駄菓子屋店主の“話を聞くだけ”の無責任スタイルが子どもに人気なワケ

シリーズ「令和版駄菓子屋」#2‐2 ユニーク店主~「みんなで駄菓子屋(仮)」(愛知県名古屋市)~

ライター:遠藤 るりこ

深く考えずにいられるから居心地が良い

あいざわさんと子どもたちとの距離感は独特です。手厳しい駄菓子屋のおばちゃんでもなければ、おせっかいな世話焼き店主でもありません。

「みんなでぎゅーぎゅーに店に集まって、単純に楽しくって、くつろげる。子どもたちにとったら、ここは深く物事を考えずにいられる希少な場所なのかなって感じています」(あいざわさん)

そんな日々のなか、子どもとの会話でこぼれてきた悩みを聞くこともあります。

「私は専門家じゃないので深くは介入せず、『そうなんだ〜』と共感して聞くだけ。今の子どもって物事をわかっているから、大人に相談したら何かアクションを起こされてしまう、って感じているんですよね。

だからこそ私は話を聞くだけの存在に徹していようかなって。カウンセラーでも担任の先生でもない、でもマンツーマンで話を聞いてくれるだけの大人って、案外周りにいないんじゃないですかね」(あいざわさん)

子どもたちには何も与えなくっていい

子どもたちとの普段のやりとりにも、あいざわさんの人となりが表れています。

「あるときは『この店って買ったらいくらなの?』なんて質問が子どもたちから出て。みんなで『1億円!?』、『いや、1000万円かな』なんて言い合っているなかで、私は『さぁ、いくらだろうねぇ』って答えを出さないんです。

そうやって物事に興味を持って考えて話し合っている時間って、何より素晴らしいじゃないですか」(あいざわさん)

目標を決めず、答えを目の前に置かないのがあいざわさんのスタイルなのかもしれません。

「駄菓子屋って儲からないでしょ。どうやって生活してるの?」なんて心配してくる子たちにも、あいざわさんは「どうしてると思う~?」と返します。

「店を開いたばかりのときは、せっかく来てくれているんだから子どもたちに何かをしてあげなきゃ、って力が入っていたこともあります。

でも、それは違ってた。子どもたちは勝手に疑問に思って一生懸命考えて、自分で答えを探したり、おもしろいものを作ったりできるんですから。こちらからは何も与えなくっていいんだって」(あいざわさん)

そんな「みんなで駄菓子屋(仮)」には、子どもたちが自ら考えて作り出したアイディアであふれています。

自由に生み出す時間や工程を大事にする。「きっとこの経験が、未来の一歩につながるんだろうなって」(あいざわさん)  写真提供:「みんなで駄菓子屋(仮)」

「食べ終わった駄菓子の入れ物の中にお米を入れて、キレイにフタをして、チェーンを通して、キーホルダーを作ってくれた子がいたんです。振るとシャカシャカ鳴って、本物の駄菓子みたい。

最初は私にプレゼントしてくれたのですが、『これ、お店で売ったら?』ということになって。うちで駄菓子を仕入れて、中身は食べて加工をして、完成したものを店頭で売ってみたことも。売り上げは作った子に全部還元したんですよ」(あいざわさん)

この駄菓子屋を舞台にして、子どもたちの世界がのびのびと広がっていく雰囲気が伝わってきます。

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