「子どものうつ病」親の無理解が悪化させる? 「死んじゃダメ」「大丈夫」とは言わない親の見守り方 専門医の解説

子どものうつ病#3 ~親の見守り方~

北海道大学病院子どものこころと発達センター特任教授、児童思春期精神医学専門医:齊藤 卓弥

もし「死んでしまいたい」と言われたら、否定するのではなく「それくらい苦しいんだね」と、まずはお子さんの気持ちに寄り添ってあげてほしいと思います。本人を否定するような「ダメ」という言葉は、どんな場面でも禁物です。

怖いのは、子どもが親につらい気持ちを伝えたり見せたりしなくなること。親が子どもの気持ちを把握し理解して、子ども本人が思いを吐露(とろ)できる環境であることが大切です。親御さんには、親子の結びつきが切れないように心がけていただきたいですね。

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背負いすぎず親もサポートを受けて

──わが子がうつ病になったら、考えすぎてしまったり、親自身のメンタルも心配ですね。

齊藤先生 うつ病の発症には遺伝の影響もあると言われているため、子どもがうつ病なら、親もうつ病になりやすい可能性があります。遺伝の影響がなかったとしても、つらそうなお子さんを見ていたら親御さんもつらいですよね。

実際にお子さんがうつ病になり受診しているうち、いつの間にかご両親も精神科に通っているご家庭もあります。家族全員がどんよりとしているご家庭は多いです。

もし、親御さん自身がつらくなったら、ご自身のために精神科などの医療機関へ相談に行くとよいでしょう。親が苦しくて何もできなくなってしまったら、子どもを支えてあげることができずに共倒れになってしまいます。自分だけでもまずは助けてもらおうと思うことは、決して悪いことではありません。がんばって耐える必要はないのです。

親ががんばりすぎて燃え尽きてしまわないように、例えば、医療機関や信頼できる相談先、利用条件はありますが地域のデイサービスなど、ご自分の居場所を作ることは大事だと思います。

親が冷静に、どんと構えていると、子どもは安心できます。周りのサポートをうまく活用しながら、親御さんにはご自身の精神的なケアもしていただきたいですね。

─・─・─・─・─・

関心が高まっている子どものうつ病。わが子が元気なときはうつ病になるとはなかなか想像しにくいですが、齊藤先生のお話を聞き、きっかけ次第で誰にでも起こりうることだと知りました。子どもの発する小さなサインを見逃さないように、親としてしっかり心にとどめておきたいです。

また、齊藤先生はインタビューの中で「特に小さいお子さんには、繰り返し怒っても自己肯定感が下がるだけでいいことは何もない」ともおっしゃっていました。子どもの性格や個性を受け止め、困難にぶつかったときは見守り支えてあげられるように、親は心に余裕を持って子育てをすることも大事なのだと改めて思います。


取材・文/星野早百合

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さいとう たくや

齊藤 卓弥

Takuya Saito
北海道大学病院子どものこころと発達センター特任教授、児童思春期精神医学専門医

1987年に日本医科大学卒業後、日本医科大学神経科、アメリカ・ニューヨークのコーネル医科大学精神科、アルバート・アインシュタイン医科大学を経て、1999年、日本医科大学にて医学博士取得。 アルバート・アインシュタイン医科大学精神科助教授、日本医科大学精神医学教室准教授を経て、2014年、北海道大学大学院医学研究科児童思春期精神医学講座(現・子どものこころと発達センター)特任教授に就任。児童思春期精神医学の発展、児童思春期精神医学を担う医師の養成に尽力する。 ●北海道大学病院 ●北海道大学病院子どものこころと発達センター

1987年に日本医科大学卒業後、日本医科大学神経科、アメリカ・ニューヨークのコーネル医科大学精神科、アルバート・アインシュタイン医科大学を経て、1999年、日本医科大学にて医学博士取得。 アルバート・アインシュタイン医科大学精神科助教授、日本医科大学精神医学教室准教授を経て、2014年、北海道大学大学院医学研究科児童思春期精神医学講座(現・子どものこころと発達センター)特任教授に就任。児童思春期精神医学の発展、児童思春期精神医学を担う医師の養成に尽力する。 ●北海道大学病院 ●北海道大学病院子どものこころと発達センター

ほしの さゆり

星野 早百合

ライター

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。