
【国際バカロレア】 人気の「認定幼稚園」を徹底取材 幼児期に「概念的な理解」ができると「考え方の応用」が身につく理由
「国際バカロレア連載」 #2 PYP認定園『町田こばと幼稚園』
2025.04.29
物を大切にすることは地球を大切にすることとつながっている
中嶋先生:また、野菜を育てる活動は多くの園でやっていると思いますが、こばと幼稚園の年中クラスでは、「この地球を共有するということ」というテーマに関連させています。
植物がどんなふうに成長するかを観察し、植物にも命があって、生きていることを感じます。そして植物の成長には、水と土と太陽の光が必要で、人と植物はこの地球で一緒に生きていることを理解するところまで目指しています。

中嶋先生:年少さんは同じテーマを「ものを大事にする」という切り口で探究しています。家で「長く使っているもの」を探し、自分以外の人やものを大切にするとはどういうことかを考える取り組みです。
1つのテーマについて、いろいろな体験や遊びを通じて理解していくことで、より普遍的で汎用性の高い学びにつなげていきます。
遊びの中でスキルと人間性を育む
中嶋先生:さらに、これらの探究活動の中に、10の学習者像(1回目で紹介)の実現と、思考スキルやコミュニケーションスキルなど5つのスキルの成長と、「原因」「変化」「特徴」といった概念の発見と理解も組み込んでいきます。
──なんだかちょっと難しそうですね。
中嶋先生:5つのスキルは、遊んだり探究活動を楽しむ中で自然に養われていくようにカリキュラムを組んでいます。10の学習者像についても、「今、考える人だったね」とか、「挑戦する人だったね」など、その様子が見られたときにすかさずほめることで、子どもたちはそれが目指す姿だったのだと理解しています。

──概念というのは幼児でも理解できるのですか?
中嶋先生:言葉の意味を説明しようとすると難しいですよね。でも、たとえば光で遊んでいるときに、子どもたちが発見したことや不思議に感じていること、心を動かされていることに対して、「ここが影になる“原因”はこれだったんだね」とか「ガラスには光を通す“機能”があるんだね」などと言葉を添えるだけで、「原因」や「機能」というのが、どういうことかをきちんと理解できるんです。
そして、全然関係ない場面でも、自然とその言葉を使うようになります。
概念的な理解ができるようになると、他のことを学んでいるときにも「原因は何だろう」とか「どういう機能があるんだろう」など、考え方や見方を応用できるようになっていきます。
問いかけ続けることで考える習慣がつく
──子どもの力はすごいですね。IBを導入したことで、子どもたちにはどんな変化がありましたか?
神藏先生:自分のことを客観的に表現できるようになったと思います。「今、僕は挑戦する人だから邪魔しないでね」なんて言ったりします。同時にお友達のよいところも「思いやりがあるね」とか「探究できてるね」など、言葉にして認められるようになってきました。
また、自分で考える機会もすごく増えたと思います。職員は、子どもの質問に対して正解を提示しないようにしています。合っているか、間違っているかも明言しない。答えを言ってしまうと、子どもはそれ以上考えないし、知ろうともしなくなります。
「なんでだと思う?」「どうやったらわかると思う?」「ここにこんな絵本があるけど読んでみる?」「○○ちゃんが上手にできていたから聞いてみよう」など、自分で考えたり学ぶ力を育てるために、職員はできるだけたくさん問いかけるようにしています。
──常に問いかけられていたら、自分で考える習慣がつきそうですね。
神藏先生:毎年、英会話活動のエキシビジョンは、ダンスと歌で幕を開けるのですが、曲を決めるところから、ダンスの振り付け、フォーメーションまですべて子どもたちで考えるんですよ。練習して、振り返りをして、どうしたらもっとかっこよく見えるかを話し合います。
年長クラスになると、最終的に20人で動きを揃えるところまで、ほとんど自分たちだけでできるようになります。先生は記録を取りながら、ときどきアドバイスをする程度です。
子どもたちのアイデアが本当に素晴らしくて、発表会当日は私たちも保護者の方たちと一緒に感動してしまいます。