上橋菜穂子の最新作を「食事を忘れて一気読み」長い眠りから覚めた“秘蔵作”に書店員が驚愕!

2026年1月22日刊行『神の蝶、舞う果て』のレビューを公開 (3/3) 1ページ目に戻る

「最後の場面が好きすぎて、何度も読み返してます」

「2度読みました。1度目は、ルクランとジェードふたりと、ふたりをとりまく人間の話として。2度目は、大きな黒い花、大井戸、ラムラー、神の蝶、蝶の影、予兆の鬼火、そして人間の関わりを絵図にしながら読みました。

読み終えたときに、その世界の壮大さに鳥肌が立ち、今、とても興奮しながら感想を書いています。いわゆる「自然」「生物」の循環の話をするとき、私たちは、私たち「人間」をその循環から抜いて考えることが多いと思います。無意識になのか、意図的になのかはわかりませんが、「人間」は独立していて、人間の世界は他の生物とは別の世界なのだと。

また、上橋先生の作品のすごいところは、ファンタジーなのに、ファンタジーではない、といいますか、異世界の話とは思えないほどに、登場人物の喜びや葛藤、世界の空気に読み手が馴染んでしまうところです。会話として表現しない人間の優しさは、私たちが日々欲している優しさで。登場する食べ物や食事の描写の瑞々しさは、私たちのお腹を鳴らせます。(「よく冷えて外側に水滴が浮いている果汁の壺」の表現には生唾が出ました)

コスパタイパと効率化ばかりが持て囃される日々を生きる中で、読書は圧倒的に時間がかかります。でも素晴らしい作品に出会い、読み、考え、自分なりに答えを見つけたとき、それは自分の今後の人生を生きていくための力になります。そのことを改めて実感させていただけた作品でした。」

(書店員)

「読み終えた今、何と言えばいいのか分からない感情に巻き込まれていて言葉になりません。輝いて見えていた世界が本当は違ったのかもしれない、自分が見えているものだけが全てなんかじゃないと、知っていたのに知らないふりをしていたことを真正面から向き合わされた作品でした。

どこまでも続く深い闇の大井戸に真っ逆様に落ちたみたいな衝撃と、この物語は本当に終わったのかと、何度も本の後ろを確認して、なくて、ジェードとルクランの物語の先の2人を思って今日も片隅に考えます。

どの描写もファンタジーの世界ならではの綺麗な青く緑のかかった碧の色が広がっていて、映像として読み進めました。神の蝶と蝶の影の最後の場面が本当にどの描写の言葉も好きすぎて、何度も読み返してます。」

(書店員)

書店員、図書館関係者の心を打った、作家の源泉を辿る一冊

著/上橋菜穂子
価格/1,980円(税込)

『神の蝶、舞う果て』は、上橋菜穂子さんの代表作である「守り人」シリーズと並行して執筆されていました。のちの『獣の奏者』、『鹿の王』、『香君』にもつながっていく、創作の軌跡を知ることができる貴重な作品です。

神と魔物、光と闇が共に宿っているとされる、神聖でありながらも恐ろしい聖域〈闇の大井戸〉で、魔物から聖なる蝶を守る役目を負って暮らすカタゼリム(降魔士)の少年・ジェード。ある日、ジェードの相棒である少女・ルクランが、聖なる蝶が舞い上がって来る予兆の鬼火に触れる事件が起きて──。

壮大で複雑な運命の糸に絡めとられていく、ふたりの物語。執筆から20年以上の時を経て著者の手で加筆修正され、力強くも美しい物語へと成長し、ついに世界へと解き放たれます。

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24 件
うえはし なほこ

上橋 菜穂子

Nahoko Uehashi
作家・文化人類学者

作家・川村学園女子大学名誉教授。 1989年に『精霊の木』で作家デビュー。野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞をダブル受賞した『精霊の守り人』を始めとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、『獣の奏者 Ⅰ~Ⅳ』、『獣の奏者 外伝 刹那』、本屋大賞と日本医療小説大賞を受賞した『鹿の王』、『香君』ほか著書多数。2009年に英語版『精霊の守り人』で米国図書館協会バチェルダー賞を受賞。2014年に「児童文学のノーベル賞」といわれる国際アンデルセン賞作家賞を受賞。2020年に英語版『獣の奏者』で米国図書館協会マイケル・L・プリンツ賞オナー、バチェルダー賞オナーに選出。2023年に「守り人」シリーズで吉川英治文庫賞を受賞。2024年に菊池寛賞を受賞。

作家・川村学園女子大学名誉教授。 1989年に『精霊の木』で作家デビュー。野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞をダブル受賞した『精霊の守り人』を始めとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、『獣の奏者 Ⅰ~Ⅳ』、『獣の奏者 外伝 刹那』、本屋大賞と日本医療小説大賞を受賞した『鹿の王』、『香君』ほか著書多数。2009年に英語版『精霊の守り人』で米国図書館協会バチェルダー賞を受賞。2014年に「児童文学のノーベル賞」といわれる国際アンデルセン賞作家賞を受賞。2020年に英語版『獣の奏者』で米国図書館協会マイケル・L・プリンツ賞オナー、バチェルダー賞オナーに選出。2023年に「守り人」シリーズで吉川英治文庫賞を受賞。2024年に菊池寛賞を受賞。