――最近の図鑑にはどのような特長が見られますか?

学習図鑑に限ったことではありませんが、昆虫でも植物でも“生きている姿”の写真が多く掲載されるようになりました。昔の子どもたちは、夏休みの自由研究で標本を作りました。自分で作った標本と図鑑を見比べて、“これは何だろう?”と種類を調べるので、図鑑には標本写真が載っていたわけです。

けれど、今の時代、そもそも標本を作ること自体があまり推奨されていませんし、デジカメで撮ることの方が圧倒的に多いですよね。となると、“生きている姿”を撮った写真と図鑑を見比べるので、図鑑にも生体写真を載せた方が調べやすい。もちろん、きちんと調べるなら標本写真と見比べることも必要ですが、非常に時代とフィットしていますよね。

同じことが魚や海の生きものにも言えて、標本写真ではなく、水中写真家が撮った生体写真を載せる図鑑が増えています。これは、防水仕様のデジカメが普及して、シュノーケリングやダイビングで、気軽に水中写真が撮れるようになったため。図鑑は、読み手のニーズに合わせて進化しているのですね。

――標本写真に比べて臨場感のある生体写真は、大人が見てもワクワクします! 写真以外では、いかがでしょうか。

2011年に講談社からDVD付きの図鑑シリーズ『MOVE』が発売されて以降、多くの図鑑がDVD付きになりました。また、学研の図鑑シリーズ『LIVE』では、専用アプリをダウンロードしてスマートフォンやタブレット端末を図鑑にかざすと、3D映像や動画が見られます。写真だけでは伝わらない昆虫や動物たちの動く様子、声がリアルに楽しめるようになったのも大きな進化ではないでしょうか。

斎木先生が分館長を務める、「千葉県立中央博物館 分館海の博物館」にてお話を伺いました。
写真:小松貴史

図鑑は新しい世界を知るための<ガイドブック>

――時代と共に進化を遂げてきた図鑑ですが、図鑑を読むことのメリットは何だと思われますか?

読み物として、美しい写真を見るだけでももちろん楽しいのですが、図鑑は<旅行ガイドブック>のようなものだと思っています。たとえば、なんてことのない神社だと思っていたけれど、ガイドブックに<この神社は戦国時代に……>と解説があると、その神社の価値がわかり、見え方も変わりますよね。それと同じで、ただの青い花だと思っていたものが、図鑑に<明治時代に西洋から持ち込まれた花><実は食べられる>などと書かれていると、まったく違ったものに見えてくるのです。

“ただのもの”が、図鑑によって“特別なもの”になる。すると、道を歩いているだけでも「この雑草は何て名前だろう?」「そろそろ花が咲きそうだな」と、好奇心が刺激されてワクワクします。
図鑑は、きっと新しい世界を広げてくれるはずですよ。


取材・文/星野早百合

10 件

寄稿家紹介

斎木健一 さいきけんいち

さいきけんいち 1962年、神奈川県生まれ。「千葉県立中央博物館 分館海の博物館」分館長。所有する図鑑は1800冊以上。TBS系テレビ番組『マツコの知らない世界』では、“図鑑の世界”の案内人を務めるなど、メディアにも多数出演。2014年、千葉県立中央博物館で行われた企画展の図録として、『図鑑大好き!』(彩流社)を出版。『講談社の動く図鑑 MOVE 植物』(講談社)の監修も担当している。
写真:小松貴史

千葉県立中央博物館 分館海の博物館
http://www2.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/