子どもの「やりたい」気持ちを伸ばす「物をつくる」漫画5選 ファッション・酪農・刀鍛冶・少女漫画…〔マンガミュージアム学芸員が厳選〕

京都国際マンガミュージアム学芸員・倉持佳代子さんに聞く「お仕事漫画」 #4 物をつくる仕事が学べる漫画5選 「ランウェイで笑って」「百姓貴族」「箱庭モンスター」「神田ごくら町職人ばなし」「舞子さんちのまかないさん」

京都国際マンガミュージアム学芸員:倉持 佳代子

5.舞妓さんちのまかないさん

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『舞妓さんちのまかないさん』©小山愛子(小学館)

あらすじ
京都の舞妓たちの日常を描く物語。青森で生まれ育ったキヨは、幼なじみのすみれと一緒に上京し、屋形「市」で舞妓たちと寝食をともにしながら稽古に励んでいた。すみれは舞妓として華々しく成長していくが、キヨは女将から舞妓に向いていないと判断されてしまう。青森に帰る決心をするキヨだったが、料理の才能を見いだされ、屋形のまかない係として働き始める。

倉持さん:京都の花街を彩る、舞妓さんの暮らしを覗き見るような楽しさがあります。

主人公は舞妓の道を諦め、彼女たちの毎日の食事を作る“まかないさん”になるのですが、お化粧をしたり、衣装を着たりした後でも食べやすいように、おかずを一口サイズに切ったり、一人ひとりの好みに合わせたりと細やかな工夫を凝らします。

『舞妓さんちのまかないさん』1巻93ページ。
『舞妓さんちのまかないさん』1巻94ページより。「自分の夢が果たせなくても人を応援し、前に進もうとするキヨの健気な姿に胸を打たれます」(倉持さん)。

倉持さん:夢破れても、サポートする側になっても腐らず、前向きに進んでいく姿が素晴らしい。誰でも自分のやりたい仕事に必ずしも就けるわけではありませんし、努力が報われないこともある。ですが、その場所で自分のやれることを精一杯取り組むことで輝ける道があることを、この作品は教えてくれます。

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「ものを生み出す」クリエイティブな仕事は多くの人が憧れる一方、持って生まれた才能やセンスに大きく左右され、ゆるぎない覚悟を伴い、努力し続けなければ成功しない厳しい世界でもあります。

「一般にはなかなか知ることのできない世界でも、漫画という形でストーリーにのせ、登場人物を自分に重ね合わせて読むことで、より理解が深まります」と倉持さん。

選んでいただいた作品からは、これから大人になる子どもたちに、漫画を通して可能性を広げ、自分らしい道を歩んでほしいという倉持さんからのエールのようにも思えました。

取材・文/鈴木美和

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くらもち かよこ

倉持 佳代子

Kayoko Kuramochi
京都国際マンガミュージアム学芸員

1983年、埼玉県生まれ。2008年度より京都国際マンガミュージアムの研究員として入職。現在は学芸員として同館に在職。 主に少女マンガやエッセイマンガに関心を寄せ、研究を続ける。同館で展示イベントを企画する傍ら、新聞・雑誌にコラムやエッセイなどの執筆業も。 書籍『マンガって何?マンガでわかる マンガの疑問』(青幻舎)では、マンガ原作・執筆・編集を担当。

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1983年、埼玉県生まれ。2008年度より京都国際マンガミュージアムの研究員として入職。現在は学芸員として同館に在職。 主に少女マンガやエッセイマンガに関心を寄せ、研究を続ける。同館で展示イベントを企画する傍ら、新聞・雑誌にコラムやエッセイなどの執筆業も。 書籍『マンガって何?マンガでわかる マンガの疑問』(青幻舎)では、マンガ原作・執筆・編集を担当。

すずき みわ

鈴木 美和

Suzuki Miwa
ライター

フリーライター。千葉県出身。『dancyu』、『読売新聞』、『UOMO』などの雑誌や新聞、オンラインを中心に食の記事を寄稿。 出産を機に千葉県・房総に移住。2人の男児の子育てに奮闘する中で、育児の悩みや教育の大切さを実感したことから、現在は教育業界を中心に、取材や執筆活動を行っている。 地元の新鮮な食材を使って料理をするのが日々の楽しみ。

フリーライター。千葉県出身。『dancyu』、『読売新聞』、『UOMO』などの雑誌や新聞、オンラインを中心に食の記事を寄稿。 出産を機に千葉県・房総に移住。2人の男児の子育てに奮闘する中で、育児の悩みや教育の大切さを実感したことから、現在は教育業界を中心に、取材や執筆活動を行っている。 地元の新鮮な食材を使って料理をするのが日々の楽しみ。