「子どもの叱り方」って何が正解!? 発達心理学者が導く答えとは?

こんなときどうする?子育てQ&A#1「叱るって、どうすべき?むずかしい…」

子どもの叱り方って何が正解? 写真:アフロ
子育てにおいて、して良いこと、してはいけないことを教える「叱る」は大切なこと。

怒鳴ってばかり、まったく叱らない、どちらも何も伝えていません。
発達心理学の専門家・渡辺弥生教授が子育ての悩みに答えます。

「いけないことをしたときに、どの程度の加減で叱ればいいのかわからない」(2歳半・女の子)

どの程度叱るのが正解? 写真:アフロ

なぜ叱るかを子どもに伝えましょう

たとえば子どもが車の前に飛び出しそうになったとき、「危ないじゃない!」とただ怒鳴るだけではなく、「車には気をつけなきゃいけない。あなたの命が大切だから」と、なぜ叱るかを同時に伝えてください。

「叱る」は生きていくうえで大事なこと、理解してほしいことを子どもに教えるということです。

感情的になりそうなときは、一呼吸おいて冷静になり、叱ることが教えにつながっているか、感情をぶつけるだけになっていないか、振り返りましょう。
きちんと目を見て具体的に話せば、親の思いは伝わります。

「『甘やかす』と『甘えさせる』、線引きがわかりません」(2歳・男の子)

「甘やかす」と「甘える」の線引きは? 写真:アフロ

「甘えさせる」は悪いことではありません

確かに親が子どもに対して、なんでも望み通りに甘やかしてばかりいると、子どもはわがままになってしまいますね。

たとえばよくある「だっこして」も、「疲れた? お腹すいたの?」と理由を問いかけてみましょう。

本当に疲れている様子ならば、だっこしてあげることは甘やかしではありません。

別の理由や、もし親御さんがだっこできない状況なら「じゃあ休もう」「おやつ食べようか」など、子どもが望むだっこではないけれど、気持ちを汲んで応答します。

「甘えさせる=何でもいうことをきく」はダメですが、「甘えさせる=耳を傾け、応答する」はとても望ましいことです。

大人でも甘えたい気持ちはありますから、子どものしつけだからなんでも厳しくしなくてはいけない、甘えさせてはいけない、という理屈はないのです。

「真剣に叱っても、子どもに気持ちが伝わらないときがあります」(3歳・男の子)

叱っても子供に伝わらないときはどうすべき? 写真:アフロ

見た目ではわからない、伝え続けることが大切

伝わっているかどうかは、見た目ではわかりませんから、伝え続けることが大切です。

子どもは日々成長しているので、繰り返し伝えることで、いつか理解できるようになります。

親は「叱る」という行為をキツく怒鳴る、というイメージで捉えがちですが、「きちんと伝える」ということがとても大切です。

子どもが自立するための力、自分で解決する力、他人との関わりの中で生きていく力をつけるための「叱る」は、親が子に大事なことを伝えるための手段だといえます。

繰り返し伝えることは気力、体力がいりますが、子どもに教えなければいけないことを全力で伝え続けること、それが「子育て」なのです。
文/久世恵美
※この記事は幼児誌「げんき」に掲載された記事を再構成したものです。
わたなべ やよい

渡辺 弥生

教育学博士(発達心理学、発達臨床心理学)

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。