【公民館がスゴいことになっていた!】“公園+パラソル“だけの屋台型「パーラー公民館」 超レアな「地域の拠点」に全国から視察も多数

シリーズ「地域をつなぐ みんなで育つ」#3‐4 「若狭公民館」【2/2】(沖縄県那覇市)

ライター:太田 美由紀

パラソルの下でお茶を飲み「ゆんたく」からスタート

「曙(あけぼの)地域にも公民館がほしい!」

曙地域(沖縄県那覇市)に暮らす人たちから上がったこんな声に、なんとか応えられないかとスタートしたのが「パーラー公民館」です。まるで屋台のようなその場所は、曙地域の「あけぼの公園」にできました。

あけぼの公園は、すべり台やシーソー、うんていなどがあるごく普通の公園です。今日はみんなが楽しみにしている「パーラー公民館」の日。

地域の人たちの手で、手づくりのテーブルや椅子、大きな白いパラソルが運び込まれ、「パーラー公民館」ののぼりが設置されました。

「パーラー」の語源は、古フランス語の「話をするところ」。沖縄では簡易店舗や小さな食堂、カフェなどを「パーラー」と呼び、親しまれている名称です。

若狭公民館の指定管理者・NPO法人地域サポートわかさが中心となって2017年から2019年まで運営されていた私設の移動式屋台型公民館で、2020年以降は、あけぼの小学校区まちづくり協議会に引き継がれています。

沖縄の強い日差しを避けるように、木陰やパラソルの下にシートを敷いて裸足で遊べる空間も確保。テーブルの天板は黒板になっていて、チョークで自由に落書きもできます。

地域の人たちが集まって、冷たいお茶を飲みながらおしゃべりを楽しんだり、子どもたちが遊んだり。夏休みには、みんなで流しそうめんを楽しんだこともありました。

パーラー公民館には、近所の子どもたちが遊びに来ます。高齢者や子育て中のお母さんたちも集まって、お茶を飲みながらあてもなく「ゆんたく」(沖縄の方言で「おしゃべり」を指す)します。

イベントも盛りだくさん。屋外で映画を観る「うみそら上映会inあけぼの」や、「ちょこっとハロウィーン」なども開催されてきました。

パーラー公民館が始まった3年間、毎年12月には、「あけぼの公園かんしゃ祭」が行われていました。公園のゴミを拾って大人と子どもがその量を競う「おそうじバトル」では、子どもたちが3年連続優勝。初年度たくさん落ちていたゴミが、3年目にはかなり少なくなっていたこともうれしいニュースでした。

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(写真上)2019年の「あけぼの公園☆感謝祭」での集合写真。(写真下)2017年のワークショップで制作した「あけぼののうた」を三線の演奏で歌う子どもたちと地域の皆さん。  写真提供:若狭公民館

パーラー公民館をきっかけに、パーラー公民館に来ている子どもたちが集まって映画をつくる『ご近所映画クラブ』も開催されました。

映像作家ミシェル・ゴンドリー氏が設計し、NPO法人remo(大阪市)が開発したメディアリテラシーのプログラムを使って、誰でも3時間で映画を作れるという取り組みです。集まったみんなのアイデアを盛り込んで、一つの作品を作ります。

今回のテーマはホラーミュージカル。子どもからおばあ(おばあちゃん)まで幅広い世代が一緒に作ります。小学校が教室を提供し、教頭先生も参加しました。

映画制作は、子どもたちみんなで大切なルールを守りながら進めます。ルールは3つ。

「①みんなで決める。②必ず、時間を守る。③アドリブと再撮影の禁止」

映画の構想を練る話し合いでは時間の制約もあるのでスピード感を持って進める必要があります。

限られた時間の中でどう完成させるのか。アイデアややりたいこともどんどん出ますが、世代を超えて合意形成しながら一つの作品にまとめ上げて進めなければなりません。

子どもも大人も対等──、いや、大人はどちらかというとアシスタントかもしれません。恋愛サスペンスや大乱闘コメディなど、開催するメンバーによっておもしろい作品がたくさん生まれています。

撮影風景。この日は学校を舞台に撮影が始まりました。ご近所映画クラブではさまざまなメンバーによって10本の映画が完成・公開されています。

2年目の地域の人たちの声とは?

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