ただの遊びじゃない! 2歳児が「探究活動」に夢中になる理由
「まるいのいっぱいみぃつけた!」「見て、これのりまきだよ」「(木を触って)なんだかあったかい」
冬が近づく2025年11月末のある日、西麻布保育園のテラスでは、2歳児クラスの子どもたちが探究活動を楽しんでいました。
保育室と園庭のちょうど中間に当たるこの場所は、外の空気や光を感じながら室内遊びができる空間。机の上には、赤や黄色に色づいた葉、大小さまざまな形の枝、流木、平べったい石など、「秋の自然」というテーマに関連する素材が並んでいます。
5人の子どもたちは、独自の遊びを展開中。似たような形の石を集める子、足の指に細い枝をたくさん挟んでみる子、かごに多種多様な自然を詰め込んで先生に渡す子。
どの子も手あたり次第に目の前のものを手に取っているように見えますが、実は、興味のあるものに自分なりの方法で向き合っています。
「子どもたちが素材や遊び方を選べる環境を、大切にしています」と話すのは、クラス担任で探究活動のリーダーでもある川端翔(かわばたしょう)先生。「とうきょう すくわくプログラム」で連携する東大CEDEPの専門家と相談しながら、この日もただ素材を置くだけではなく、「違い」や「差」ができるように意識して、テラスの環境をデザインしたといいます。
「同じ素材でも置く場所、光の当たり方や影の具合によっても子どもたちの感じ方、関わり方が変わるんです」という川端先生の言葉どおり、観察していると、熱心に石を集めていた子が少し離れたテーブルへと移動し、日が当たって色鮮やかに光る葉を手に取りました。
じっと見つめたり、光にかざしたり興味深そうに眺めたあと、それまで遊んでいた石を持ってきて、今度は葉の上に丁寧に並べ始めたのです。環境によって、子どもが新たな「発見」をした瞬間でした。
子どもの「発見」につながるきめ細かい環境づくり
西麻布保育園は、2023年度から「とうきょう すくわくプログラム」に参加しています。このプログラムは東京都が東大CEDEPと連携し、希望する幼稚園や保育園、こども園などを対象に、探究活動の実践をサポートする事業です。西麻布保育園は、他園の参考になるような活動事例を生み出す園(実践協力園)として東大CEDEPの専門家と共同で探究活動を進めています。
探究活動は、子どもと大人が一緒に「問い」に向き合い、深めていくプロセス。こう聞くと少し難しそうですが、子どもが普段から繰り返している「なんで?」といった疑問や興味から出発し、じっくりと遊んだり観察したり、それを周囲と分かち合ったりする活動です。そうした「夢中になって楽しむ経験」が、ものごとへの好奇心、自分で考える力、協同性といった「非認知能力」の育ちにつながっていきます。
*乳幼児の探究活動については、こちらの記事で詳しく解説しています。
西麻布保育園では、これまで4歳児、5歳児クラスで探究活動を推進してきましたが、2025年度は初めて、乳児(0~2歳児)クラスでの探究活動にも取り組み始めました。
探究活動ではテーマに沿った疑問や好奇心が生まれやすいように、さまざまな工夫をしていますが、その一つが川端先生が述べた「環境をデザインする」ことで、「すくわくプログラム」で示されている探究活動の流れでも紹介されています。
環境への配慮は探究活動の準備段階だけでなく、活動中にも及びます。
取材した日も、子どもたちのグループが入れ替わる短い時間に、さっと机の数や配置、素材の並べ方を変更する様子が見られました。子どもたちが1ヵ所に集まりやすくなっていたことや、時間の経過で日差しの入り方が変わったことなどを考慮しての行動でした。
そうした視点を踏まえて子どもたちの姿をよく観察してみると、配置を変えた2つ目のグループでは、子どもたちが空間を広く使い、各エリアごとに異なる興味で活動が進んでいることが見てとれます。
のんびりソファに座っているだけに見える子も、じっくり観察すると石を集めたカゴに手を入れ、黙って手触りを確かめているようです。その隣には、異なる形の木を順番に触って質感の違いを楽しむ子の姿がありました。
少し離れた場所では、別の子が小さな丸太や太い木の枝を真剣に組み立てています。最初は上へ上へと積んでいましたが、次第に横へも広がり、高さの違う塔がランダムに作られていきます。「これ、Aちゃんの東京タワーだよ」とうれしそうです。
「子どもたちの着眼点、活動(遊び)の展開の仕方はとにかく多様です。今回は『秋の自然』というテーマで探究活動に取り組みましたが、素材や形の違いを組み合わせて何かを作る子もいれば、風に乗って落ちてくる葉をずっと観察している子もいる。
そこに正解や不正解はなくて、あるのは『その子らしさ』なんですよね。探究活動をとおしてそう実感しています。改めて、子どもたち一人ひとりの興味、視点、考えを大切にしたいと思っています」(川端先生)































