子どもの便秘の仕組み “排便外来”の小児外科医が説くうんちのトラブル

小児外科医・中野美和子先生に聞く「子どもの便秘」 #1 子どもの便秘のメカニズム

小児外科医:中野 美和子

トイレトレーニングでますます便秘に

排便をするたび苦しい状態が続くと、トイレトレーニングがうまくいかないこともあると言います。

「実際に便秘になるのは1歳半~2歳くらいが多く、トイレトレーニングによってうんちが出にくくなるのではなく、もともと上手く排便できていないから、トイレトレーニングでますます出なくなってしまうということが多いんです。

便秘の子どもは、排便の時に痛みを強く感じるので、お産のように出すというお子さんも多く、なかにはとても時間のかかる子もいます。

うんちを出すのが本当に苦しいので、うんちをすることが怖くなり、“トイレ=怖い”になってしまうんです」(中野先生)

子どもの便秘は「直腸」に溜まる

では、子どもの便秘は大人の便秘と何が違うのでしょうか。

「子どもの便秘は“直腸に便が溜まって出せないタイプ”の便秘です。
一般的に、大人の便秘は“S状結腸”という上の部分に便が溜まるので、食物繊維を多く摂るなど、食事内容が重要です。

ところが、子どもの便秘は肛門のすぐ上にある“直腸”に溜まります(※1)。

お子さんによっては、直腸に詰まったことで、どんどん上に積み上がり、大腸全体に溜まってしまう子もいますし、直腸だけに溜まって肥大してしまう子もいます。
直腸まで来ているのに出せない状態のほうが、S状結腸に溜まるよりもつらいです」(中野先生)

(※1)子どもの便秘のしくみ
中野美和子著『赤ちゃんからはじまる便秘問題〈第3版・改訂増補〉』(言叢社)より。  資料提供:言叢社

実は気づきにくい子どもの便秘

「子どもがつらい思いをしているにもかかわらず、便秘に気づかない親御さんもじつは多いんです。乳児期からずっと便秘だと、子どもは“うんちはそういうもの”だと思ってしまうので、便秘で苦しい排便が普通になってしまい、悪化していることがわかりにいのです。
3歳ぐらいで気づく親御さんもいますし、小学生になってから気づく場合もあります。

また、排便の間隔が開くのが便秘だと思っている方が多いと思いますが、それだけではありません。便が出しにくい状態も便秘です。

毎日出ていても、トイレに行くたびに頑張って出しているような状態はもう便秘なんですよ。

排便の間隔だけではなく、便の硬さ、大きさ、出しにくさなどもチェックしてみてください。

実はトイレに流れないほどの大きな塊のうんちは、便秘のうんちなんです」(中野先生)

回数ではなく状態をチェックして

いいうんちの目安は、以下の表の4番。いきまず楽に出せて、おなかもすっきりする「なめらかバナナうんち」。

出典:NPO法人日本トイレ研究所 うんちweek2021「うんちチェックシート」
https://toilet-magazine.jp/unchiweek

「おむつは毎日チェックできますが、ひとりでトイレに行く年齢になったら、たまにトイレの時間や出しているときの様子、便の形を見てあげてください。
特に、“トイレが長い”と感じたときの便の様子は要チェックです。

子どもの便秘は慢性化しやすく、そうなるとうんちはなかなか出ません。
1週間出ないようなら、便意があっても出せない。あるいは便が怖くて出そうとしないということも考えられます。

ある程度の年齢になるとなんとか出せるようになりますが、便が出ない間は不快感、食欲低下、吐き気を催すことが多く、小学校入学後は腹痛を訴えるお子さんも多くいます。

とにかく子どもはとてもつらい状態。できるだけ早く改善してあげて欲しいですね」(中野先生)

中野先生がアドバイザーを務める「日本トイレ研究所」が配信する「トイレマガジン」では、子ども向けの簡単な「うんちチェックシート」を公開中。ぜひこちらも参考にしてみてください。
https://toilet-magazine.jp/unchiweek

第2回では、家庭でできるケアや、医療機関にかかる際のポイントについて教えてもらいます。

取材・文/石本真樹

※小児外科医・中野美和子先生に聞く「子どもの便秘」は全3回。
次回(#2​)は、21年12月20日公開予定です。(公開日までリンク無効)。

『赤ちゃんからはじまる便秘問題〈第3版・改訂増補〉』言叢社
http://gensousha.sakura.ne.jp/youiku-hukushi/benpi-mondai.html
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なかの みわこ

中野 美和子

小児外科医

慶応義塾大学病院、国立小児病院(現・国立成育医療研究センター)さいたま市立病院小児外科部長(現在は非常勤)を経て、現在、神戸学園理事・神戸動植物環境専門学校校長。 吉川小児科「排便外来」担当。医学博士、小児外科学会指導医。 「排便外来」を開設し、先天性の疾患、先天性疾患で手術を受けた後の長期フォローだけではなく、一般の子どもの難治性便秘、便通異常、便失禁の治療も行っている。 鎖肛の会顧問。日本トイレ研究所アドバイザー。 近著に『赤ちゃんからはじまる便秘問題〈第3版・改訂増補〉』(言叢社)。

慶応義塾大学病院、国立小児病院(現・国立成育医療研究センター)さいたま市立病院小児外科部長(現在は非常勤)を経て、現在、神戸学園理事・神戸動植物環境専門学校校長。 吉川小児科「排便外来」担当。医学博士、小児外科学会指導医。 「排便外来」を開設し、先天性の疾患、先天性疾患で手術を受けた後の長期フォローだけではなく、一般の子どもの難治性便秘、便通異常、便失禁の治療も行っている。 鎖肛の会顧問。日本トイレ研究所アドバイザー。 近著に『赤ちゃんからはじまる便秘問題〈第3版・改訂増補〉』(言叢社)。