トットちゃん・黒柳徹子さんが経験した戦争… 被団協がノーベル平和賞受賞の今こそ 子どもも大人も読みたい「戦争と平和」本【4選】
黒柳徹子さん、やなせたかしさん、水木しげるさんの戦争体験
2024.12.09
「トットちゃん」黒柳徹子・戦時下の少女時代
日本の戦後最大のベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子/著 講談社刊)。
読んだことがなくても、「トモエ学園」「電車の教室」や、「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」といったセリフは聞いたことがある、という人が多いのでは。
でも、この作品が<戦争をえがいた本>だという事は、意外にもあまり知られていません。
『窓ぎわのトットちゃん』は、黒柳徹子さんが自身の幼少期とトモエ学園で学んだ日々を描いた自伝的物語。ユニークな授業、友だちとの交流など、楽しく感動的なエピソードがつづられています。
戦争の足音が聞こえてくるのは、物語の後半です。
学校からの帰り、トットちゃんはキャラメルの自動販売機にお金を入れますが、キャラメルは出てきません。物資が少なくなっていたからです。また、ある日家に帰ると、飼い犬のロッキーがいなくなっていました。
ロッキーはシェパード。そのとき、トットちゃんはロッキーがいなくなった理由がわかりませんでした。そして物語の結末は──。
戦中の子どもだったトットちゃん。その生活も、静かに描かれています。
アンパンマンの作者が見た戦争
日本中の子どもたちに愛と勇気を届けるヒーロー『アンパンマン』の作者・やなせたかしさん。
やなせさんが自らの戦争体験を綴った本が、『新装版 ぼくは戦争は大きらい ~やなせたかしの平和への思い~』(やなせたかし/著 小学館刊)です。
1915年の春に召集を受け、小倉の野戦銃砲部隊に入隊したやなせさんは、中国戦線に派遣され、上海郊外で終戦をむかえます。戦争中には、特攻に志願した弟との別れなど、辛く悲しい思い出もありました。
「大きらい」と語る戦争のことをあまり話したがらなかったやなせさんですが、90歳を超え、未来を生きる世代へ戦争の体験を語り継ごうと考えたそうです。
やなせさんが亡くなる直前まで語った最後のメッセージが、この一冊に込められています。
水木しげるの壮絶な戦争体験
『ゲゲゲの鬼太郎』の水木しげるさんが、太平洋戦争に従軍した実体験を元に描いた戦記漫画が『総員玉砕せよ!』(水木しげる/著 講談社刊)です。
現在は文庫形式の新装版で手に取ることができます。
太平洋戦争末期、南方戦線ニューブリテン島バイエンでアメリカによる猛攻を受けた日本軍。圧倒的劣勢の中、日本軍将校は、玉砕を決断し──。
著者自らの実体験を元に、戦争の恐ろしさ、無意味さ、悲惨さを描いた傑作として、漫画ファンのみならず、幅広い世代に読み継がれている作品です。
「ノーベル賞」はなぜできた? ノーベルの人生を知る
誰もが知っている「ノーベル賞」ですが、ここで改めてノーベルの人生を振り返ってみましょう。
最後の一冊は、子どもも手に取りやすい新書サイズの伝記文庫で刊行されている『ノーベル』(大野進/文、藤原カムイ/絵 講談社刊)を紹介します。
ノーベルは1833年にスウェーデンに生まれた科学者・起業家です。
機雷を実用化した父に似て発明好きだった少年は、アメリカで物理・化学を学びます。1853年に始まったクリミア戦争のさなかに、強大な爆発力をもつ液体「ニトログリセリン」と出会い、ダイナマイトを発明しました。
ダイナマイトは鉄道や運河の開発に使われ、産業の発展に大いに役立ちました。しかし、戦争が起こると、恐ろしい武器へと姿を変えることになったのです。
発明によって巨万の富を得たノーベルは、自分の財産を、人類のために力をつくす人々に分けようと考えました。そして世界平和への願いを未来にたくし、「ノーベル賞」ができたのです。
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この記事で紹介する作品は以上ですが、「戦争と平和」をテーマにした作品はまだまだたくさんあります。ノーベル賞をきっかけに、あなたもぜひ本を手に取って、「戦争と平和」について考えてみませんか。