子どもの「やりたい」気持ちを伸ばす「物をつくる」漫画5選 ファッション・酪農・刀鍛冶・少女漫画…〔マンガミュージアム学芸員が厳選〕

京都国際マンガミュージアム学芸員・倉持佳代子さんに聞く「お仕事漫画」 #4 物をつくる仕事が学べる漫画5選 「ランウェイで笑って」「百姓貴族」「箱庭モンスター」「神田ごくら町職人ばなし」「舞子さんちのまかないさん」

京都国際マンガミュージアム学芸員:倉持 佳代子

2.百姓貴族

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『百姓貴族』©荒川 弘(新書館)

あらすじ
北海道の農家に生まれ、漫画家になるまでの7年間、実家の酪農・畑作業に従事していた荒川弘のエッセイマンガ。舞台は牛乳とじゃがいもを主に生産する「荒川農園」。農家の日常、農作業にまつわる仰天エピソードをユーモアたっぷりに紹介。ときには専門知識なども交え、日本の農業の問題を鋭く指摘。朝から晩まで年中無休で働く、知られざる農家の実態とは!?

倉持さん:『百姓貴族』は、北海道の農業高校を舞台にした大ヒットマンガ『銀の匙  Silver Spoon』の作者が手がけた作品です。

農家=無休、儲からないといった切実なイメージがありますが、タイトルに冠しているように、B級マスクメロンや規格外の農作物をタダで大量にもらえる“貴族”のような一面も。

さらに、賢くて愛らしい牛との生活など、一般には経験できない豊かでユニークな生活を知ることができます。経験者ならではの視点には説得力があり、農業についての知識も深まります。

『百姓貴族』1巻26ページ。
『百姓貴族』1巻27ページ。「どんな苦労も切ない場面も、さらりと描く荒川さんに、農家出身のたくましさを感じます」(倉持さん)。

倉持さん:一方、クマの遭遇に怯えたり、野菜泥棒の被害にあったり、苦労してとれた牛乳を生産調整のために処分しなければなかったりすることへの怒りやせつなさなども描かれ、日本の農業が抱えるシビアな問題も浮き彫りになります。

農家さんってすごいなと思ったり、「私たちは日々、生き物の命をいただいているんだ」と敬虔(けいけん)な気持ちになったり、食べることに対して、さまざまな想像が広がります。親子で読んで、感想を言い合うのもおすすめです。

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