「子どものうつ病」親の無理解が悪化させる? 「死んじゃダメ」「大丈夫」とは言わない親の見守り方 専門医の解説
子どものうつ病#3 ~親の見守り方~
2024.12.04
北海道大学病院子どものこころと発達センター特任教授、児童思春期精神医学専門医:齊藤 卓弥
齊藤卓弥先生(以下、齊藤先生) これまで(#1、#2)お話ししたとおり、子どものうつ病は学童期(6~12歳ごろ)から見られ、12歳以上では大人と同じ程度の発症のリスクになり、問題視されています。
症状は大人と違った表れ方をすることもあり難しいのですが、そうしたサインにいち早く気づくことが大事だと思います。うつ病の回復には、早期発見・早期治療が重要です。
親は子どもの変化に敏感なものですが、「急にイライラし出した」「食欲が増えた、または減った」「寝ている時間が増えた」といったお子さんのサインを見逃さないでいただきたいです。もちろん、数日で元に戻ればよいのですが、長期化するようであればうつ病を疑い、信頼できるところに相談することをおすすめします。
相談先としては、まずお子さんが通う学校が身近でよいと思います。児童精神科はそもそも数が少ないですし、いきなり精神科を受診するのは抵抗がある親御さんも多いはずです。学校と連携がとれると、親が知らない学校での様子を担任から教えてもらえたり、不必要なプレッシャーを減らすようにケアしてもらえたり、さまざまなメリットがあります。
スクールカウンセラーの教育相談を利用するのもよいでしょう。スクールカウンセラーとは児童や生徒、保護者の心のサポートを行う心理職の専門家で、現在、全国の多くの公立学校に配置されています。
お子さん本人が相談に行きたがらない場合、親御さんだけで行くパターンも多いです。「どうしたらいいんだろう」と家族だけで悩み、困っているよりも、相談相手がいたほうが親御さんの心の負担も軽くなると思います。
「がんばれ」「大丈夫」「死んじゃダメ」はNG
──うつ状態・うつ病の子どもに対して、親が気をつけることは何でしょうか?
齊藤先生 前回(#2)お話ししましたが、うつ病の発症には環境的要因が大きく影響していて、家族の不和、両親の離婚・再婚、親の無関心など、原因が家庭にある場合も多く見られます。特に思春期以降は、親からの過度な期待によって重圧を感じたり将来に悩んだりして、うつ病を招くケースも。親の言動が子どもの負荷になっていないか、今一度、見直してみるとよいと思います。
また、うつ病の回復には、心身の休養が不可欠です。休養が必要なとき、親が「ちゃんとしなさい!」「いつまで寝ているの?」などと𠮟責したり小言を言ったりしては、余計にストレスを与えて症状を悪化させてしまいます。
例えば「がんばれ」「大丈夫だよ」といった声がけも、一見、子どもを励ます良い言葉のように思えますが、言われた本人は「がんばっているのに、全然わかってくれていない」「大丈夫じゃないから、こんなにつらいのに」とマイナスにとらえがちです。
うつ病のお子さんは、病気の影響で否定的なことをよく言います。親が言われていちばん困るのは「死んでしまいたい」「生きていてもしょうがない」といった生死に関わることではないでしょうか。たいていの親御さんは気が動転して「死んじゃダメ!」などと言い返すのですが、お子さんが本当に伝えたいのは「死にたい」よりも「死ぬほどつらい」という気持ちなんですね。
そうした状況で「死んじゃダメ!」と言われても、お子さんはちっともラクにならない。「怒られた」「否定された」くらいにしか思わないのです。