北欧の一国・スウェーデンは、教育にとても力を入れています。
なかでも幼児教育は特徴的です。自然の中での遊びを通して、子どもたちの「創造力と想像力」「学ぶ意欲」、そして、これからの社会で不可欠となる「サステナビリティに対する意識」を育んでいます。
北欧の幼児自然教育の専門家である高見幸子さんに、スウェーデンでの取り組みと日本へのヒントをお聞きしました。
第1回は、スウェーデンの就学前学校(保育園・幼稚園)で大切にされている“ある教育観”ついてお伺いしました。(全4回の1回目/#2、#3、#4を読む)
「教え込まない」スウェーデンの幼児教育
スウェーデンでは、1歳から教育と保育を合わせた“エデュケア”というシステムがあり、熱心に幼児教育に取り組んでいます。
しかし、それは椅子に座って文字の読み書きをしたり、足し算や引き算を先生が一方的に教えたりするものではないと高見さんは言います。
「スウェーデンの就学前学校(保育園・幼稚園)では、子どもが『自然の中で遊ぶこと』をとても重視しています。
体力面はもちろんですが、自然の中でのびのびと遊ぶ『体験』こそが、子どもたちの意欲と関心を高め、学びを深めることにつながると考えているからです。
自然の中には、子どもの好奇心をかきたてる材料が豊富にそろっています。それらを使って創造力と想像力、問題を発見・解決する力、社会性などを身につけるんです」(高見さん)
「スウェーデンでも、50年程前は大人が子どもに厳しく教える『管理教育』が主流だったといいますが、徐々に子どもの主体性を伸ばす現在の方法に変わってきました。
こうした背景には、『子ども観』の変化があります。
現在のスウェーデンでは、子どもは『何もできない存在』ではなく、『生まれたときから十分に学ぶ能力を持っている個人』と捉えています。
大人が一方的に知識を教え込むことはむしろ、子どもの成長や発達を阻害している、という考えに大きく方向転換してきた経緯があるのです」(高見さん)
自然は子どもの「好奇心」を育てる最高の教材
では、スウェーデンでは実際に、どんな「外遊び」が実践されているのでしょうか。
「例えば、森のなかでお気に入りの木を見つけるゲームがあります。
保育士が『木をかえよう』と言う度に、子どもたちは新しい木を探し、幹に抱きつきます。
ゲームをしながら走り回ることで、子どもたちは思わぬ場所に木の根が張り出していることや、地面に緩やかな起伏があることに気がつきます。
さらに木の幹を触ってみると、想像より冷たかったり、ゴツゴツ、でこぼこしていたり。五感を使った自然との触れ合いが、新しい発見につながるんですね。
こうした発見を、子どもたちはよく覚えています。次に同じ森に行ったときに、今度はゴツゴツした木の肌をルーペで観察したり、木に住んでいる虫を調べたり、どんどん好奇心を広げていくんです」(高見さん)