ママパパの「学び直し」の費用と補助金 資格取得したくても「お金がない」子育て世代が27% FPが対策を解説
ママパパの学び直し(リスキリング)#2~始め方と費用~
2024.07.09
ライター:桜田 容子
岸田文雄首相がその必要性と支援を公言している、働く人々の学び直し(リスキリング)。親向けアプリなどを提供する企業、コネヒトの2023年調査によると、子育て世代で学び直しに「取り組んでいない」と回答した人の理由が、多い順に「精神的余裕がない」(71.2%)、「時間がない」(61.6%)、「やり方がわからない」(43.4%)、「お金がない」(27.6%)でした。
そのとおり、ただでさえ忙しい子育て世代のママパパ。そこに勉強の時間が加わると、今以上に破綻するのでは……そんな懸念もあるでしょう。
学び直し(リスキリング)をするには、まずどう始めたらよいか、お金はどう工面したらよいのか、スタートラインに立つまでの悩みに焦点を当てました。専門家のアドバイスは──。
※2回目/全5回(#1、#3、#4、#5を読む)公開までリンク無効
●丸山晴美(まるやま・はるみ)PROFILE
ファイナンシャル・プランナー(FP)、節約アドバイザー。2002年に大学へ入学し現在も在籍で学びを継続。保有資格はアフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー(AFP)、FP技能士2級、ジュニア食育マイスター、宅地建物取引士(登録)、認定心理士など多数。
STEP【1】目的と目標を定める
学び直し(リスキリング)をしようと思ったとき、まず何を何のために、いつまでに学びたいのか、目的と目標を定めることが最重要だと、2002年に大学に入学し、学び直し歴22年のFP(ファイナンシャル・プランナー)丸山晴美さんは話します。
「学びの目的を仕事にもっていくのか、実益にもっていくかははっきりさせたいところ。例えば、今働いている仕事に+αの知識を得ることで、資格手当をもらって収入を増やしたいのか。それとも、金融の知識や整理収納の知識を得て、今の生活をより充実させたいのか。
子どもを育てながらだと時間が足りず、勉強を断念してしまいそうになることもあるかもしれません。そのとき、『私はいつまでに○○の資格を取って○○の仕事に役立てたいんだ!』という当初の動機づけやプランを思い出すことで、モチベーションが保たれ、壁を乗り越えやすくなります」(丸山さん)
STEP【2】勉強にかかる予算を把握
目的と目標を定めたところで、次に立ちはだかるのがお金の問題。その学びにはどのくらいのコストがかかり、どう工面するのか。大事な貯蓄を使うべきかどうかも、夫婦で話し合いが必要になるでしょう。
まずは、予算取りのための目安を知ることから始めましょう。「予算はどこで学ぶか、で大きく変わります」と、丸山さん。
仮に資格取得の勉強をするのであれば、資格の種類や学校等によっても異なりますが、以下が目安になります。
①【通学】 大学や専門学校、養成学校などのスクールに入学して通学、または自宅でオンライン授業を受ける(※通信制のスクールでも年に何度か通学して授業を受ける「スクーリング」がある場合も)
②【通信講座】 通信教育講座に入会してeラーニング(動画配信授業)などを受講し自宅で学ぶ
③【独学】 教本や問題集を買うなどして独学する
上記3パターンのうち、一番お金がかかるのは、①の通学型。
「入学金や授業料、教材費のほか交通費やランチ代などの諸経費かかり、トータルの目安は数十万円になることが多く、資格によっては100万円を超えることも。ただ、試験にまつわる情報は最新かつ豊富で、もっとも効率的に学べます。
難易度が高く、時事問題も出る試験を受ける場合は、通学型は有利かもしれません。1年目だけスクールに通い、受からなかったら独学に切り替える、というのも手ですね。
もし通学費用を捻出できない場合、自治体で格安の講座が開かれていないか調べるといいでしょう。私自身、宅地建物取引士の資格を取るとき、自治体の講座に通いました。民間のスクールだと20~30万円かかる講座が、5~6万円で受けられたのでお得でした」(丸山さん)
なお、近年は①の通学型でも授業を動画配信していて自宅で学べるケースも増えてきています。また、目指す資格によっては、指定の養成校などに入学することが要件になることもあります。
②の通信教育講座は数万円程度、③の独学は数千円程度が目安ですが、国家資格になると教材一式で数万円かかることもザラ。
また、その分野に精通している人が、YouTubeなどオンラインで有料の講座を開いている場合もあり、そうしたオンライン講座に入れば1~2万円かかることもあります。
「②通信講座と③独学は、学校に通う時間とお金が捻出できない人に向いています。特に通信講座のオンライン授業は、いつでも好きなときに視聴できるタイプであれば、子どもが寝た後などに勉強できますよね。
ただし、こうした在宅系は、モチベーションの維持と自己管理がキモ。以前、朝活(あさかつ)が流行りましたが、2時間早起きして勉強を毎日やるなど、習慣化させることが合格への近道です。その辺りに自信がない人は①の通学型のほうが合っているかもしれません。
気をつけたいのが、1回目の受験で落ちて“沼”に入ることです。落ちると“勉強の沼”に入り、あれこれとよさそうな教材を何冊も買い足してしまう人が少なくありません。
それが何年も続くと、法改正のたびにまた教材を買い直すなどして、安上がりのはずが結局は意外とかかってしまった……ということも」(丸山さん)
国や自治体の補助金制度もチェック
こうした学費を抑える方法として、国や自治体などの補助金制度があります。
「雇用保険に加入している人は、教育訓練給付金制度をチェック。在職者・離職者を問わず、一定の要件を満たせば、最大で受講費用の70%(年間上限56万円)を支給してもらえる可能性があります。
ひとり親は、高等職業訓練促進給付金制度により、児童扶養手当の受給対象者など一定の要件を満たせば、訓練期間中は月額7万500円~10万円が支給されます。
いずれも、対象となる資格や講座が決まっていて、資格でいえば、人手不足の保育や福祉、デジタル関係などが対象になっている印象です。
そのほか、会社員なら人事部に聞けば、リスキリングの補助を出してもらえるかもしれませんし、自治体や民間企業、NPO団体が個人向けに独自で行っている制度もあります。
例えば、東京都なら短期集中型資格取得支援訓練があります。これは求職中の人に向けたものですが、IT系の資格試験や宅地建物取引士資格試験などの勉強を対象に、eラーニングと宿泊を伴う試験直前期の集合型講習を組み合わせた訓練が、受講料と宿泊費は無料で受けられるものです。ほかの制度も、『リスキリング 補助金』などでウェブ検索すると、見つけやすいですよ」(丸山さん)
もし、何を学びたいか決まっていないけれど、収入アップのために資格取得をと考えているならば、こうした制度の対象講座・対象資格の中から探すのも一つの方法でしょう。
制度を使う前にチェックすること
補助金の制度を使いたいとき、チェックすべきポイントがいくつかあります。自分が対象者の要件を満たすかどうか、学びたい講座があるか、申請期間、補助の金額など。中でも大事なのが、給付金を申請するタイミングです。
「教育訓練給付金制度のように受講が終わった後に申請するケース、ひとり親の高等職業訓練給付金制度のように入学金を支払った後に申請するケースなど、前もって資金の準備が必要かどうかは要チェックです。
自治体の制度の場合、予算に上限があったり、応募期間が決まっているケースも。年度初めの4~6月に応募を締め切るところもあるので、早めのリサーチと行動を心がけましょう。
資金がどうしてもない場合、求職者支援資金融資やひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業など、国や自治体から条件つきで貸与してもらえる制度もあります。
お金がないからといって学ぶことをあきらめる方もいますが、こうした制度を活用すれば、いくらでもチャンスはあります。やる気があるならぜひチャレンジしてほしいですね」(丸山さん)
次回は、「学び直しを始めるタイミング」について、専門家や経験者からアドバイスをいただきました。
【参考】
●コネヒト株式会社「子育てと仕事に関する調査」
●政府広報オンライン 教育訓練給付制度があなたのキャリアアップを支援します
●厚生労働省 教育訓練給付制度のご案内
●こども家庭庁 高等職業訓練促進給付金のご案内
●東京都TOKYOはたらくネット 短期集中型資格取得支援訓練
●厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク 求職者支援資金融資のご案内
●東京都社会福祉協議会 ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業
※ママパパの学び直し(リスキリング)は全5回(公開日までリンク無効)
#1
#3
#4
#5
桜田 容子
ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。
ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。
丸山 晴美
1974年、新潟県生まれ。東京でフリーターをしていた21歳のときに「家を買おう!」と思い立ち、会社員となり、頭金を貯め始める。それから5年後、コンビニエンスストアで店長をしていた26歳のときにマンションを購入。 少ない収入で一人暮らしをしながら貯蓄してきた経験をいかし、2001年に節約アドバイザーになる。同年、アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー(AFP)に合格。 2002年に通信制の放送大学教養学部教養学科に入学し、「生活と福祉」から「心理と教育」コースまで多ジャンルな科目を受講。現在も大学に籍を置きながら学びを継続している。 保有資格は秘書検定2級、調理師免許、FP技能士2級、ジュニア食育マイスター、宅地建物取引士(登録)、認定心理士、ITパスポート、家庭の省エネエキスパート検定合格など多数。プライベートでは、2016年からシングルマザーに。 著書や監修書も多く、最近では「お金を活かす ハッピーエンディングノート」(東京新聞)を監修。
1974年、新潟県生まれ。東京でフリーターをしていた21歳のときに「家を買おう!」と思い立ち、会社員となり、頭金を貯め始める。それから5年後、コンビニエンスストアで店長をしていた26歳のときにマンションを購入。 少ない収入で一人暮らしをしながら貯蓄してきた経験をいかし、2001年に節約アドバイザーになる。同年、アフィリエイテッド・ファイナンシャル・プランナー(AFP)に合格。 2002年に通信制の放送大学教養学部教養学科に入学し、「生活と福祉」から「心理と教育」コースまで多ジャンルな科目を受講。現在も大学に籍を置きながら学びを継続している。 保有資格は秘書検定2級、調理師免許、FP技能士2級、ジュニア食育マイスター、宅地建物取引士(登録)、認定心理士、ITパスポート、家庭の省エネエキスパート検定合格など多数。プライベートでは、2016年からシングルマザーに。 著書や監修書も多く、最近では「お金を活かす ハッピーエンディングノート」(東京新聞)を監修。