コロナ禍で子どもの認知能力が低下? 脳科学的な家庭環境づくりとは?
脳科学者・細田千尋先生に聞く「子どもの脳」が伸びる家庭環境の整え方 #3 子どもの脳を伸ばすウィズコロナの親子の過ごし方
2022.10.22
医学博士・認知科学者・脳科学者:細田 千尋
少し上のお兄さんお姉さんとの関わりで子は育つ「縦割り教育」の持つ意味
現代の家庭では、1人っ子や2人きょうだいが多く、育児に関わるのは主に両親、せいぜい祖父母くらいです。昔はきょうだいが多かったり、ご近所同士で子どもが行ったり来たりして、就学前からたくさんの人の中で子どもは育ってきました。「子どもは、本来はそのように育てられるプログラムをされている」と言う研究者もいるほど。
子どもは、親や周りの大人を見て育つだけではなく、比較的自分と近い年長者が、どういうふうに、その空間を使って過ごしているかがお手本になります。子どもは、子どもの言うことのほうがよく理解できるものなのです。
近年、文科省も縦割り教育の重要性を謳っています。大人が相手だと自分とは違うところばかり目立ちますが、同じ「子ども」というカテゴリーの中で、他の子の行動を見ることは、子どもにとってすごくプラスになるんです。ですから、なるべく縦割りの機会を作りましょう、年長者や年少者とのかかわりの中で学んでいきましょう、というわけです。
自分より少し上のお兄さん、お姉さんの行動は、自分に近いから真似しやすいし、自分より少しできるから意識しやすい。そして、自分が容易に真似できる範囲の差異が、成長を促してくれるのです。それはナチュラルに多様性を学ぶ機会とも言えますよね。それも子どもを取り巻く環境のひとつと考えられ、その環境が限られたところで分断されている、というのは問題だと思います。
子どもにとっての最適な環境と多様性のバランス
周りの影響を受けることを考えて、経済水準の高い家庭の子が揃った地域で教育を受けさせるのがベターだとか、住んでいる地域の質やお友達の質にこだわる、といったいわゆる良い環境に子どもを置くことが大事だと考える親御さんもいるかもしれません。
それはそれでメリットがありますが、質にこだわるあまり、多様性をシャットアウトしてしまうことは、子どもの成長の機会を奪うことになるかもしれません。逆に、多種多様なものが集まる環境の中に。ポンッと子どもを放り込んだとして、そこにもメリットとデメリットが必ずあります。それぞれの環境で、デメリットになる部分をどうやって補うのか、親がその視点を持って環境を整えてあげることが大切です。
「子どもの教育にはこれが必要だ」とか「子どもはこう育たなきゃいけないんだ」という閉じられた価値観の中に置かれ、閉じられたものだけに接して育つことは、これからの子どもたちにとって最も恐ろしいことだと思います。
もし、限定的な価値観のとおりにいかなかったとき、子どもはたちまち追い詰められてしまいます。教育ひとつとってみても、価値観というのは全く限定的ではなく、開かれたものであるべきです。その子にとって、最適であることと多様性、それらのバランスをどうやって取るのかという点は、ウィズコロナ時代の子育てで一番の課題であり、先が見えない世の中では簡単には解決しない問題なのかもしれません。
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脳科学的に子どもたちの成長を促す家庭環境について、3回にわたって細田先生にお聞きしました。
家庭は子どもたちが安心して育つためのセイフティーネット。ママやパパが成長を見守りながら、肯定してあげることで、子どもたちは何にでもチャレンジできる基礎体力が備わるということがわかりました。
親世代の常識が通用しない、新しい時代を生き抜く現代の子どもたち。親である私たちがしてあげられることの参考にしてみてください。
取材・文/山田祥子
※脳科学者・細田千尋先生に聞く「家庭環境の整え方」は全3回。
1回目 部屋の広さより刺激‼ 脳科学者が明かす、「子どもの脳」を伸ばす住環境
2回目 親必見! 「子どもの脳」を伸ばすシンプルで効果的な声かけ方法
細田千尋(ほそだ・ちひろ)
東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院 情報科学研究科准教授。内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。
内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。
細田 千尋
東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院情報科学研究科准教授。 内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。 内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。 脳科学から子どもの非認知能力を育てる研究の親子モニター募集 https://gritbrain.wixsite.com/experiment2022-04 東北大学加齢医学研究所 https://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/ 細田千尋研究室㏋ https://neurocog.is.tohoku.ac.jp/
東北大学加齢医学研究所及び、東北大学大学院情報科学研究科准教授。 内閣府 moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。 内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業(JST創発的研究支援)によって、日本全国の大学や研究機関などから選ばれた252名の研究代表者のうちの1人。 脳科学から子どもの非認知能力を育てる研究の親子モニター募集 https://gritbrain.wixsite.com/experiment2022-04 東北大学加齢医学研究所 https://www.idac.tohoku.ac.jp/site_ja/ 細田千尋研究室㏋ https://neurocog.is.tohoku.ac.jp/