美術にもある「小1の壁」 “自分で描きたくない“子どもの原因と対策 人気講師が解説
「こどもアトリエ みかづき」の親子で楽しむアート 第2回「デカルコマニーの楽しみかた」
2023.12.14
春、Bちゃんは小学1年生になりました。明るいBちゃんの様子が変わり始めたのは6月ごろでしょうか。制作中に手を止めることが多くなりました。キョロキョロしてお友だちの作品を見て……ちょこっとマネをしてみたり。
「先生、ここはどんな青色がいいと思う?」と聞いてきたり!
「わからなくなっちゃったから先生やって」と私に描かせたり!!
「キタ!」と私は心の中で叫んでしまいます。“1年生問題”あるいは“1年生の壁”と、私が勝手に命名している現象です。ついこの間まで「じぶんでやるー!」と大騒ぎしていたのに。
なぜこんなにも短期間で変わってしまうのでしょうーーー。
小学校の団体行動などで協調性を身につけていく中で、もしくは授業を受け具体的に評価されることを経験していく中で、Bちゃんは、自分と周りのお友だちとを比較するようになったのかもしれません。
そして、みんなと違うことをしていないか? 間違っていないか? を気にするようになったのだろうと考えます。
個性を求めるのが酷な時期でもあり、このとき、自由に描かせる絵画や自由な想像工作をしてもらっても、あまりいい作品は生まれない印象です。
それよりも、外に出てスケッチや、偶然できる線や色の美しさを感じてもらう技法あそび、目の前においてあるものを描く静物画、前回ご紹介した「シャボン玉はなに色?」のような遊び+観察の課題などで、純粋にきれいだなと思える感性や、創り出すよろこびを与えたい時期。
今回ご紹介する「デカルコマニー(合わせ絵)」もそんなおすすめの1つです。
アートワーク②「デカルコマニーの楽しみ方」
デカルコマニーとはフランス語で「合わせ絵」のこと。絵の具の感触を味わい、偶然できた形や、混ざり合う色の美しさを楽しみます。「〇〇みたいだね」「〇〇にも見えるよ」と子ども同士で想像力対決のような展開になるのもおもしろいところです。
今回は、4種類の楽しみ方をご紹介します。カードゲームにクリスマス飾りに、年賀状に、お楽しみいただけます!
【用意するもの】
●絵の具(不透明水彩〈ポスターカラー〉がおすすめ…好みの色3色以上。水は少なめにこってりと溶く
●容器(プリンカップなど色数分)
●スプーン(小さなプラ製など色数分。絵筆もおすすめ)
●画用紙(白または黒)
●新聞紙(あらかじめ広げておく)
1. 絵の具をたらす
新聞紙の上でおこなう。画用紙を半分に折る。開いた片側の面に、スプーンで絵の具をたらしていく。絵筆の場合は、持ち手の手首をトントンたたいて絵の具を散らし落とす。繊細な仕上がりに。
2. 折りたたんで、こすって、ひらく!
再び折りたたみ、手のひらで全体を軽くこすってから開く。開いた状態で乾かす。組み合わせる色や絵の具の量を変えて、くり返し楽しもう。
「デカルコマニー」の楽しみかた3選
A:題名をつけて、作品に!
合わせた絵が何に見えるか、題名をつけてみよう♪ 必ず何かに見える。みんなでアイデアを出し合うのも◎
B:絵合わせゲーム大会
折り筋をハサミで切り、2枚1組のカードを作る。全てのカードを裏返して床に広げ、神経衰弱の要領で絵合わせゲームを楽しもう。
C:クリスマスアート
クリスマスツリーを連想する、緑・黄緑・赤・白・金の絵の具と、大きめの黒い画用紙(四つ切り以上)を使って。写真のようなアレンジも◎
D:手づくり年賀状
赤・金・銀+好みの色の絵の具と、特厚口の白画用紙を使う。スプーンでなく絵筆を使用し、振って細かく散らすとよい。乾いてからハガキ大に切り分けて。
【ポイント】
・幼年は、1でたらす絵の具の量が多くなりがちです。開いた時に紙の色が見えないほどだとAが楽しめません。「次はもう少し少なめにしてみようか」と、実験を楽しむような声かけで調整してください。
・2で、紙を開くときが最大の山場です! 「どうなったかな~♪♪」など、わくわくできる声かけを。
♦あじとみあつこ
1978年生まれ。千葉県松戸市在住。大阪芸術大学デザイン学科中退後、美大受験予備校講師などを経て、雑誌編集、イラスト・デザイン制作に携わる。2017年より造形絵画教室『こどもアトリエ みかづき』を運営。https://www.ajitomiatsuko.net