理想のマイホーム 限りある予算と床面積をどう使う?  新進気鋭の建築家が「寝室」や「和室」の正解を解説

つくるかどうか迷う「和室」 広めに設計しがちな「寝室」 広さにメリハリをつけて快適に過ごすためのアイデアを建築家が教えます〔第3回/全3回〕

これまで『家は南向きじゃなくていい』の著者・内山里江さんにお話をうかがい、私自身のマイホームに後悔が募っていたところだが、ここからは一部「正解だった!」と思った点にもスポットを当てたいと思う。

それは寝室と和室。

眠りに不安のない私たち夫婦には、寝室に広さはいらないし、ベッドが入ればいい、と思っていた。さらに客人がそうそう来ない家なので和室の必要性もナシ。そう思い、寝室はせまく、和室はナシにしたのだが、そこにも内山さんならではの着眼点が。せまい場所を快適に変える、内山流メソッドをぜひご覧あれ。

全3回の3回目

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寝室などを狭くした分、広さを別の箇所に振り分けられるメリットも。ゆったり過ごせる空間はソファなしでも実現できる例。  『家は南向きじゃなくていい』より

寝るだけの部屋に広さはいらない

──我が家は夫婦そろって「横になったら3秒で熟睡」な体質だったので、寝室にこだわりはありませんでした。そこでベッドが置ける最小限の狭さにしたのですが、掃除も簡単だし、これは「成功」と思っています。

内山さん:理想の家をつくるのに無尽蔵にお金を費やせれば言うことはありませんが、普通はどこかで線引きしたり折り合いをつけたりしなくてはなりませんよね。しかし、それは決して「我慢する」ということではありません。今ある条件のなかで、自分の望む暮らしを叶える設計は必ずできます。大事なのはメリハリです。

トイレやお風呂などの汚れやすく掃除の手間がかかる場所はコンパクトにしたり、個室をつくらずフリースペースにしたりといったこともその一環です。お金と面積をかけるなら、思い入れのある場所に限定しましょう。そうすれば、我慢している感を抱かずに、素敵な毎日を過ごせます。

トイレやお風呂以外に「コンパクトでいい」と私が考えているのは、実は「寝室」です。寝室というと、ベッドを置くことを考えると最低でも6畳はマストと思われがちですが、ミニマム4.5畳でいけます。

──4.5畳!? そこまでの狭さは考えていませんでした。それではベッドも置けないのでは?

内山さん:それが、可能なんですね。これからご紹介する方法を使えば、です。

その方法とは「部屋全体をベッドにする」です。既製のベッドは使いません。部屋全体にマットレス(あるいは敷布団)を敷くのです。写真をご覧ください。どうでしょう、まったく無駄がないと思いませんか。

寝室を省スペース化した分、他の空間に面積を割くことができる。  『家は南向きじゃなくていい』より

内山さん:4.5畳のベッドルームと聞くと、狭くて窮屈そうに感じるかもしれませんが、部屋全体がベッドというのは意外と心が落ち着くものです。人間、寝るときはあまりに広々としたスペースより、自分サイズのコンパクトなスペースのほうが安心できるのは、皆さんも感覚としておわかりになるのではないのでしょうか。

そして、ベッドサイズでいえばキングサイズはゆうにこえるので、むしろ贅沢な感じすらします。ベッド感を出すために段差をつくって小上がりにしたり、間接照明を設けたり、壁に飾り棚をつけて上部にちょっとした収納スペースを確保したりすることもできます。

ちなみに、24時間換気システムが動いていれば、マットレスや布団を敷きっぱなしにしても湿気がこもることはありません。朝起きたらかけ布団だけはめくっておくといいでしょう。気になるかたはマットレスや布団を毎日立てかけたり畳んだりしてもよいですが、実際はそこまで心配しなくても大丈夫です。

寝室が4.5畳ですめば、その分、リビングやダイニングなどに広さをもっていくことができます。ベッドも使わないので必要な家具が減ります。掃除も楽になります。

コンパクトな寝室はみなさんが思っている以上にメリットが大きいのです。

──部屋全体をベッドに、という発想はありませんでした。これはちょっと、素人には思いつきません。これからマイホーム計画中の人にはぜひ参考にしてほしいですね。

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