごとにはつながりがあることに気づいたとき、一気に言葉を吸収し、語彙を身につけていきます。
言葉の発達は子どものペースにまかせて
──それでも、子どもがなかなか話さないと、親としては不安になりますよね。「たくさん話しかけているのに」と、つい他の子と比べて焦ってしまいそうです。
坂上先生:言葉の発達には、脳の言語機能にかかわる部分をはじめ、視覚や聴覚など五感をつかさどる部分の発達、感覚や運動機能、口や舌、のどといった発声にかかわる器官の発育なども関係しています。
言葉を話せるようになるまでには、いくつものプロセスを踏む必要があるため、時間がかかります。また、発達の進み具合には大きな個人差があります。
言葉の発達がゆっくりだと、自分たちの愛情不足ではないかとか、育て方が悪いのではないか、障害があるのではないかと心配になってしまう人もいると思いますが、結論を急がないことです。