子育てに正解はありません。100組の親子がいれば、100組の子育てがあります。
たくさんの子どもたちと向き合い多くの経験を重ねて来た「こども教室」のベテラン講師が、「子育てと学びのヒント」をお伝えします。
今回のテーマは「試行錯誤力」。積み木やパズル遊びなどには 早く正確に作るだけではない、「本当の狙い」があったのです。本稿は講師歴25年の池山尚子さんの執筆です。
「講談社こども教室」は0歳から未就学児対象の「幼児知育コース」、小学生を対象とした「国語・算数コース」、0歳からの「英語・英会話コース」を運営する知育教室です。
「試行錯誤力」とは?
小学生だった頃、難しそうな問題に対して、あなたは、どんな反応をしたでしょう。
自分にはとても解けそうにないから諦めよう、誰かに解き方を教えてもらおう、と自分で考えることをやめてしまった経験はありませんか。それとも、難しい問題に意欲的に取り組み正解まで粘り強く考え続けるタイプの子どもでしたか。
頑張って解いた問題が間違っていた時に、もう一度異なる方法で解き直すということは小学生だけでなく、大人になっても容易なことではありません。
私が25年にわたり指導にあたっている「講談社こども教室」の小学生の生徒たちの多くは、粘り強く物事を考えることを得意としています。そして、答えが違っていた時に、投げ出すことなく何度も解き直すことが、難なくできています。
私は、これを、試行錯誤力と名付けています。
「試行錯誤力」の育み方
「試行錯誤力」は、どのように育まれるのでしょう?
そのヒントの一つが、教室の教具「積み木」です。
「積み木遊び」と聞くと、積み木を積んだり並べたりして、家や電車を作る、というイメージです。しかし、0、1、2歳児にとっては、「積み木」は積むというより、崩すことが楽しい遊びです。
大人が高く積んだ「積み木」を、子どもがガラガラガチャンと崩します。大人が否定的な反応をせず、「あ~、壊れちゃったね、もう1回積もう」と、言いながら、積み直しをします。その時に、大げさな身振り手振りがあると、子どもは、楽しい気分になります。
楽しい気分の時は、子どもは、何度も何度も同じことを繰り返します。大人もそれに飽きることなく付き合うようにして、子どもの気分を高揚させます。こうして、「積み木崩し」を十分に堪能した子どもが、いよいよ自分で積む、並べることを始めるのです。
崩すことを楽しんでいる時期に大切なことは、崩すというマイナスのイメージを、再度積み直し、挑戦することは楽しいことだ、という肯定的なイメージに作り変えてしまうということです。
「崩してはいけません!」「悪い子ね」などと、否定的な言葉かけをしないように気をつけます。
同じことは、教室の「パズル」にも言えます。
教室では、年齢に応じた「形パズル」「形合わせ」という教具がありますが、講師が手本を示す際、パズルを完成したとたんに、またバラバラにして、「あ~、ぐちゃぐちゃになっちゃたね、顔が反対になっちゃった(笑)もう1回」などと、やり直しをします。
完成したところが、ゴールではなく、完成も道半ば。完成してまたバラバラにして、やり直す、という過程を楽しむということを身につけると、一番に出来た! 早く出来た! ということより、工夫すること、試すこと、繰り返すことが楽しいという考え方が育っていきます。
繰り返しを楽しむことが大切
教室では、積み木、パズルの他にも、「ひも通し」という教具があります。
5色の色玉やウレタン製のキューブをひもに通していくのですが、一度完成したらそれで終わりではなく、次は色の順番を変えて通してみる、とか、玉の個数を変えてみる、などとパターンを変えて、何度でも繰り返すことができます。
これも、繰り返しを嫌がらず、根気よく作業を続けるための教具として使うことができる、と、長く愛されている教具です。
大人(特に親)は、早くできること、完璧にこなすこと、に価値を見出してしまいがちです。
子どもが小さいうちは、大人の期待に添えることができても、大きくなるにつれて、できないことが増えていきます。
親(周囲の大人)の期待に添えないという挫折感は、大人が想像する以上に、子どもの心に重くのしかかるようです。
過程を楽しめるようになっている子どもは、満足のいく結果が出なかった時に、もう一度やり直してみよう、挑戦してみよう、という気持ちで、課題に再度取り組むことができます。周囲の大人もそれを見守り、励ますことができるようになっています。
これらの教具の他にも、「カルタ」、「すごろく」など他の友だちと競い合うような教具があります。これも、勝ち負けだけにこだわると、負けた時に、大泣きしたり、すねたりして、遊びそのものが楽しくないということになってしまいますが、
次は頑張ろう!
どんなことを工夫すればうまくいくだろう?
と考えるようになれば、気持ちを切り替えることができます。
乳幼児期に、遊びを通して、繰り返しを楽しめる子どもに育てると、学齢期に、難しい問題に喜んで取り組むように成長していきます。
「試行錯誤力」は、一朝一夕には身につくものではありません。私たち大人が、その成長過程を、見守り、励ますこと、何度も繰り返すことができる環境を整えること、これらが、とても重要なポイントになるのです。
池山 尚子
講談社こども教室 講師歴25年
教室で出会った親子の心に寄り添い、楽しいレッスンを心掛けている
元気な子、個性的な子の指導を得意とする
講談社こども教室
0歳から12歳まで、 "遊びながら学び考える"経験をたくさん積む場所「講談社こども教室」を全国で運営しています。幼児知育だけでなく英語や国語・算数を通じて、一生を支える学びの基礎を身につけるお手伝いは、経験豊富な講師陣が担います。長年にわたる「どの子も伸ばせる」経験をもとに、お母さまお父さまの気持ちに寄り添い、お子さまの将来の可能性を広げる視点で記事をお届けします。 講談社こども教室 https://www.kodansha-pal.co.jp
0歳から12歳まで、 "遊びながら学び考える"経験をたくさん積む場所「講談社こども教室」を全国で運営しています。幼児知育だけでなく英語や国語・算数を通じて、一生を支える学びの基礎を身につけるお手伝いは、経験豊富な講師陣が担います。長年にわたる「どの子も伸ばせる」経験をもとに、お母さまお父さまの気持ちに寄り添い、お子さまの将来の可能性を広げる視点で記事をお届けします。 講談社こども教室 https://www.kodansha-pal.co.jp