子育て中に経験する「イヤイヤ期」の悩み。心理学を知ると「悩まずに、やれることをやってみよう」へと変換することができます。教えてくれるのは、発達心理学の専門家で書籍『こども心理学』の監修もつとめる小塩真司先生(早稲田大学教授)。
心理学は、目には見えない“こころ”を、科学を使って明らかにする学問。心理学で“こころ”の働きのパターンを知ると、生きるのがちょっぴり楽になります。
目次
【お悩み】子どものイヤイヤ期に手を焼いています。どうしてなんでも「イヤ!」なの? 子どもの気持ちをうまく誘導する方法はありますか?
【ヒント①】1~3歳の幼児期は「できる、できない」を学習するステージ
小塩先生:アメリカの心理学者エリク・エリクソンは、人間の心は8段階あるライフサイクルの中で、新たなことを知ったり、課題を乗り越えたりすることで、成長すると考えました。
1歳半~3歳の子どもは、2段階目の「自分にできることとできないことを知る段階」です。認知機能が発達し「やりたいこと」がわかるようになるため、いろんなことを自分でしたがります。しかしまだ他人の考えや気持ちを察する力はないので、「イヤ!」という気持ちを強く出すのです。
ですから、それを理解したうえで、大人が子どもとの接し方を変えてみるとよいでしょう。
【ヒント②】イヤイヤ期の対応に効く「選択方式」
小塩先生:親の意見を押しつけると、子どもは強く反発します。そこで試すといいのが、選択肢を与えることです。
例えば、朝起きて洋服に着替えるときに、「これを着ようね」と親が決めた服をすすめるのではなく、「赤い服と青い服、どっちを着る?」と聞いてあげましょう。どちらを選んでも、子どもは「自分で決めることができた」という結果を得て、気持ちが落ち着くと思います。そして、子どもが何か言ってきたらちゃんと耳を傾けてあげてください。
例えば「赤い服でも青い服でもなくて、恐竜がついた服がいい!」と言われても、お洗濯中で用意できない場合もありますよね。そういう場合はどうするか、親子でルールを決めておきましょう。
【ヒント③】ルールを決めたら親が守る
小塩先生:ルール決めで大切なのは「一貫性」です。「何かをするときは、必ずこうする」というルールを決めて実行すれば、子どもはちゃんとルールを守ってくれます。でも実際は、親がルールを守れないことが多いのです。
先ほどの着替えの場合、「お洗濯中の服は着ることが“できない”」というルールを決めたとします。でも、ある日たまたま時間があって、乾燥機で乾かして着せた。すると子どもは、「お洗濯中の服も、親に言えば着ることが“できる”」と学習します。そうなったら、最初のルールは通じなくなりますよね。
だから、子どもにルールを守ってもらえるようにするには、まず親がルールを徹底して守り、ブレない行動をすることが大事です。
【結論】イヤイヤ期の子どもは「言うことを聞けない」段階だと理解し、子どもに選択肢を与えたりルールを決めたりして、親の対応を変えてみる!
イヤイヤ期は、子どもの成長と共に自然におさまっていきます。今は「イヤと言うことで、できる、できないを学んでいるんだな」と理解して、親もいっしょにルールを守っている姿を見せながら、家庭や社会のルールを教えてあげましょう。
【今回の心理学のヒント】#ライフサイクル #エリク・エリクソン
子育てがちょっとラクになる「こども心理学」連載
子どもの「やる気」 〔こども心理学・第2回〕
子どもの「いじめ」 〔こども心理学・第3回〕
子どもを比較しない思考術 〔こども心理学・第4回〕
子どもの習い事 続ける・続けない 〔こども心理学・第5回〕
子どもの「ひとり言と嘘」 〔こども心理学・第6回〕
こども心理学
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〈小学上級・中学から・すべての漢字にふりがなつき〉
中村 美奈子
漫画、アニメ、映画、ゲーム、アイドルなど幅広いエンターテインメントジャンルで記事を書いているライター。漫画家や声優、役者、監督、クリエイターなど、これまでに200名以上へのインタビューを経験。
漫画、アニメ、映画、ゲーム、アイドルなど幅広いエンターテインメントジャンルで記事を書いているライター。漫画家や声優、役者、監督、クリエイターなど、これまでに200名以上へのインタビューを経験。
小塩 真司
1972年生まれ。名古屋大学教育学部卒業、同大学院教育学研究博士課程前期課程・後期課程修了。博士(教育心理学)。中部大学人文学部講師、助教授、准教授を経て、2012年4月より早稲田大学文学学術院准教授、2014年4月より教授。専門は発達心理学、パーソナリティ心理学。
1972年生まれ。名古屋大学教育学部卒業、同大学院教育学研究博士課程前期課程・後期課程修了。博士(教育心理学)。中部大学人文学部講師、助教授、准教授を経て、2012年4月より早稲田大学文学学術院准教授、2014年4月より教授。専門は発達心理学、パーソナリティ心理学。