【イヤイヤ期】「認知機能」が育児の悩み解消のヒント 発達心理学の専門家が解説

子育てがちょっとラクになる「こども心理学」小塩真司先生インタビュー #1

ライター:中村 美奈子

▲イヤイヤ期の子ども、イライラせずに向き合うヒントは「認知機能」を知ること?(写真:アフロ)
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子育て中に経験する「イヤイヤ期」の悩み。心理学を知ると「悩まずに、やれることをやってみよう」へと変換することができます。教えてくれるのは、発達心理学の専門家で書籍『こども心理学』の監修もつとめる小塩真司先生(早稲田大学教授)。

心理学は、目には見えない“こころ”を、科学を使って明らかにする学問。心理学で“こころ”の働きのパターンを知ると、生きるのがちょっぴり楽になります。

小塩真司(おしお・あつし)早稲田大学文学学術院教授。専門は発達心理学、パーソナリティ心理学。

【お悩み】子どものイヤイヤ期に手を焼いています。どうしてなんでも「イヤ!」なの? 子どもの気持ちをうまく誘導する方法はありますか?

【ヒント①】1~3歳の幼児期は「できる、できない」を学習するステージ

人間が社会の中で発達していくうえでの課題を8段階で説明した、エリクソンの理論「ライフサイクル」。(画像:書籍『こども心理学』より)

小塩先生:アメリカの心理学者エリク・エリクソンは、人間の心は8段階あるライフサイクルの中で、新たなことを知ったり、課題を乗り越えたりすることで、成長すると考えました。

1歳半~3歳の子どもは、2段階目の「自分にできることとできないことを知る段階」です。認知機能が発達し「やりたいこと」がわかるようになるため、いろんなことを自分でしたがります。しかしまだ他人の考えや気持ちを察する力はないので、「イヤ!」という気持ちを強く出すのです。

ですから、それを理解したうえで、大人が子どもとの接し方を変えてみるとよいでしょう。

【ヒント②】イヤイヤ期の対応に効く「選択方式」

小塩先生:親の意見を押しつけると、子どもは強く反発します。そこで試すといいのが、選択肢を与えることです。

例えば、朝起きて洋服に着替えるときに、「これを着ようね」と親が決めた服をすすめるのではなく、「赤い服と青い服、どっちを着る?」と聞いてあげましょう。どちらを選んでも、子どもは「自分で決めることができた」という結果を得て、気持ちが落ち着くと思います。そして、子どもが何か言ってきたらちゃんと耳を傾けてあげてください。

例えば「赤い服でも青い服でもなくて、恐竜がついた服がいい!」と言われても、お洗濯中で用意できない場合もありますよね。そういう場合はどうするか、親子でルールを決めておきましょう。

【ヒント③】ルールを決めたら親が守る

小塩先生:ルール決めで大切なのは「一貫性」です。「何かをするときは、必ずこうする」というルールを決めて実行すれば、子どもはちゃんとルールを守ってくれます。でも実際は、親がルールを守れないことが多いのです。

先ほどの着替えの場合、「お洗濯中の服は着ることが“できない”」というルールを決めたとします。でも、ある日たまたま時間があって、乾燥機で乾かして着せた。すると子どもは、「お洗濯中の服も、親に言えば着ることが“できる”」と学習します。そうなったら、最初のルールは通じなくなりますよね。

だから、子どもにルールを守ってもらえるようにするには、まず親がルールを徹底して守り、ブレない行動をすることが大事です。

【結論】イヤイヤ期の子どもは「言うことを聞けない」段階だと理解し、子どもに選択肢を与えたりルールを決めたりして、親の対応を変えてみる!

イヤイヤ期は、子どもの成長と共に自然におさまっていきます。今は「イヤと言うことで、できる、できないを学んでいるんだな」と理解して、親もいっしょにルールを守っている姿を見せながら、家庭や社会のルールを教えてあげましょう。

【今回の心理学のヒント】#ライフサイクル #エリク・エリクソン

人は何歳であっても、それぞれの年齢に応じた変化や発達をしていく存在です。ライフサイクルを知っておくと、子どもの態度が変わったときに「一段階成長したな!」と感じられるようになるでしょう。(画像:書籍『こども心理学』より)

子育てがちょっとラクになる「こども心理学」連載

子どもの「やる気」 〔こども心理学・第2回〕

子どもの「いじめ」 〔こども心理学・第3回〕

子どもを比較しない思考術 〔こども心理学・第4回〕

子どもの習い事 続ける・続けない 〔こども心理学・第5回〕

子どもの「ひとり言と嘘」 〔こども心理学・第6回〕

こども心理学

イラスト学問図鑑 こども心理学(監修:小塩真司)

\一生モノの教養が身につく!/
人に自慢し、明日から使いたくなる学問図鑑。

これ1冊にこどもから大人まで、正解のない時代に役に立つ心理学の知識が盛りだくさん。心理学の有名な実験やテーマが短い文章とくすりと笑えるイラストで楽しく学べる。暗記ってどうすればできる? やる気の出し方って? 理想の自分になるには? 心が分かれば生き方もコミュニケーションもうまくなる!

〈小学上級・中学から・すべての漢字にふりがなつき〉

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おしお あつし

小塩 真司

Atsushi Oshio
心理学者

1972年生まれ。名古屋大学教育学部卒業、同大学院教育学研究博士課程前期課程・後期課程修了。博士(教育心理学)。中部大学人文学部講師、助教授、准教授を経て、2012年4月より早稲田大学文学学術院准教授、2014年4月より教授。専門は発達心理学、パーソナリティ心理学。

1972年生まれ。名古屋大学教育学部卒業、同大学院教育学研究博士課程前期課程・後期課程修了。博士(教育心理学)。中部大学人文学部講師、助教授、准教授を経て、2012年4月より早稲田大学文学学術院准教授、2014年4月より教授。専門は発達心理学、パーソナリティ心理学。

なかむら みなこ

中村 美奈子

Minako Nakamura
ライター

絵本サイトの運営に関わり、絵本作家への取材も多数。また漫画、アニメ、映画、ゲーム、アイドルなど幅広いエンターテインメントジャンルで記事を執筆。漫画家や声優、役者、監督、クリエイターなど、これまでに200名以上へのインタビューを経験している。

絵本サイトの運営に関わり、絵本作家への取材も多数。また漫画、アニメ、映画、ゲーム、アイドルなど幅広いエンターテインメントジャンルで記事を執筆。漫画家や声優、役者、監督、クリエイターなど、これまでに200名以上へのインタビューを経験している。