空き家物件が変身した「美大生駄菓子屋」って何? 子どもや高齢者をつなぐ場所になった理由
シリーズ「令和版駄菓子屋」#4‐2 「大学生駄菓子屋」~駄菓子屋ハブ~
2023.12.02
ライター:遠藤 るりこ
来訪客から地域の困りごとを解決する
福本さんには、ハブだけにとどまらない構想があります。
「ハブは学生によるデザイン事業と並行しているので成立できていますが、駄菓子屋だけでの経営はどうしても厳しいですよね。だから、他地域のどの駄菓子店でも運用できる仕組みを考えています」(福本さん)
ひとつが、各棚にスポンサーをつける「お菓子棚の広告モデル」。今は駄菓子も仕入れ価格が高騰していて、10円、20円で買える種類が少なくなっています。そこで、棚単位で駄菓子の値上がり分の端数費用だけスポンサーになってもらい、その代わりに棚に企業名やイベントの広告を出す仕組みをつくっています。
「ハブの場合であれば、数千円のスポンサー費用で、年間5000人の目に触れることができるので、地域の企業などにとっても良い広告と捉えていただいています」(福本さん)
また、新しい事業を始めたいが販売場所がないという方に向けた「チャレンジショップ」のコーナーを設置。実店舗での販売でお客さんの生の反応を見てみたい方たちにとっては良いスペースになるし、お客さんとしても新しい商品を手に取れる機会になります。
さらに「駄菓子屋を飛び出て、学生が地域で活動する機会を作っていきたい」と福本さん。
「人っ子一人見かけない地域から5000人のお客さんが訪れる賑わいを生み出すことができました。この5000人と学生らがつながることで、地域の問題解決に寄与する取り組みが生まれる仕組みを試行しています。
具体的には、地域の困りごとを共有して一緒に取り組むきっかけとして駄菓子屋にクエストボード掲示板を設置しています。ご高齢で独居の方など、誰かにちょっとした用事を頼みづらい方も多いと思います。そうした方々の“困りごと”に一緒に取り組める関係性を生み出したい。
例えば、『電球を変えてほしい』とか、夏は『草刈りしてほしい』などです。そんな地域の困りごとを解決しに、子どもと大学生がペアになって、お手伝いに行きます。
取り組めた子どもには、お店で使えるコインがもらえ、お菓子と交換したりゲームで遊べたりできます。あとは不用品の処分に困っているという声も多いので制作素材にできないかななど、学生たちとできることについて話しています」(福本さん)
ものづくりが得意な美大生たちならではの「おもちゃの修理プロジェクト」も開始しました。
「壊れたおもちゃを持ってきてもらって、例えばお父さんと子どもと一緒に修理をするんです。直して終わりではなく、継続的な親子のコミュニケーションになりますよね」(福本さん)
福本さんは、駄菓子屋ハブへ込められた思いをこう話します。
「望まない孤独や孤立をいかになくすのかが、社会の課題として大きく取り上げられています。でも、人生において、いつどのようにその孤独が訪れるのかは誰にもわからない。
僕は、アートやデザインの力で、孤独や孤立の予防線となる“人とのつながり”や“地域とのつながり”をつくることができると信じています。駄菓子屋ハブは、その役割を果たせる場の一つだと思うんです。ここで得た経験値を、広く発信していきたいと思います」(福本さん)
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次回「令和版駄菓子屋」は、ワゴンに駄菓子を積んで地域を回る、移動式駄菓子屋にインタビューします。取材協力/
●駄菓子屋ハブ
新潟県長岡市寺泊竹森1106‐1
営業時間:木金13時~18時、土日10時~18時
定休日:月火水
【関連サイト】
合同会社ハブ(駄菓子屋ハブ)HP
X(旧Twitter) @dagashiya_hub
遠藤 るりこ
ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe
ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe