モンテッソーリ教師と東大卒のママ医師に学ぶ「モンテッソーリ教育」の子育て法

「映画では、さまざまな差別についての表現が盛りこまれています。女性への差別、発達障がい児への差別、そして子ども全体に対する差別と映るものもあるでしょう。映画の舞台は1900年なので、もう125年も経っていますが、私たちの社会は女性、弱い立場の人、発達障がい児に対する差別がいまだに存在しています。

私はその差別を可視化することで、父系家族が支配する不平等な社会に問題提起をする。そういう意味がこの映画にあると思います」

一方で驚かされるのが、スクリーンの中で「お仕事」に取り組む子どもたちの自然さ。特に、マリアの教育を受けて目覚ましい成長を遂げるティナ役のラファエル・ソンヌヴィル゠キャビーは、印象に残る存在になっています。

「ラファエル・ソンヌヴィル゠キャビーは、他の子どもたちと一緒にキャスティングにやってきました。私たちは休暇中にワークショップを開催したのですが、他の子どもたちと一緒に参加してもらいました。

ワークショップの初日、私は彼女が役柄にぴったりだと感じました。彼女の思慮深い強さ、私たちと一緒にいるときの様子と、自分自身の中にいるときの様子の両方に圧倒されました。

私の特に好きなシーンのひとつが、ティナが黒板に書かれた文字を読んで、マリアにキスをしにいく場面です。あのシーンの撮影ですばらしかったのは、ラファエルがマリアを演じるジャスミンにキスをしに行くのを、心から楽しんでいたことです」

撮影に参加したのは、本当に障がいを持っている子どもたちでした。監督は彼らと、長期間にわたるワークショップを行った上で、撮影という「仕事」をしてもらったといいます。

「障がいのある子どもたちと長期間ワークをすることは、私にとってすごく重要なことでした。彼らのポテンシャルはわかっていましたが、実際にワークショップ撮影の場になると、彼らが我々の想像以上のことをできるんだということがわかったのです。それは私にとって非常に豊かで感動的な体験でしたし、またあの彼らと“仕事”をしたいと思っています」

映画のラストでは、仮装をして野外パーティーを楽しむ子どもたちの姿が描かれますが、それにも意味がありました。

「概念として『施設の中ではない』ことが大事でした。施設は『壁の中に閉じこめる』ものなので、子どもたちがラストでその外に出ていることが重要だったんです。知的障がい者に手を差し伸べた医師エドゥアール・セガンは、『ハンディキャップのある子どもたちも、社会に混ざることができる』と述べています。ですからカーニバルみたいな雰囲気で、あの野外公園で、他の人も普通に行き来がある場所で撮影をしました」

映像のそこかしこに気づきがある本作。最後に監督からメッセージをもらいました。

「監督としては、映画を見ていただく以上に明確なメッセージはありません。アーティストは感動を伝えることが仕事ですが、私の場合も同じです。ぜひ映画を見てください」