
いつのまにかハマってる!〔 冒険ミステリー小説〕「カトリ」シリーズ 3作品の最後まで目が離せない面白さのヒミツを〔徹底解剖〕
現役大学院生が語るシリーズ3作品それぞれの魅力
2025.06.14
ライター:あわい ゆき

突然ですが質問です。
この記事をひらいているあなたは、いまなにを使って記事を読んでいますか? スマホでしょうか、それともパソコンでしょうか。なにを使っていたとしても、きっと、インターネットを通じてこの記事にたどりついたはずです。
インターネットって不思議ですよね。この世のすべての本がそろった図書館みたいに、いろんな情報があふれているんですから。気になることも調べたらすぐ表示されるので、どんなふしぎなこともインターネットを使って調べれば、まるで世界のすべてが理解できるような気さえします。
でも……インターネットが身近になってから、実はまだ30年しか経っていないんです。それよりも前になると情報を記録・保存する手段はいまより少なく、時間とともに忘れ去られていくものも多くありました。むしろ、忘れ去られた記録のほうがよっぽど多いはず。だから、インターネットに書かれていることが世界のすべてではありません。……と思うと、逆にこうも言えないでしょうか?
記録が残っていないだけで、世界を揺るがすワクワクするような大きな出来事が、実は過去に起きていたのかもしれないと。そして、いまの私たちが忘れてしまっているだけで、実はあったかもしれない「ふしぎ」な世界……それを描いている作品こそ、東曜太郎さんの「カトリ」シリーズなのです。
この記事では「カトリ」シリーズの魅力を現役大学院生ライターあわい ゆきが徹底紹介していきます!
目次
「ふしぎ」に立ち向かう二人、地図を手に物語に入り込める『カトリと眠れる石の街』
第1巻『カトリと眠れる石の街』は1885年、スコットランド(イギリス)にあるエディンバラが舞台。この時代のエディンバラは立体的な迷路のように入り組んでいる旧市街と、お金持ちが暮らす新市街にわかれている街でした。

そして旧市街で暮らす13歳の主人公カトリオナ・マクラウド(カトリ)と、新市街で暮らす14歳のオールデン・エリザベス(リズ)が出会い、エディンバラでじわじわと広がっている「眠り病」の原因を調べていきます。150年近く前の海外が舞台だと、うまく物語に馴染めないかも……と思ったかた。もしいたとしても、まったく心配いりません!
まず、「カトリ」シリーズでは本をひらくとまっさきに、エディンバラの詳しい地図がのっています。地名が出てきたときにすぐ確認できるので、迷うことはありません。

また、度胸があってリーダーシップも備えているカトリと、大胆で怖いもの知らずのリズは、性格こそ違うものの相性ぴったりです。二人はエディンバラ中を駆け回ることで、「眠り病」の原因を探るための情報収集をしていきます。ときには他人の家に忍び込んだり、集めた情報をもとに推理をしたり……。
ドキドキもワクワクも存分に詰めこんだエディンバラを味わえるため、まるで地図を持って昔のエディンバラを探検しているような気分で読み進められるのです。
そして二人は、数百年前にも「眠り病」が流行っていたものの、現実味がなさすぎて歴史ではなく伝説として扱われ、いまではすっかり忘れられていたことを突き止めます。非現実に思えることが実際に起きていた……。それはたとえ知ったとしても、かんたんに受けいれられるものではないでしょう。しかし、実際に起きていたと認めることは、現実からはなれた「ふしぎ」の存在を肯定し、ふしぎな世界に足を踏み入れる第一歩でもあるのです。
エディンバラの過去を知った二人は、はたしてどんな「ふしぎ」を目の当たりにするのでしょうか──その真相はぜひ読んで、確かめてください。