「サンタ いるか・いないか問題」を解決? 絵本専門士が4冊を厳選

クリスマスに読みたい絵本#1サンタ編 絵本専門士・井上まどか

絵本専門士:井上 まどか

幼い子どもにつきものの、「サンタがいるか、いないか」問題。そんなときこそ役立つ絵本を活用! 絵本専門士が選書しました。
写真:アフロ
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もうすぐ待ちに待ったクリスマス。ツリーやリースを飾ったり、ケーキを予約したり、高まるクリスマスムードにワクワクしているお子さんも多いのでは? そんな最中、パパママが子どもから言われてドキッとする言葉といえば、「ねえねえ、サンタさんって本当にいるの?」

そこで、絵本専門士の井上まどかさんが、子どもに「サンタはいるの?」と聞かれたとき、助けになる絵本をご紹介。サンタさんを信じているお子さんはもちろん、ちょっぴり疑い始めたお子さんとも楽しく読める絵本が揃っています。親子で一緒に読んで、クリスマス気分を盛り上げましょう!

クリスマス以外のサンタの暮らしがわかる

私が保育士だった頃、クリスマスが近づくと、よく子どもたちが「サンタさんって本当にいるの?」「いないんじゃない?」「絶対いるよ~」などと話していた記憶があります。年齢でいうと、だいたい4・5歳ぐらい。この年になると、クリスマスプレゼントはサンタさんが届けるというご家庭、パパママが用意するというご家庭、ふたつに分かれるかもしれないですね。

今回は、「サンタさんはいる」と信じているお子さん、信じたいお子さんの気持ちに寄り添い、親子で楽しめるサンタの絵本をセレクトしてみました。

はじめにご紹介するのは、『あのね、サンタの国ではね…』(絵:黒井健、文:嘉納純子、原案:松本智年、一色恭子)。クリスマス以外の時期、サンタさんは一体何をしているのでしょうか? たくさんのサンタが暮らす<サンタの国>の一年を描いています。

あたたかなタッチでサンタの国の12ヵ月を描いたロングセラー絵本『あのね、サンタの国ではね…』(絵:黒井健、文:嘉納純子、原案:松本智年、一色恭子/偕成社)。

サンタクロースをテーマにした絵本は、フィンランドやグリーンランドなど、サンタの住む地域を舞台にしていることが多いのですが、この絵本の作者は日本人の方。日本の生活や文化、四季を捉えながら、サンタの12ヵ月の暮らしぶりを描いているのがとてもユニークです。

例えば、4月はトナカイ学校の入学式。日本の幼稚園や保育園、小学校と一緒なんですね。6月は、しとしとと雨降りが続くようです。サンタの国も日本と同じ、梅雨があるのでしょうか? おもちゃの実がなる畑に水をあげたり、真っ赤な服にブラシをかけたり。クリスマスが近づくにつれて、だんだんと準備に忙しくなるようすが伝わってきます。

ちなみに絵は、『ごんぎつね』『手ぶくろを買いに』でおなじみの黒井健さん。やさしくて、あたたかいタッチがすてきです。クリスマスの絵本というと、クリスマスの時期にだけ読むものという印象がありますが、春でも夏でも秋でも、一年中楽しめる1冊ですよ。

サンタさんが<僕>の箱の中に……!?

続いてご紹介するのは、『クリスマスのふしぎなはこ』(絵:斉藤 俊行、文:長谷川摂子)。物語はクリスマスの朝、<僕>が床下から小さな箱を見つけるところから始まります。

クリスマスの朝、床下で小さな箱を見つけた<僕>。ふたを開けると、そこにはサンタさんの姿が見えて――。クリスマスのワクワク感が伝わってくる『クリスマスのふしぎなはこ』(絵:斉藤 俊行、文:長谷川摂子/福音館書店)。

「あれっ、なんだろう、この はこ。あけてみよう。」
「あっ、サンタさんが いる。」
「ぼくは サンタさんのはこを うちに もってかえって、ベッドのしたに かくしちゃった。」

不思議な箱を見つけたことを、自分だけの秘密にしておきたい<僕>。

「ねえ、おかあさん。サンタさん、もう しゅっぱつしたかなあ」
「そうねえ、サンタさん、おねぼうしてないと いいけどねえ」

お母さんとのやり取りの後、ひとりでこっそりと箱を覗いて確認する<僕>。
こういったリアクションが、とっても子どもらしくてかわいいですよね。

ページをめくる度に、サンタさんがだんだんと自分のところに近づいてくる。お子さんが主人公に感情移入しながら、ワクワクドキドキできる1冊です。

昔ながらの一軒家、縁側、黒電話……。絵本の中の世界は、昭和の懐かしい雰囲気が漂います。<もしかしたら、おじいちゃん・おばちゃんの家にこんな箱があるかも!>と思うお子さんもいらっしゃるかもしれませんね。ファンタジーと現実の境目が曖昧な子どもの時期だからこそ、より楽しめるストーリーではないでしょうか。

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