発達障害かどうか気になります【発達障害・発達特性のある子のお悩みに専門家が答えます】

#1 発達障害かどうか気になります 〔言語聴覚士/社会福祉士:原哲也先生からの回答〕

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

ところで、発達障害の子どもが示す行動は、発達障害の子どもだけが示すものではありません。状況によっては私たちも、働きかけに応じなかったり、今やっていることに固執することはあります。その意味では私たちと発達障害の子どもは地続きなのです。

ただ、違うのは、発達障害の子どもの場合、その程度が顕著であるために、生活のしにくさが生じている、という点です。この「生活のしにくさが続いている」ことが発達障害の目安の一つになります。

これらの「生活のしにくさ」を親が感じたとき、親はどうするでしょうか。繰り返し伝えたり、𠮟ったり、時にはどなったりするかもしれません。しかし、それらの方法では、発達障害のある子は、ほとんど何も学ぶことはできません。

そのような方法で伝えられても「わからない」からです。彼らの生活のしにくさを軽減するには、彼らのことを「理解し」、その理解に基づいて「その子に必要なことを」「その子に適した方法で」教える必要があります。

それは、保護者が経験した子育て、またはこうしたいという子育てとは違うかもしれません。しかし、彼らに対する理解に基づいた、その子に適した方法をとるようになると、子どもの「生活のしにくさ」は軽減していきます。その子の示す状態に対する周囲の理解と対応によって、発達障害の子どもの生活のしにくさは大きく変わります。適切な理解と対応がなされることで、発達障害と診断されても、生活のしにくさが最小限にとどまることはあり得ます。

逆に、周囲の適切な理解と対応がなされないと、診断がある場合もない場合も、生活のしにくさが軽減しないだけでなく、さらに、うつや不登校、引きこもりなどの二次障害が起きてくることもあります。保護者として子どもをどう理解し、どう対応したらいいのかがわからない。これも支援を要する発達障害の目安の一つになると考えています。

個性ということば

保護者の方と話をする中で「これは個性ととらえていいですか?」と尋ねられることがあります。広辞苑(第6版)には「個性」は「個人に具(そな)わり、他の人とはちがう、その個人にしかない性格・性質」とあります。この語義からすると、確かに、発達障害のある子の示す行動や症状は個性と言っていいという考え方もあるのかもしれません。

しかし、「個性ととらえる」といったとき、どこかに「個性だから仕方がない」「特徴や性格のようなものだから、専門家に相談する必要がない」という気持ちはないでしょうか。もしそういう気持ちがあるとしたら、そしてその結果、保護者や子どもの周りの人が「個性だから」といって、子どもが必要としている理解と対応をしないならば、どうなるでしょう? 子どもの「生活のしにくさ」は軽減するどころか、ひどくなることは目に見えています。

発達障害のある子の行動や特性を「個性」ととらえることは、一見耳当たりはいいが、実は突き詰めると「君の個性だから、どうぞ、ひとりでがんばってね」と突き放してしまうことになるように、私は感じます。

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