絵本「読み聞かせ習慣」 子どもの豊かな成長を後押しする「ことばの力」とは 国立小の元司書教諭が解説

【「絵本」でことばを育み心を耕し国語力の素地を養う#1】親子で一緒に楽しむことから始まる読書習慣

絵本の読み聞かせで一番大切なことは、楽しみながら続けることです。聞き手である子どもはもちろん、読み手である親自身も楽しむことを忘れないでください。親自身が楽しくなければ、子どもが楽しめるはずありません。

実を言うと、私自身、自分の子どもに読み聞かせをしたことがきっかけで、絵本の楽しさや魅力に初めて気づきました。読み聞かせをしたことがないという方も、まずは、楽しみながら、始めてみてください​」と齊藤先生。

そして、親子で楽しく読み聞かせを続けるには、コツがあると齊藤先生は言います。

「読み聞かせを通して、語彙を増やし、文章を理解するようになる力を育むことも大切ですが、まずは、絵の美しさや登場人物の表情、特徴的な配色や描画の線など、絵本を存分に楽しんでほしいと思います。

実際に読み聞かせる際も、リズムやテンポ、間、声色をほんの少し工夫するだけで、子どもは驚くほど楽しんでくれます。こうしたことが、絵本の魅力をグンとアップさせ、目からも耳からも読み聞かせを楽しいものに​してくれます。

反対に、くれぐれも『はやく自分で読めるようになりなさい』『もう○年生なのだから、一人で読みなさい』なんて言うことのないようにしてほしいと思います。子どもは敏感ですから、『めんどくさいと思っているのかな?』『楽しくないのかな?』と勘ぐってしまいます」(齊藤先生)。

絵の美しさや登場人物の表情、特徴的な配色や描画の線など、親子で絵本を存分に楽しもう! 写真:アフロ
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読み聞かせ後は、「どの場面が楽しかった?」と問いかけてみよう

「読み聞かせした後は、どんなことを感じたのか、子どもからのことばを待ち、じっくり聞いてあげてください。また時には、絵本の中に出てくる絵やイラスト、写真について、子どもに語りかけたり対話したりすることもできます。

作者によって、描かれた絵の雰囲気や世界観は実に個性的で多様です。子どもの想像力を刺激してくれます。

ストーリーはいったん脇に置いておいて、『どの場面の絵が一番好き?』『楽しかったのはどの場面?』と子どもに問いかけてみるだけで、会話は広がります。大人には思いつかないような発想や理由を聞くことができるかもしれません。

子どもから『お父さんはどの場面が好き?』『お母さんは何でその場面が好きなの?』と問い返されたら、さらに絵本を楽しむことができるでしょう。ストーリーを読み、そして理解することだけが絵本の楽しさではありません」(齊藤先生)。

これらを踏まえ、読み聞かせが続くようになってきたら、「『このとき、くまさんはどんな気持ちだったんだろうね?』『○○ちゃんだったら、このときどうする?』と問いかけたり、一緒に考えてみたりすることもいいですね。

このような助走期間をたくさんとってあげることで、子どもは『絵本って楽しいな、自分で読んでみようかな』と感じることができるようになるのだと思います」(齊藤先生)。

絵本の読み聞かせで押さえたいポイント

・小学校低学年や中学年、高学年からでも読み聞かせは遅くない
・親も子も、楽しみながら続けることが大切
・作者の個性的な絵や色、形が持つ独自の世界を親子で一緒に共有する
・絵本の中に出てくる絵やイラスト、写真について、感じたことを問いかけたり、互いに伝え合ったりする
・絵本の中で何が起こっているのか、どんな感情が描かれているのか親子で一緒に考える

上記のポイントを押さえながら、ぜひ親子で絵本の読み聞かせを続けてみてください。日を増すごとに、子どもの成長が見て取れるでしょう。

「絵本の読み聞かせ習慣」がもたらす効果や、効果的な読み聞かせの実践方法については、第2回で紹介します。

取材・文・構成/えのとまり

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さいとう かずたか

齊藤 和貴

Kazutaka Saito
教育学者

京都女子大学発達教育学部教育学科准教授。東京都公立小学校および東京学芸大附属小金井小学校にて28年間、教育活動や授業実践に取り組んできた経験を持つ。司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも精力的に従事。著書に『豊かな心と思考力を育む 絵本で広がる小学校の授業づくり』(小学館)などがある。

京都女子大学発達教育学部教育学科准教授。東京都公立小学校および東京学芸大附属小金井小学校にて28年間、教育活動や授業実践に取り組んできた経験を持つ。司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも精力的に従事。著書に『豊かな心と思考力を育む 絵本で広がる小学校の授業づくり』(小学館)などがある。