金田一先生の子育てと国語力相談「読み聞かせ・読書・親の言葉遣い」

国語の神様・金田一秀穂先生に聞く「国語力を養う親子の時間」#4〜子育てと日本語のQ&A編

日本語学者:金田一 秀穂

「いたずらばかりしている子、親の言うことを聞けない子も子どもらしくていいじゃないですか」と朗らかに笑う金田一先生。
写真:菅沢健治

■本を読まずに外で遊んでばかりで心配です

Q:「我が子は漫画どころか、そもそも本を広げることもせず、遊んでばかりいます」

A:「子どもは外で駆けずり回ってナンボ」

とにかく本を読ませて「読み書き」の能力を身につけさせたいと願う親御さんは多い。でもね、そんなにお勉強させなくていいじゃん、子どもなんだから。親子ともども無理をするくらいならお外で遊んでいる方がいいよ~。僕はそう思いますね。

実際、僕の子どもは、公文式の教室に1〜2回通っただけで「つまらない」といって退会しましたが、何の問題もなく、今は立派に成長しています。

僕の子ども時代は確かに本をよく読み、ラジオも落語などを楽しんで聴いていました。でもそれは、娯楽が他になかったからです。

僕は小学校低学年の頃、ネフローゼ症候群という腎臓の病気を患い、2年生と3年生の2年間は入院療養していました。

その間、友達と遊ぶこともプールで泳ぐこともできなかった。運動会も参加したことがないし、修学旅行も行ったことがない。それがどんなに辛いことか。いまだに傷として残っています。

子どもはね、外で駆けずり回りたいんです。でも僕はそれができないから本とラジオで楽しむしかなかった。

そんな記憶があるから、自分に子どもができて、彼らがプールに行ったり運動会で駆けずり回っているのを見ると、もううれしくてうれしくて、涙が出ました。

子どもは元気が一番。お勉強なんかできなくていい。本当にそう思います。ほんっっき(本気)で思います。

どの子にも「子どもらしさ」がある。5歳なら5歳なりの子どもらしさ。いたずらばかりしている子、親の言うことを聞かない子、すべてひっくるめて子どもらしい。それを発揮してほしいですね。

うちの子なんて、「金田一さんの子は今どき見かけない、本当に子どもらしい子ですね」って言われてきましたよ(笑)。
変に大人びた子どもではないし、大人にとって妙に扱いやすい“いい子”でもない。いわゆるバカでめちゃくちゃな子でした。

おかげさまですくすくと育って、今は長男、長女ともに立派な社会人に成長しています。

幼少期、学童期、青年期などその時代時代を十分に、十全に充実させていくことが、何より大事だと思うんです。

ですから、そう気負わずに。語彙力についても前(#2)に述べたように「言葉はあくまでも考えたり伝えたりするための道具。

少ないよりはたくさん知っていた方が生活に便利だから」「私もたまには本を読んで語彙を増やそうかな」といった感覚でゆる~く考えてください。


取材・文/桜田容子

金田一先生の記事は全4回です。
第1回(#1) スマホは子どもの国語力に影響なし! 事実と意見を区別する力が必要
第2回(#2) 「ヤバい」を連発する子どもに親ができる語彙力アップ
第3回(#3) 子どもが本好きに育てる「親の言葉磨き」とは?

11 件
きんだいち ひでほ

金田一 秀穂

日本語学者

1953年生まれ。東京外国語大学大学院日本語学専攻課程修了。中国大連外語学院、米イエール大学、コロンビア大学などで日本語講師を務め、現在は杏林大学外国語学部客員教授。専門は日本語学。日本語学を専門とする。著書に『15歳の日本語上達法』(講談社刊)、『日本語大好き』(文藝春秋刊)など。編集に『学研現代新国語辞典』(学研プラス)など。

1953年生まれ。東京外国語大学大学院日本語学専攻課程修了。中国大連外語学院、米イエール大学、コロンビア大学などで日本語講師を務め、現在は杏林大学外国語学部客員教授。専門は日本語学。日本語学を専門とする。著書に『15歳の日本語上達法』(講談社刊)、『日本語大好き』(文藝春秋刊)など。編集に『学研現代新国語辞典』(学研プラス)など。

さくらだ ようこ

桜田 容子

ライター

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。

ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。