スウェーデン式「外遊び教育」で「木に抱きつく」深い意味

北欧の幼児自然教育から学ぼう#1「スウェーデン式外遊びが大切にしていること」

高見 幸子

算数も自然の中で遊びながら行う

スウェーデンでは、算数の考え方の理解も、こうした「外遊び」を通して行っているといいます。

「森に出かけて、『あなたの足より長い枝を拾ってくる』、『あなたの身長と同じ高さの木を探そう』といった遊びを行うことがあります。子どもたちは、探検家気分でワクワクしながら枝や木を見つけに行きます。

子どもたちはこうした遊びから、『長い』『短い』『大きい』『小さい』『高い』『低い』などの概念を理解していくのです。

これは、算数を学んでいるのと同じことですが、『勉強している』と感じる子どもはいないでしょう。

自然の中で実際に見て、触れて、匂いを感じた『経験』と結びつけることで、子どもたちは初めて『知識』として定着させることができるのです。

スウェーデンの幼児教育の方針である『ナショナルカリキュラム』には、算数や自然科学の概念を理解するために、自然のなかでの“遊び”を活用することが推奨されています。

国をあげて“遊びながら学ぶ”を実践しているのがよくわかりますよね」(高見さん)

木登りも自然と触れ合う重要な遊び。
写真提供:高見幸子

「楽しい」経験こそが人生の基礎となる

「幼児期の教育は、とにかく子どもたちが『楽しい』『好き』と感じる経験をたくさん積み上げることです。その経験が原点となり、もっとやってみたい、もっと知りたいという意欲につながっていきます。

そして、こうした『意欲』こそが、人生を自分の力で切り開き、ポジティブに生きるための『基礎」となるのです」(高見さん)

第2回は、スウェーデンで広く展開されている「森のムッレ教室」に注目し、自然教育の具体的な実践について伺います。

取材・文/川崎ちづる

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たかみ さちこ

高見 幸子

「日本野外生活推進協会」(森のムッレ協会)事務局長

1974年よりスウェーデン在住。野外生活推進協会の活動である「森のムッレ教室」(5〜6歳児対象の自然教育)にてリーダーとして活動後、日本にも紹介し、普及活動を展開している。 環境視察のコーデイネートや執筆活動等を通じて、スウェーデンの環境保護、幼児教育などを日本に紹介。現在、スウェーデン「ヨスタ・フロム森のムッレ財団」副理事長、「日本野外生活推進協会」(森のムッレ協会)事務局長。 【主な訳著書】 『スウェーデンにおける野外保育のすべて』(訳書/新評論)、『幼児のための環境教育』(共著/新評論)、『エコゴコロ』(共著/共同通信社)、「日本再生のルール・ブック」(海象社)など

1974年よりスウェーデン在住。野外生活推進協会の活動である「森のムッレ教室」(5〜6歳児対象の自然教育)にてリーダーとして活動後、日本にも紹介し、普及活動を展開している。 環境視察のコーデイネートや執筆活動等を通じて、スウェーデンの環境保護、幼児教育などを日本に紹介。現在、スウェーデン「ヨスタ・フロム森のムッレ財団」副理事長、「日本野外生活推進協会」(森のムッレ協会)事務局長。 【主な訳著書】 『スウェーデンにおける野外保育のすべて』(訳書/新評論)、『幼児のための環境教育』(共著/新評論)、『エコゴコロ』(共著/共同通信社)、「日本再生のルール・ブック」(海象社)など