子どもの運動習慣と自己肯定感 幼児期にスポーツの習い事をする意味
スポーツジャーナリスト・生島淳さん「幼児期のスポーツ」#2 幼児期にスポーツを始める意味
2022.01.13
スポーツジャーナリスト:生島 淳
心身ともに成長する幼児期だからこそ、子どもにスポーツを習わせたいと思う親御さんも多いのではないでしょうか。
数多くのアスリートやメダリスト、コーチに取材をしてきたスポーツジャーナリスト・生島淳さんに、幼児期のスポーツの習い事についてインタビュー。
第2回は、幼児期にスポーツを始めたい、本当の理由についてお聞きしました。
(全3回のうちの第2回。#1、#3を読む。)
身体を動かして「できた!」が自信になる
私は取材でアスリートたちに会うたびに、“スポーツ選手は、なぜこんなに魅力的なのだろう”と、いつも思っています。
その理由について考えてみたのですが、長い練習を経て、本番に臨む、アスリートたちの“自信に溢れたプレー”や、“気品ある立ち振る舞い”が、私たちを魅了している大きな部分なのではないかと。
例えば、小学生の運動会をイメージしてみてください。
運動会の花形でもあるリレーの選手。風を切って走る子どもたちの姿は、理屈抜きでワクワクさせられますよね。自分の子でなくても、つい一生懸命応援してしまうものです。
また、子どもたちも、リレーの選手に選ばれると嬉しいですし、クラスの友達からも一目置かれます。
子ども時代の“足が速い”ということは、“速く走れる”自分に対して、自己肯定感があり、その自信が周囲の子どもたちをも引き付けるんですよね。
プロのスポーツ選手にも、小学生のリレー選手にもその輝きは共通していると僕は思います。
しかし、足が速い子がいれば、遅い子もいます。
「うちの子は、リレーの選手になれるほど運動神経はよくないし……」と、思うお父さんお母さんもいらっしゃると思いますが、もちろんどんな運動でもいいのです。
“自分の身体を動かしてできたこと”に対してであれば、どんな小さなことでも自己肯定感の種があるからです。
“鉄棒で前回りができるようになった”
“縄跳びができるようになった”
“サッカーボールを蹴れるようになった”
これらは、親御さんからすればささいなことかもしれません。
でも、こうした小さいけれど、身体を使った確実な進歩が、子どもの自己肯定感を高めます。
これが、幼児期から、運動やスポーツに親しんだほうがいいと私が思う理由のひとつです。
幼児期の運動習慣は生涯の財産になる
そしてもうひとつ。幼児期の運動習慣が大切な理由として、幼児期は“運動機能が発達する時期”であるからです。
脳や神経系は、6歳の時点で、すでに大人の約8割程度まで機能が発達していると言われています。
走る、跳ぶ、くぐる、身体を移動させる、バランスをとる、用具などを操作するなど、運動の基本的な動作は、6歳の時点でほぼ身につけることができるというわけです。
この時期に身につけた運動能力は、1回目でも紹介しましたが、ゴールデンエイジと言われる、小学校中学年以降に訪れる飛躍的な運動技術向上の時期の基礎になります。
そればかりだけではなく、身のこなしによるケガの予防や、その後の健康的な運動習慣にもつながっていきます。
運動習慣の話でひとつご紹介したいのが、金メダリストでもある、体操の内村航平選手や白井健三選手について。有名な話ですが、両選手とも実家が体操教室です。
幼い頃からいろいろな器具を遊び道具にして、遊びの中で空中感覚を養い、運動能力を高めていたのでしょうね。
体操の取材現場で聞いた話ですが、内村選手と白井選手がひねりの議論になったとき、ひねりを増やすコツは、「体をギュッとするのではなく、ギュギュっとする」という言葉で、ふたりには通じ合うものがあったそうです。
幼少期から、体幹を鍛えていたふたりにしか分からない会話なのでしょうね。聞いたときは思わず笑ってしまいました。
そして、メダリストをならえという意味ではありませんが、家庭での運動習慣をという点でおすすめしたいのが、トランポリンです。
簡単に身体を動かせますし、「跳ぶ」という感覚は、子どもにとって非日常なこと。とても楽しい動きです。
また、跳ぶことは、体の芯になる部分がしっかりしていないと跳んだり、跳ねたり、続けられないため、知らず知らずに体幹が鍛えられます。
さらに。トランポリンは、アスリートのトレーニングにも使われているんですよ!
このコロナ禍で、家庭用のトランポリンの購入が増えていると聞きました。
無理して習い事をしなくても、トランポリンで身体を動かすだけでも十分です。
ちなみに大人が飛ぶとなかなかいい運動量になりますよ。