子どもの思考を止めないために 先生の「葛藤」
2025年度から2歳児クラスを中心に、0歳児、1歳児と全乳児クラスで探究活動を開始した西麻布保育園。先生たちの工夫や試行錯誤、東大CEDEPのサポートなどにより活動は順調に進んでいますが、2歳児クラスでは子どもの年齢特有の悩みを感じることもあります。
「子どもと一緒に活動していると、ああ、今すごく何かを感じているんだろうな、と思うことがあるんです。だけど、『言葉』としては出てこない。そういうときに、どこまで大人が代弁していいのか……という迷いや葛藤はありますね」(川端先生)
子どもが考えているときに、本人が言葉を発する前に「ザラザラしている? すべすべしている?」などと保育者が口にしてしまうと、子どもの中でイメージが固定化してしまう懸念があるといいます。
取材した日の探究活動でも、子どもたちが木や石の手触りを楽しんでいる場面がありましたが、先生たちはじっくり観察しながら「どんな感じがする?」「違いはあった?」と問いかけたり、「気になるね」と気づきを促したりして、子どもたちに寄り添っていました。
「今後年齢が上がっていけば、子どもたちはもっと感情や感覚を言葉で表現するようになるでしょうから、今は言葉ではない表現を受け止め、共感しながら対話することを心がけています」(川端先生)
乳児クラスの子どもたちは、言葉がそれほど多くない分、表情やしぐさ、声など体全体で興味や発見を表現します。2歳児クラスは0歳や1歳と比べると言葉は増えますが、考えや感じていることを表現するのはまだ難しい時期。先生たちは子どもの年齢や現状に合わせた対応を模索しながら、丁寧に探究活動を進めています。
大人の想像を超える子どもの発想力
川端先生は、2025年度初めて探究活動に携わりました。「子どもたちはいつも自分の想像を軽々と超えていく」とうれしそうに話します。
「環境設定を含めて、探究活動の準備のときにはある程度子どもたちの姿を予測しているのですが、実際子どもたちが活動を始めると、『そんなところによく気づくな』『こんな遊び方があったんだ!』と、驚きの連続です。
そういう姿を目の当たりにして、自分の中に『こんな素材を用意すれば子どもたちの反応は○○だろう』という凝り固まった考えがあったことに気づきました」(川端先生)
夏には同じ2歳児クラスで水の探究を行いました。川端先生は子どもたちが水の感触を楽しんだり、水たまりで水路を作ったりすると考えていましたが、いざ始めると、子どもたちはホースから落ちた水で地面にできた穴に興味を持ちました。そして、自分たちで水を落として同様の穴を作ることに熱中。予想もしない方向に活動が進んでいきました。
「自分自身に先入観や思い込みがあると、無意識に子どもたちを誘導してしまうかもしれません。だから、探究活動だけでなく、普段の保育でもできるだけ固定観念を手放して、子どもたちに向き合いたいと考えるようになりました。探究活動を全身で楽しむ子どもたちの姿が、私に教えてくれたんです」(川端先生)
探究活動は子どもだけでなく、大人の気づきも促します。そうした気づきが子どもたちへの接し方や関わり方に現れ、より豊かな活動が生まれていく。探究活動は、大人と子どもが一緒に進めるものなのです。
保護者は忙しい毎日の中で、じっくりと対象に向き合っている子どもに気づかず、無意識に子どもの遊びや行動を誘導してしまうこともあるでしょう。
西麻布保育園のように、親も子どもの興味やありのままの姿を大切にすることで、新たな子どもの成長が見えてくるかもしれません。
後編は、探究活動での子ども同士の関わり、日常の遊びへの広がりなどをレポートし、好奇心を潰さない子どもへの関わり方などを紹介します。
取材・文 川崎ちづる
【乳幼児からの探究 西麻布保育園の挑戦 前編】の連載は、全2回。
後編を読む/4月4日からリンク有効。
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川崎 ちづる
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。
ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。