これまでに2000人以上の子どもを“排便外来”で診察してきた小児外科医の中野美和子先生。先生は、実は便秘でつらい思いをしている子どもは大勢いると言います。もし子どもが便秘だと気づいた時は、どうすればよいのでしょうか。
第2回は、子どもが便秘になった場合の対応、排便をスムーズにするにはどうすればよいのか。医療機関にかかる目安や、実際の治療、家庭でできるケアなどについて、詳しく教えていただきました。
(全3回の2回目。1回目は子どもの便秘と便秘のしくみについて)。
「便秘かな?」と思ったら排便間隔と便の形状を記録しよう
お母さんやお父さんが、子どもが「便秘かな」と思ったらまずは1週間、排便間隔と便の形状を排便日誌につけて欲しいと中野先生。
「正常な排便は、定義上、週3回以上を言います。週2回以下は、便秘の可能性が高いので、便の記録をつけてみてください。
このとき、実際に便を見て、確認することが大切です。自分の便を見ない、というお子さんがかなりいますので、親子で便の確認を行ってみてください。
週2回くらいしか出ていない状態が続くなら、さらに1ヵ月記録を続け、どのくらいの間隔で排便があるかをしっかり確認してください。
ただ、週3回以上出ていても“うんちが硬い”、“出にくそう”、と親御さんが感じたら、便秘の可能性が高いです」(中野先生)
●排便日誌の記入例
排便日誌は便の写真でもOK
「排便日誌がむずかしい場合は、出た便を携帯やデジカメなどで撮影をして、治療医に見せてくださるだけでも参考になります。
また、便秘がひどいと、悪い菌が増えて異様な臭いになることも。
硬さや大きさの他に、臭いもメモしておきましょう。子どもでも、大人顔負けの臭さの場合は、便秘の可能性がとても高いと言えます」(中野先生)
決まった時間の声かけで習慣づけを
「排便日誌をつけてみて、親御さんが少しでも“便秘かも”と感じたなら、積極的にトイレで出すように促してみてください。
特に3、4歳以上のお子さんで、1人でトイレに行ける場合は、“うんちの時間だよ”と声をかけて、毎日トイレに行く時間を決めて習慣をつけるといいでしょう。
ただ、緊張すると出なくなってしまうので、強制にならないよう、軽い感じで声がけしてあげてください。
たとえ本人が“出ない!”と行きたがらなくても、子どもの便秘は肛門の近くの直腸に溜まっていて、“すぐそこまで来ている状態”なので、意外とトイレに座ってみると出る場合もあるんですよ。
毎日続けると、最初はつらそうでも、だんだん出せるようになることも多いので、出すことを習慣づけてあげることが大切です」
「うんちがしたい」は我慢させない
トイレに行くタイミング、例えば、食事の途中でトイレに行きたがる場合は、行かせたほうがよいのでしょうか。
「S状結腸に溜まった便は、大蠕動という大きな波によって直腸に移動します。
その大蠕動は、胃結腸反射と言って、胃にたくさんものが入ると起きることが多いです。
つまり、食事中にうんちがしたくなるのは生理的なことなので、“したい”と言ったらすぐに行かせてください!
子どもにはうんちを何より我慢させないことが大事です。“うんち!”と言ったらすぐに連れて行ってあげましょう」
病院受診のタイミングは、我慢するクセがつく前に!
子どもの便秘が気になる親御さんは、病院を受診するタイミングにも悩むものです。病院を受診する目安などはあるのでしょうか。
「2歳くらいまでのお子さんの場合は言葉でうまく伝えられないので、うんちをしたいのに出ない状態になってしまうと、我慢するクセがつく場合があります。できれば我慢するクセがつく前に受診してください。
3、4歳以上のお子さんでも、うんちを出すのが苦痛になってしまっているようでしたら、気軽に相談してみてください。
赤ちゃんの場合だと、授乳期のゆるい便は綿棒で出すこともできます。ただ、硬い便の場合は、掻き出さないと出ないので、病院で治療する必要があります。
小さいお子さんは、親御さんが“便秘かな?” と思ったら、受診していいと思います。かかりつけの小児科があれば、まずはそこを受診してみてください。というのも、便秘を放っておくと、腸内フローラ(※1)が乱れてしまう可能性も考えられます。
腸内フローラの悪化と生活習慣病と関連しているというデータも出ています。
“必ずこうなる”と明言はできませんが、便秘のままでいいことはまったくありません。
大人では、強い息みで不整脈や脳出血の原因になるかもしれないとも言われていますし、第一に便秘はとても不快なので、便秘の生活を送り続けないようにするためにも解消していただければと思います」(中野先生)
(※1)腸内フローラ
ヒトに棲みつく腸内細菌の種類は1,000種類以上、100兆個にもなります。種類ごとにテリトリーを保って棲む腸内細菌の集団を「腸内フローラ」と呼ぶ。善玉菌の働きで悪玉菌の増殖が抑えられ、バランスがとれている場合、腸内フローラはいい状態と言える。