スマホ育児はコミュ力に悪影響? 最新研究「共感性の危険」とは?
東京女子大・橋元良明教授「スマホ育児」の是非 #1~スマホ育児の危険性~
2022.01.06
社会心理学者・東京女子大学教授:橋元 良明
ICT(情報通信技術)の進歩により、特にここ十数年で、我々の生活はとても豊かになりました。中でも多くの方が利用しているのが、電話のみならずメールやSNS、インターネット検索、動画視聴と、1台で何でもできてしまうスマートフォンです。どんどん便利になるスマホを育児や教育に活用する家庭が増えています。
しかし、便利だからといって頼りきりになることには大きな落とし穴もあります。
子どもとメディアの関わり方を研究する、社会心理学者の東京女子大学橋元良明教授に、スマホ育児の現状と注意点、上手な取り入れ方を聞きました。(全3回の1回目)
1歳を過ぎた子どもの60%以上がスマホに触れる
橋元教授はこれまで、オンラインアンケート調査や訪問調査によって、育児とスマホに関する使用傾向や弊害などを調査・分析してきました。
橋元教授のグループが2018年に実施したオンラインアンケート調査によると、0歳から1歳までですでに、34.9%の子どもがスマホに触れていることがわかります(自発的に触る、見るだけではなく、親から見せられるなども含む)。
そして1歳を過ぎる頃には63%にまで達し、6歳までは60%台で推移します。ちなみに6歳までの子どもは、タブレットは20〜30%で推移。パソコンが10〜15%、ガラケーの使用はほぼなしで、スマホの利用がほとんどです。
育児にスマホはどのように利用されているのでしょうか。
「主な用途はYouTubeなどでの動画視聴です。特に、アンパンマンやドラえもんといったキャラクター動画が赤ちゃんに好まれ、人気キャラクターの人形劇も人気が高い。
赤ちゃんだけに限らず、『大人しくさせる』『泣きやませる』『上機嫌にさせる』という子守り代わりの目的でスマホを見せる親が多いです」(橋元教授)
病院や電車内など、子どもが騒ぐと迷惑になる場所で、スマホは特に活躍してくれますよね。思い当たる方も多いのではないでしょうか。
しかし、泣いたり騒いだりしたときに、とりえずスマホを触らせておけばいいと考えるのは、子どもの成長に悪影響を及ぼしかねないと、橋元教授は警鐘を鳴らします。
「なんとなく見せる」はNG
橋元教授の調査によれば、乳幼児のスマホやネットの利用に関する母親の心配事として「使いすぎによる心身への悪影響」「将来的に脳の発達に及ぶ悪影響」「有害サイト・アプリの利用・閲覧」(下の資料「乳幼児の情報機器やネット利用に関する母親の心配事」より)といった影響が挙げられています。
橋元教授もこうした母親のネガティブな意見に同意見で、幼い子はできるだけスマホに触れさせない方がいいと考えます。一方で、以下のようなメリットは確かにあるといいます。
・史実を調べて歴史に興味を持つなど知識が増える
・レシピサイトなどの情報サイトを巡って趣味や興味が増える
・写真や文章をブログやSNSに載せて発信する楽しさを知る
・LINEなどによって、遠く離れた友だちや祖父母とつながる
「スマホ育児の影響として『子どもとのコミュニケーションが増えた』と『減った』や『勉強がはかどるようになった』と『しなくなった』など、相反する回答が存在するのが興味深いです」(橋元教授)
スマホ育児やスマホ教育においては、メリットとデメリットの両面が存在するようです。そのメリットをうまく享受するには、子どもに持たせるタイミングや方法を、親が意識することが重要だと、橋元教授は話します。
「スマホ育児のメリットを得るには、親と子がコミュニケーションを取りながら一緒に見るなど、親の介入が不可欠です。
デメリットを抑えるには、制限なく見せっぱなしにしないなど、意識的に子どもとスマホを引き離す必要があります。
いずれにしても、親がちゃんと管理しなければいけません。親子が楽しくふれあいながら行っていくのがスマホ育児の基本ですね」(橋元教授)