子どもの友だち関係が「スマホやSNS」で見えなくなる! スマホで増える「親の不安」と「子どもが困っていること」こんなに違う〔精神科医〕が解説

精神科医さわ先生に聞く、「ちょうどいい親子の距離感」 #2

精神科医 さわ

スマホを持つと子どもの悩みが増える!

スマホを持つようになると、子どもが抱える悩みはこれまでとは違う形で増えていきます。

例えば、「グループLINEに入れてもらえない」「朝起きたら未読が200件もあった」などをきっかけに、「自分だけ仲間外れにされたのでは?」と強い不安を抱いてしまうケースも少なくありません。

子どもが小さいころは、友人関係がある程度、親の目に届いていました。保護者同士のつながりや遊びの約束の調整、先生やママ友との会話から「今、○○ちゃんと何かあったのかな」と察することもできていたはずです。

しかし、スマホを持ち始めると、やり取りの多くが親の目に触れない場所で行われます。近年はSNSやメッセージアプリをきっかけとした事件やトラブルも多く、「うちの子は大丈夫だろうか」「何か悩んでいないだろうか」と心配になるのも自然なことです。

とはいえ、その不安から子どものスマホを無断で見たり、細かくチェックしたりするのはおすすめできません。思春期の子どもの交友関係に、親が直接介入しすぎることも同様に逆効果になりがちです。

そうした行為は、子どもに「信じてもらえていない」と感じさせ、親子の信頼関係を揺るがすきっかけにもなります。

大前提として、思春期に入ると、親に知られたくない人間関係や出来事が増えていくのは、精神的な発達においてごく自然なプロセスです。

やがて子どもは、それまで「親が絶対に正しい」と信じていた存在が、「親も不完全な人間なんだな」「間違えることもあるんだな」と気づき始める。それは、子どもが自立に向かって成長している証拠なのです。

写真:mapo/イメージマート
すべての画像を見る(全6枚)

トラブルは起こることを想定してルールをつくる

理想は、子どもがスマホを使い始める前に、家庭内でルールをあらかじめ決めておくことです。

例えば、以下の3つのルールなど。

・人を傷つけるような言葉は使わない
・22時以降は部屋に持ち込まない
・就寝中の充電はリビングでおこなう

こうしたルールは、親が一方的に決めるのではなく、子どもと一緒に話し合って作るのがポイントです。自分で決めた納得感があるからこそ、子どもは「ルールを守ろう」という気持ちになれるからです。最初にきちんと話し合っておかないと、あとからルールを後付けするのは難しくなります。

ちなみに、スマホの使い方に親が自然にかかわれるのは、こうした最初のルールづくりのタイミングぐらいでしょう。だからこそ、スマホを持たせるときは「このルールが守れるなら、あなたにスマホを持たせたい」と、子どもとの信頼に基づいた約束としてスタートすることが望ましいです。

もちろん、そうはいっても「もうスマホを持たせてしまっているから今さらルールなんて……」と思う方もいるかもしれません。でも、だからといって手遅れということはありません。

今の使い方や家庭内での暗黙の決まりを一度文章にしてみるだけでも、「これは守れているな」「ここは改善したほうがいい」など、親子で気づけることもあります。

そしてもう一つ大事なのは、「ルールを決めたからといって、すべてのトラブルは防げない」と心構えしておくこと。もし、予期せぬことが起きたとき、親ができる一番の支えは「困ったら一緒に考えよう」という姿勢です。

「あなたが悪くなくても、思いがけずトラブルに巻き込まれることはある。だから、もし怖いな、不安だなと思ったときは、怒らないから絶対に相談してね」と。

この一言があるだけで、子どもは「いざというときに頼れる場所がある」と感じ、安心して日常を過ごすことができます。

\デジタルネイティブ世代に向けたスマホとの付き合い方ブック!/

「親の心配」と「子どもの悩み」を切り分ける

28 件