子どもの「勉強への姿勢が変わった!」 学校教師が驚いた「Feel度Walk」の効果

【今こそ学力観のアップデートをするとき】親子で探究実践#4「学校にも広がるFeel度Walk」

「好きなことだけやればいい」では主体性は育たない

現在、比較的多くの学校で実践されている探究学習は、「興味・関心のあること」をテーマに設定する方法です。これについて市川さんは、「一歩間違えると思い込みを強めてしまう危険がある」と指摘します。

「『好きなこと、興味や関心のあることから始めましょう』というのも、まあ悪くはないけれど、そこに偏りすぎるのは危ないと感じます。

僕たちが持っている興味や関心は、今現在、自分が自覚しているものだけではないと思うんです。繰り返しになりますが、『Feel度Walk』を続けていくと、自分が今興味や関心がないとしても、『もしかしたら後でつながるかもしれないから、ここで捨てちゃうのはもったいないよな』という感覚が働くようになります。好奇心のアンテナがどんどん広がっていくんです。

友だちとシェアすることで、さらに興味や関心が広がっていきます。  写真:市川力

そういう意味では、今の興味関心ばかりにフォーカスするのは、『好奇心』に対する勘違いだと思うんですよ。それに一歩間違うと、『自分はこれが好きで得意だから、他のことはやらなくていい』という態度を強化してしまう、一種の「バイアス」になりかねない。

この路線を強調しすぎると、自分ができることだけをやるのが『主体性・自主性』であり『自分らしさ』だ、と思い込んでしまう。自分から発案したことを行う場合は『主体的に取り組んだ』ことになるけれど、人が考えたことをやるのは『主体的じゃない』という発想になってしまいます。

自分のやりたいことだけにこだわるのは、本当の意味で『主体性のある態度』とはいえないと思います。テーマが天から降ってこようが、一見、自分と関係なさそうなものであろうが、自分なりに捉え直して関わることができる。これこそが、真の主体性なんじゃないかと僕は考えています。

実際に、社会課題に対応していくというのは、そういうことですよね。もちろん、自分を捨てろとか、自己を犠牲にしろとか、そんな意味ではありません」(市川さん)

そして、市川さんはこう続けます。

「『なんとなく気になる』『おもしろそう』を見逃さずに集め、追いかけて、探究していく。僕はこうしたあり方、生き方を『ジェネレーター』と呼んでいます。その時々の発見や思いつき、仮説を寄せ集めて、アイデアが浮かんだらすぐに試してみる。その結果を受けて、さらに新しいことにチャレンジしていく。試行錯誤しながら常に変わっていく、そんなあり方です。

『自分はこれをやるんだ』と肩に力を入れて取り組むのではなく、偶然出合ったさまざまなことを見逃さず、おもしろがって進んでいく。新たな意味づけを生成する=ジェネレートする『ジェネレーター』としての生き方こそ、予測不能な現代を生きる僕たちに必要なものだと考えています」(市川さん)

第5回は、PTAや先生の場づくり、地域課題の解決にも広がる『Feel度Walk』の事例から、発見力の向上だけではなく、「フラットな対話を生む効果」についてお話をうかがいます。

取材・文 川崎ちづる

市川 力(イチカワ チカラ)
一般社団法人みつかる+わかる代表理事/慶應義塾大学SFC研究所上席所員
2004年~2017年まで、東京コミュニティスクールの初代校長として、小学生を対象に探究力を育む学びを研究・実践。現在は、全国各地の学校に赴き探究学習の支援をするとともに、地域の多様な人たちがともに好奇心を発揮できるような、学ぶ場所づくりを行っている。主な著書は『探究する力』(知の探究社)、井庭崇編『クリエイティブ・ラーニング 創造社会の学びと教育』(慶應義塾大学出版会)、『ジェネレーター 学びと活動の生成』(井庭崇氏との共著/学事出版)

『【今こそ学力観のアップデートをするとき】親子で探究実践』の連載は全5回。
#1 Feel度Walkとは?を読む。
#2 Feel度Walkレポートを読む。
#3 Feel度Walkの効果を読む。
#5 問題解決に役立つFeel度Walkを読む。
※公開日まではリンク無効

市川さんの著書「ジェネレーター 学びと活動の生成」(井庭崇氏との共著/学事出版)では、ジェネレーターのあり方について詳しく解説されています。
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かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。