2021.08.22

ペットが子どもの豊かな感情を育む 飼う前に知っておきたい大切なこと

獣医師・西井丈博先生に聞く「子どもとペットのいい関係」#1

寄稿家:星野早百合

生まれたときから犬と一緒に暮らしていたという、『阿佐ヶ谷動物病院』院長で獣医師の西井丈博先生。愛犬は、ゴールデン・レトリーバーのリュック。
写真:村田克己

犬や猫など、ペットと暮らすことが当たり前になった今の時代。「子どものためにペットを飼いたい」と考えているパパママも多いのではないでしょうか。

第1回は、『阿佐ヶ谷動物病院』院長の西井丈博先生に、ペットが子どもに与える豊かな影響と、ペットを飼うことのメリットや注意点について伺います。

ペットは子どもにとって「きょうだい」「仲間」になる

――般社団法人ペットフード協会が2020年に行った調査()によると、全国の犬の飼育頭数は推計で約848万9000頭、猫は約964万4000頭。

コロナ禍の影響もあるのか、新たに迎えられた犬と猫は、前年よりもそれぞれ5万頭以上増えたとされています。ペットブームが長らく続いていますが、ペットの存在は、子どもにどんな影響をもたらすでしょうか?
※「令和2年 全国犬猫飼育実態調査」

西井先生「まず、命があるものへのいたわりの気持ちは、必ず芽生えると言っていいのではないでしょうか。ペットのお世話を通して『かわいがってあげよう』『守ってあげなきゃ』といった、相手を思いやる意識が自然と育ちます。

低年齢なら低年齢なほど、また、一人っ子ならなおさらのこと、ペットが子どもに与える影響は大きいかもしれませんね。

<7歳ぐらいまでは犬や猫と会話ができる>とよく言われるのですが、それぐらい子どもとペットは心で通じ合えるということなのでしょう。

子どもにとって、きょうだいや仲間といった、大切な存在になると思います」

――遊び相手であり、ときには心の支えでもある。両親やおじいちゃん、おばあちゃんとは、また違った関係性が築けるのでしょうか?

西井先生「そうだと思います。それに、心臓が動く音、ハァハァと息をする音、動物の体温や息の温度・湿度は、ゲームやおもちゃからは得られない感覚です。

目や鼻、耳の形をじっくり観察すれば、創造力が養われるでしょうし、自分と他者を区別できるようになって『強く握ったら痛いからやめよう』『触れるときは優しくなでよう』などと、相手の気持ちを想像する力もつきます。

また、ごはんをあげたり、なでたりすると、ペットは素直に反応して喜ぶので、気持ちを受け止める、共感するといった能力も育ち、感受性も豊かになるのではないでしょうか」

――愛情を注ぐとペットが喜ぶ。その姿を見るのがうれしいから、また愛情を注ぐ。ポジティブな連鎖が生まれますね。

特に子どもが小さい頃は、日中どうしても母と子だけの世界になりがちですが、ペットがいることで、母と子以外の関係が築けるのは大きなメリットだと感じました。

西井先生「子どもが小さいうちだと完全に目を離すのは難しいですが、ペットが子どもの相手をしてくれたら、お母さんはその間、家事や用事ができて、少しは時間的な余裕が生まれるかもしれませんね。

それに、もちろん大人にとっても、ペットは癒しを与えてくれる存在になるはずですよ」

NPO法人ワンコレクションの活動として、保育園や小学校などで“動物の授業”を行っている西井先生。「犬の触り方をレクチャーしたり、聴診器で心臓の音を聴かせたり。子どもたちに命の大切さや共感性を学んでもらっています」(西井先生)。
写真提供:NPO法人ワンコレクション

ペットを飼うのは扶養家族が増えるのと同じ

――ペットブームの一方、飼育放棄が問題視されています。ペットを迎える前に、注意するべきことは何でしょうか?

西井先生「『世話をするのが大変』『引っ越すから』などという単純な理由で、ペットの飼育を放棄する人がいます。ペットを飼うということは、家族の一員として、最期まで看取る責任があるということ。それは、しっかりお伝えしたいところです。

ペットが暮らすための十分なスペースがあるか、病気になったときに治療費を負担できるのかなど、親御さんにはまずしっかりと考えていただきたいなと思います。

ほかにも、動物の種類によりますが、ペットを飼うと時間的な制約が出てきます。ごはんをあげる、飲み水を取り替える、ペットの居場所やトイレをきれいにする、シャンプーやブラッシングをする、しつけをする……、犬の場合は散歩も必要です。

経済的な負担もありますね。はじめに揃えるグッズ以外に、毎日のごはん、トイレ用品などの消耗品、毎年受ける予防注射・ワクチン代、ペットの種類によってはトリミング代、先ほどお伝えしたように、病気になれば治療費も。

旅行も気軽にはできなくなりますし、ペットとの暮らしは、すべて自分が思った通りにはいきません。そういった<動物を飼う覚悟>は、やはり必要です」

――私も犬と暮らしていますが、ペットの中でも特に犬は、散歩が必要だったり、長時間の留守番が苦手だったり、人の都合に合わせるのは難しい印象があります。

西井先生「犬はもともと群れで生活していた社会性のある動物で、群れの中で、それぞれ自分の役割があります。犬と飼い主との間には、<散歩に連れていってくれる><朝起きたら必ずごはんをくれる>といった約束があるわけです。

たとえ飼い主が疲れていても、『今日はいいか』とはなかなかいきません。きちんと約束を果たすことで、犬との絆が深くなるのです。

犬や猫を飼うことは、<扶養家族がひとり増えるのと同じだ>と、私はよくみなさんに伝えます。そう考えると、飼い主としての責任をイメージしやすいのではないでしょうか」

「ペットを飼うと、素晴らしいことがたくさんあります。悲しい運命をたどる動物を増やさないように、本当に飼えるのか、しっかり考えてから迎えていただけるといいですね」(西井先生)。 写真:村田克己

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