ペットを飼ってみたいけれど、どんな動物がいいの? 特にペットと暮らした経験のないパパママは、悩んでしまうかもしれません。
第2回は、『阿佐ヶ谷動物病院』院長の西井丈博先生に、“初めてのペット”におすすめの動物とその理由、迎える前の準備について伺います。
飼い始めるのに最適なのは3~4歳
――前回(#1)はペットが子どもに与える影響についてお話いただきましたが、ペットを迎えるのに適した子どもの年齢はあるのでしょうか?
西井先生「動物の種類や、両親のペットと暮らした経験の有無にもよりますが、たとえば犬なら、散歩やトイレの世話など、やはり手が掛かります。子犬を迎えた場合はなおさらです。まだ子どもに手が掛かるうちは大変かもしれません。
子どもが自分で服を着たり、トイレに行ったり、ある程度のことができるようになる3~4歳ぐらいがよいのではないでしょうか。いい・悪いの認識が芽生えてきて、まわりから言われていることを理解しようとする年齢ですよね」
――3~4歳になると、まわりと一緒に遊ぶ意識が出てきます。そういう面でも、ちょうどよいのでしょうか?
西井先生「そうですね。犬や猫は、だいたい15年ほど生きると言われています。となると、子どもが高校生ぐらいの頃に、ペットの“死”と直面することになります。
感じ方は人それぞれですが、死というものを理解できるようになる年齢ですね」
――ペットとの別れは、大人でも相当つらいものなので、子どもが耐えられるか心配です。
西井先生「ペットの死によって、大切な家族との別れを初めて味わうお子さんもいるでしょう。大変なショックを受けるかもしれませんが、両親や家族が一緒なら、みんなで悲しみを共有し、分散させることができます。
ペットの死は、ある意味、子どもの今後に関わる非常に大きな経験です。
私自身も小学校3年生のとき、生まれたときからずっと一緒だった愛犬を亡くしています。それからずっと獣医師を志していたわけではないのですが、『あの子の病気を治すことができていたら』という思いは、常に心の中にありました。
やはり当時の経験が、この仕事を選んだきっかけのひとつなのかなと思います」
感情を共有したいなら犬や猫がおすすめ
――では、“初めてのペット”には、どの動物がおすすめでしょうか?
西井先生「私がおすすめするのは犬ですね。犬は昔から人間と共に暮らしてきた、いちばん身近な動物です。これまでの研究によって、犬の精神年齢は人間の3~5歳と同じぐらいで、我々と同じように喜怒哀楽の感情があることがわかっています。
飼うスペースが十分にある、時間的な余裕があるなど、条件をクリアできるなら、犬がいいのではないでしょうか。私が飼っているからというのももちろんありますが、お互いの存在を認めてコミュニケーションが取れ、感情を共有できるという意味で、犬は子どもにとって最高のパートナーになるはずです。
今ペットとして大人気の猫も、犬ほどではありませんが、一緒に遊んだり、コミュニケーションを取ったりができます。『子どもとベッドで一緒に寝ている』『自分のしっぽで子どもの顔をなでている』という話もよく聞きますよね。
ただ、猫はパーソナルスペースをとても大切にする動物なので、ストレスを感じたとき、ひとりになりたいとき、子どもと距離がとれる場所を準備してあげる必要があります」
――犬や猫を迎えるときの注意点はありますか?
西井先生「犬猫どちらにも言えることですが、種類によって性格もかかりやすい病気も、世話の方法も違います。お互いが不幸にならないように、そのコの特徴を知っておくことが大切です。
たとえば犬なら、運動が好きな犬種は長時間の散歩が必要ですし、垂れ耳の犬種は耳の病気になりやすいので注意が必要です。脚の短い犬種はヘルニアになりやすく、フローリングの床には滑り止めのマットを敷いたほうがいいケースもあります。
初心者におすすめの犬種というと、それぞれに魅力があるので悩ましいですが、扱いやすさとスペースを考えると小型犬がいいと思います。
丈夫で賢く、フレンドリーな性格のトイ・プードル、体が小さくて扱いやすく、運動量もさほど必要ないチワワ、人にも犬にも優しく、社交的なキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどでしょうか。トイ・プードルは毛が抜けにくいので、アレルギーの人にも飼いやすい犬種として人気です。
猫の場合、今流行りの原種に近い猫は性格が少々勇ましく、動物としては魅力的ですが、お世話や治療に協力的かというとそうではない(笑)。初めて飼うのなら性格的に穏やかな方がいいでしょうし、掃除も手入れも比較的ラクな短毛種がいいのかなと思います」