幼児の運動神経は「昔遊び」が育てる 効果を上げる親の関わり方を専門家が伝授

【子どもの運動神経を開発する方法 #2】幼児期ほど親の関わり方が重要。一緒に遊んで能力アップ!

昔は遊びの中で自然と運動神経を培っていました。  写真:アフロ
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運動神経とは、神経系の働きのことで、鍛えれば何歳からでも開発することができます。しかし、幼児のころに「運動はつまらない」「失敗したら怒られるから動きたくない」といった原体験や感情を持ってしまうと、その後の人生においても運動する機会が自ずと少なくなってしまいます。

幼児期は、運動に対する意識づくりという点でも重要な時期です。この時期に親が気をつけたいポイントや、運動神経を開発する方法について、東京保健医療専門職大学特任教授である東根明人先生に教えていただきました(全3回の2回目、#1を読む)。

◆東根 明人(あずまね あきと)
一般社団法人コーチングバリュー協会代表理事。東京保健医療専門職大学特任教授。
1981年早稲田大学教育学部卒業。1984年順天堂大学大学院修了。1995年JOC(日本オリンピック委員会)の在外研修により、ライプチヒ大学(ドイツ)に留学しコーディネーショントレーニングを学び、以後日本での普及に取り組む。JOCタレント発掘プロジェクト、日本体育協会ジュニアスポーツ指導員カリキュラム策定委員を務めた。

幼児期は「楽しむこと」が何より重要

「運動神経の良い子になってほしい」とは、多くの親が思うことではないでしょうか。しかし、熱心になればなるほど、親のほうが周りの子と比べて、自分の子どもを追い込んでしまうこともあります。特に幼児期は、1位を目指すよりも楽しむことが大切だと東根先生は語ります。

「幼児期は、何事に対しても先入観を持っていない時期です。そのため、この時期に運動に対するポジティブなイメージを持ってもらうことが大事。そもそも運動が好きでないと、運動する意欲も高まらないため、自ずと運動神経を開発するのが難しくなってしまいます。

また、神経系がおよそ95%にまで発達するのは、10歳前後のゴールデンエイジです。そこまでぐんぐんと神経系は発達していきますから、幼児期に運動する習慣を身につけておけば、年齢を重ねるにつれて運動神経もどんどん開発されていきます」(東根先生)

昔遊びが運動神経を開発する!?

「楽しみながら運動することがとにかく大事なので、スポーツでも良いのですが、体を動かす遊びをするのがおすすめです。特に日本の昔ながらの遊びは、実は多様な動きを含んでいます。従って、運動神経、つまりコーディネーション能力を構成する、次の5つの能力を高めるのに効果的です(#1を読む)。

①リズム能力…リズムやタイミングをとる。
②バランス能力…バランスを保つ。姿勢を立て直す。
③操作能力…手足や用具を精密に操作する。
④反応能力…合図に素早く反応する。素早く動く。
⑤認知能力…考えたり、判断する。

例えば、鬼ごっこ。自分が逃げる側の場合、鬼がいる場所を確認し、どこに逃げるべきかを瞬時に判断するときに『認知能力』を使います。鬼が近づいてきたら、タッチされないよう素早く逃げるときには『反応能力』や『バランス能力』も必要になります。このように、遊びながら無意識のうちにコーディネーション能力を培うことができるのです」(東根先生)

まずは全身運動から始めよう!

「まだ運動に慣れていない幼児期は、全身運動から始めて、次に微細運動へと進むと良いでしょう。全身運動とは、『走る』『ジャンプする』『止まる』などの全身を使った動きをさします。

一方で微細運動とは手や指などを使った細かな動きのことです。例えば、『指で物をつかむ』『ジャンケンをする』なども微細運動にあたります。精密さが求められるので、一般的には全身運動よりも難易度は高いです。

全身運動、微細運動それぞれでおすすめの遊び、また伸ばせる能力は次のとおりです。

〈全身運動〉
・鬼ごっこ…反応能力、バランス能力、認知能力
・けんけんぱ…リズム能力、バランス能力、操作能力
・すもう…バランス能力、反応能力、操作能力
・かくれんぼ…反応能力、認知能力、バランス能力

〈微細運動〉
・お手玉…操作能力、リズム能力、バランス能力
・けん玉…操作能力、リズム能力、認知能力
・たこ揚げ…操作能力、リズム能力、認知能力
・じゃんけん・・・リズム能力、操作能力、反応能力

これらの遊びを楽しみながら、継続的に行っていくと運動神経の素地ができていきますよ」(東根先生)

基本のあとはアレンジを取り入れて

決まりきった形式や動きを行っていくだけでは、コーディネーション能力は鍛えられません。前述した遊びを基本のルールに則り遊んだら、応用に進むと良いと東根先生は話します。

「コーディネーション運動には、プログラムとして基本の動きはありますが、ガッチリと決まっているものを行うものではありません。それよりも基本型を行ったら、発展させることが大事です。そうすることで、新たな運動神経の回路を刺激するほか、状況に合わせて頭を切り替え、行動に移す力を養うことにつながります。

ですので、遊んで少し経ったら、ルールを変えたり、制限をつけたりと、アレンジを取り入れてください。鬼ごっこであれば、鬼を2人にしてみたり、タッチする場所を背中だけにしてみたりと、アレンジは何でもOKです。

また、オリジナルの動きを取り入れるのも良いです。その際は、子どもに相談して新たな動きを考えてみてください。大人が考えた動きをやらせるより、一緒に考えたほうが思考の柔軟性を培うことにつながるからです。また、自分で考えて体を動かすことの楽しさも知っていきます」(東根先生)

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