なぜ保健室の先生には話せるの? 3000人の子どもが心を開いた養護教諭の会話術
我が子の心の悩みが晴れていく! 保健室の先生に学ぶコミュニケーション術#1
2022.11.14
保健室の先生は子どもたちが「話をしたい!」と思わせる魔法を持っている!?
「子どもたちには誰かに頼りたい、誰かと話したい、誰かと一緒にいたい、というときがあります。その欲求と照らし合わせたとき、保健室はいつもそこにあって、保健室の先生は『いつ』『誰が』『どんな用事で』来ても受け入れてくれる人なのです。
また、評価をしない第三者的な立場ということも、子どもが悩みを打ち明けやすい立ち位置なのかもしれません。私に関していうなら、秘密を守るという点も子どもたちから評価を受けている部分だと思います。
私は高学年の女子から好きな男子の話をされることがあるのですが、打ち明けてくれる前に、私が信頼に値する人物かどうかをその子は保健室に偵察しに来ました。
そして私の対応を観察し、『真亀子先生は秘密をバラさないから大丈夫!』と彼女の中で安心感が得られると、自分から話をしにやってくるのです。
話を聞いたあとは他言をせずに過ごしていると、『真亀子先生は話しても大丈夫な人』との噂が女子の間で広がって、他の子も話をしにやってくるようなりました。
親が養護教諭のように我が子のことを客観的に捉えることは難しいものですが、少なくとも、子どもをいつ何時も受け入れる姿勢は持ってほしいですね。
今は共働きの世帯が増えているのでご両親は忙しいとは思いますが、子どもの話したいときと親に余裕があって話をききたいときは違います。子どもには今しかありませんから、子どもが会話を求めてきたらすぐに向き合ってあげるか、できるだけ早めに時間を作ってあげましょう」(渡邊先生)
渡邊先生は自身が2人の息子の子育てをしていたとき、仕事のほかに介護もしていた時期があったそう。だからこそ、時間に追われている両親の気持ちが痛いほどよくわかるといいます。
さらに、子どもとの会話のタイミングなどを逃して子どもが口をきいてくれなくなった経験もあります。先生は自らの失敗や後悔を踏まえ、子どもの時間軸を大切にしてほしいと訴えます。
子どものモヤモヤは「子どもの心をみる」「子どもの心をきく」がポイント!
子どもが抱いている心のモヤモヤを、自分から話してくれたら親としてはうれしいものです。会話を求められたら渡邊先生のアドバイスに従い、すぐに向き合ってあげることが大切です。
しかし、親が子どもの話を受け入れようと間口を広げていても、いくら経っても近づいてくれないこともあります。子どものことが心配になったとき、親はどのようにアプローチをしていけばいいのでしょうか。
「子どもの心に寄り添うには、『みる』ことと『きく』ことが大切です。『みる』には6つの種類が、『きく』は3つの種類があり、保健室のコミュニケーションメソッドにおける言葉の意味は次のとおりです。
これらは保健室から生まれた子どもたちの小さなサインを見逃さないための方法です。追って具体的に解説はしていきますが、まずは距離を縮めるには『みる』『きく』が大切であることと、それには種類があることを覚えてほしいと思います」(渡邊先生)
子どものストレスは、自分でもその正体がどこからきているものなのかわからないことがあります。また、小学生は自分の気持ちを表現したり、自分の身に起こっている状況を伝えたりするだけの語彙力や表現力が十分に備わっていないことがあるため、自分の状態をうまくいえないことがあります。
親がいくら間口を広げていても、話ができない場合があるのはこのためでしょう。そして、いくら子どものことが心配だからといっても、このような状態のときに子どもの言葉を無理に引き出そうとせかしたり、問い詰めたりするのはNGです。子どもは心のモヤモヤを押し殺して、自分を責めるなどの別の表現方法をとる場合があります。
さらに、モヤモヤの原因は親子やきょうだい間のトラブル、担任の先生についての悩み、勉強への不安など、複数の問題が絡み合っていることもあります。
心の問題は心身の健やかな成長に影響しますから、親が焦らずじっくりと子どもに向き合い、段階を踏んで絡まった糸を解くサポートをしてあげることが必要です。